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【羽衣プロジェクト】7月10日(月)

この日は9時にホテルを出発。予定がみっちりです!
まずは昨日時間切れで見られなかった資料館「みほしるべ」を見学します。

静岡県三保松原文化創造センター
6つのエリアに分かれており、三保松原以外の国内外の「羽衣伝説」が伝わる地域の紹介や「羽衣伝説」を元にした様々な芸術作品に関すること、さらには三保松原をいかに未来に引き継いでいくかという環境保全に関する活動の紹介など多岐にわたって展示がありました。

※画像は公式サイトよりお借りしました。

シャンカルさんと美加理さんが特別惹かれたのは「羽衣伝説」に登場する天女が持っていたとされる羽衣の一片と伝える裂(きれ)の展示でした。
(伝説に登場するきれが現存するなんて・・・!?)
昨日見学した御穂神社に保存されていたそうで、「平織」と「羅織」という2種類の違った織り方をされた2cm四方くらいの小さな生地でした。
2019年に上田を訪れた際は、「羽衣伝説」とは別の視点から織物に興味を持ち上田の伝統「上田紬」の工房を見学されているシャンカルさん。
意外なところで、上田でのリサーチとの繋がりを見出したのでした。

予定より長くみほしるべで時間を過ごしてしまっため、急いで次の目的地へ。

1時間半ほど高速道路を走り、12時近く浜名湖の弁天神社に到着。
こちらにも別の「天女伝説」が残されています。

先にこの浜に下り立った天女は「目指していたのはここではない」と言って松原に飛んでいってしまう、という少し寂しい内容。

すぐ裏は浜名湖と海の境が見える浜辺になっていました。
ここでも美加理さんは裸足になって、砂浜と海の感触を味わっていました。

次は天竜二俣エリアへ向かいます。
ここでは美加理さんのお知り合いの3名の方々にご案内いただきました。
通称、バロンさんと呼ばている鈴木孝行さん。
そして、伊藤めぐみさん、姫乃りらさんです。
このお三方は天龍付近にお住まいで、「天竜川物語」という舞台作品を発表されているアーティストでもあります。

13時半に待ち合わせ。
まずは天白磐座遺跡で時間を過ごします。


巨石の散在するこの場は、いくつもの土器の破片や鉄鉾、勾玉、和鏡などが発見されており、4世紀(古墳時代)から13世紀(鎌倉時代)まで続いた祭祀場であったことがわかっています。
「磐座」(いわくら)とは神の依代とされるもののことを指します。

「神の気配を強く感じる」と言われるこの不思議な空間で各々、その気配を探します。

美加理さんもシャンカルさんも「何か強い力を感じる」とおっしゃって、
長い間自身と、場の持つ力との対話をされるように岩に腰掛けたり、体を伸ばしたり、時間をかけて瞑想を行いました。

次に訪れたのは岩水寺。
ここは高野山真言宗のお寺であり、御本尊は薬師如来と厄除子安地蔵菩薩です。子安地蔵菩薩ということで、安産祈願・子授け祈願で知られています。厄除子安地蔵菩薩は天竜川の竜神でもあるそうです。
全国から安産祈願で人が訪れるほど、実は知名度が高いそう・・。

ここは本堂もさることながら、重要なのは本堂からさらに10分ほど登ったところにある「岩穴」という場所。

人間はない何かのためのような不思議な赤い橋を渡って進みます。(実際、竜神がここを通るのだという伝説も残っているとか)

奥の院本殿(六角堂)の右手、崖のようになっている木立の下に3〜4mほど窪んだ所にひっそりとあります。


奥は鍾乳洞になっていて、水を湛えた池があるそうです。
なんと、諏訪湖まで繋がっているという言い伝えがあるこの鍾乳洞の水は、もしかしたら100年も前に降った水かもしれないとシャンカルさん。

不思議なことに、これから遡る天竜川流域には諏訪湖に繋がっていると言われる場所がいくつも存在します。源流である諏訪湖との繋がりを昔の人は見出していたのかもしれません。

最後に向かったのは椎ヶ脇神社です。
この神社は天竜川の水利を守り船の安全を保ち、堤防の破損を免れ流域の大氏神として水害多き村々に御分霊を紀ってきた、この土地にとってとても重要な場所です。

ここで伊藤さんが話してくださった「柏手」に関する興味深い話を紹介します。
神事などで神主さんが柏手を打つ時、右手と左手をずらしているのを見かけたことはないでしょうか。
左手が右手より少し上になるように両手を重ねて手を打つのが正式なのだそう。

この時、左手は「目に見えないもの」、「思い」や「気持ち」を表し、
右手は「今生きているこの世」「ここにいる私たち」を表します。
(一般的には左手は神を表すという説もあります)
2回、その状態で手を打ったあと両手を合わせて祈りを捧げます。

左手を上に重ねることで、今ここにいる私たちの世界よりまずは「思い」が大事だということを示しているのだそうです。
そして、祈る前に両手を合わせることでその2つが一体となることを表します。
現実的に、目の前に、目に見えていることを一番に取り上げるのではなく
目に見えない思いや気持ちを一番に考えること・・。

なぜ、いま「羽衣」を取り上げるのか。
あらゆるものがシステム化、デジタル化するこの社会で効率を重視して、失われてゆくものがあるのではないか。白竜は羽衣と天女を失ったことで、重要な何かを見失ってしまったのではないか。

この日は宿で遅くまで、今後のクリエイションについて、またなぜ今「羽衣」をモチーフに取り上げるのかなど大事な議論がなされたのですが、
この柏手の話にも繋がっているように感じています。


さて。参道を通って、先ほどお話していただいた川面から「竜の背」が見られるところへと案内していただきました。


夕方の帰宅ラッシュで混み合う狭い道路をわたり大きな鉄橋から天竜川を間近に見下ろします。
鹿島橋というこの橋からみんなでしばらく川を見下ろしていると、突然の大粒の雨に見舞われました。しかし、頭の上の空は綺麗に青空。
上流の方向を見ると夕日に照らされ雨も川の水面も美しく光って見えました。


先ほど、天白磐座遺跡に入った時も数分の小雨が降り出しそれまでは無風だったのに突然傘を差せなくなるほどの突風が吹きました。
龍は雨を呼ぶ、なんて言い伝えもこのリサーチで聞いたのですが、我々を迎えてくれているような、不思議な体験となりました。

明日はこの美しい夕日の沈む方向へ、山へ山へと遡ってゆきます。
この先もどんな素敵な出会いがあるのだろうとわくわくする時間でした。

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