かっこいいひと
一昨日、ひさしぶりに母と出かけた。本気でいつ以来か思い出せないから、コロナの影響は計り知れないな。
バスに乗った。乗客は2~3人で隣り合わせて座れる座席は空いていたから、当然二人掛けシートに座るものと思ったら、母は一人でシルバーシートに。私たちのこういう距離感、なかなかだなと思う。
「発車します」
運転手の発声があった後、高齢の女性が二人、乗車ドア前に。1人は杖を手にしていた。ステップを昇ることが容易ではなさそうだ。
「手を貸そうかな」
私がそう思い浮かべて次の動作に入るより早く、母はスッと立って杖を持っていない方の手を取って、乗車を助けていた。
私より確かに近くに座っていた、ということはある。でも、たぶん母は考えるより早く体が動くのだと思った。なぜなら考える必要がないのだ。目の前に助けを必要としている人がいるから手を貸そう。
私には一瞬、「でも私が助けたらバランス崩さないかな」「迷惑じゃないかな」と、躊躇する隙間がだいたいできてしまう。それが全くない母を、かっこいいなと思う。
帰りの電車は高校生の下校時間と重なって、シルバーシートだけ空いていた。私も座っても大丈夫そうだったので、必要な人が乗ってきたら譲ろう、そう思って、今度は母の隣に座った。
次の駅で高齢の夫婦が。母のかっこいい姿を見たばかりだったし、予め考えていたから、躊躇する隙間なく「どうぞ」と言えた。うれしかった。
母72歳。まだまだ娘はあなたの背中を見ています。元気でいてください。
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