ラジドリコロシアム 総括(ネタバレ有)
どうも、矧矢です。
矧矢とベルベる☆の2人が共同主宰として企画・運営をしてきた、ラジオドラマの祭典「ラジドリコロシアム」が閉幕しました。
今日は、構想から現在に至るまでの足跡をダラダラ書いていこうと思います。
すげー長いからね?覚悟してね?
まずこの企画の構想、企みは矧矢から始まっています。
時は2020年まで遡ります。
新型コロナが急速に拡大し、表現の分野では中止・延期が相次いでいました。
そんな中で「リモートでラジオドラマを作って販売数を競おう!」という大会が開かれ、矧矢とベルベる☆はタッグを組んで一生懸命作品を制作し、ありがたい事に優勝する事が出来ました。
その時に外の世界を知ったというか、「これまで接点の無かった人と作品を作る楽しさ」「他の人が作った作品と競い合う」という面白さが自分の中に強烈に残りました。
当時、声の劇団「シグマ」というラジオドラマを制作をするサークルに所属していたのですが、自分の中で「あの時の胸の高鳴り」が日に日に大きくなっていきました。
「自分だったらこんな大会にしたい、ルールはこんな風にして、運営方法はこうで」と、妄想を膨らませていくうちに「あれ?本当にやれるんじゃないか?」と全体像や道筋が見えてくるのと同時に「デカい風呂敷だなぁ、自分1人だけでは厳しいぞ」と感じました。
あれは去年の秋口くらいでした。
ベルさんとご飯を食べに行く事があり、「こんな企画を考えているんだけど」と話を振ってみたんです。
「良いじゃん、やろうよ」
即答。
格好良いよね。
こうして大会の企画が本格始動したのでした。
自分がこの大会の大きな柱としているのは「持続可能な運営スタイルである事」「作品が正当に評価される事」の2つです。
まず「持続可能な運営スタイル」とはなんなのか。
単純です、少人数で回せる程やる事が単純で、金銭的な元手が必要無く、10年20年と続けられる事です。
自分は、ラジオドラマという分野をもっと盛り上げたい。「誰かと何かを作る」事の楽しさをもっともっと広めたい。
その為には、1回2回で限界を迎えるような仕組みではダメなんです。
少し言葉は悪いけど、本業の仕事の合間に片手間で出来るくらいの作業量で、楽が出来る所はとことん楽をする。
今は良い時代です。
グーグルの機能を使えば、簡単に申し込みや投票のフォームが作れます。スプレッドシートと連携させれば、設問ごとの回答を見やすくまとめてくれます。
STORESでは、1つのPDFデータさえ用意すれば在庫の補填も発送作業も必要無く、販売期間も事前に設定できるから、あとは全部お任せ。
投票が有効か無効であるかは流石に人の目で判断しなければなりませんが、そこまで大した作業量ではありませんでした。票が確定したらそれすらも自動でグラフをまとめてくれます。
「こういう機能を使えるよ」と多くの事を教えてくれたのはベルさんだったので、とても助かりました。
次に「作品が正当に評価される」にはどんなルール作りが必要であるか、これも大きな課題でした。
自分はこれまで、作品を作ったらそれで満足していました。
「他の人の評価なんか要らない、自分は職人タイプなんだから」と言えば聞こえは良いですが、それではなかなか自身の成長にも繋がりませんし、世界も広がりません。
大会ですので、何らかの形で優劣をつける必要があります。
再生回数?高評価数?それとも再生回数に対する高評価の割合?でもその数字って本当に「この作品良いなぁ」って思われているのだろうか?
1チームの作品ごとに販売をして、その売り上げを競う?でもそれってお金の力で勝ててしまわない?作品の中身で勝負してる事にはならないよね?
そうやってベルさんと色々意見を出し合った末に導き出した答えが、1,000円で6チーム全ての作品が聴けて、良かったと思う3チームに投票するというシステムでした。
尺が最大15分という規定は、視聴者さんが集中して聴けるは大体そのくらいの時間であると企画初期から決めていました。
価格と出場・投票枠の設定は難しかったですね。視聴者さんが「買ってみようかな」と思う価格設定、「このチーム数だったら全部聴けそうだな」というチーム数、「これなら本当の民意(大袈裟)を問えるだろう」という投票数は、ベルさんの絶妙な加減であったと思います。
ご存知の通り、売り上げ利益の大部分は参加チームへと分配されます。
「応援チームへのバック」は、要は観客を呼び込んだ分だけ還元されるノルマの無いチケットバックです。
ハコ(劇場)代と言えるのはSTORESの利用料とも言える5%の決済手数料のみで、ハコ(劇場)のキャパシティは無限。どれだけお客さんを呼び込んだって誰も何も困りません。
「頑張った分だけ報われる」というのは良いですよね。
「優勝総取り分」は、売り上げ利益のなんと50%を優勝チームが総取りできるというもの。
「面白そうだなぁ」と視聴者にも参加チームにも思ってもらうのに大切な要素でした。
ちなみに「ラジドリコロシアム」の「ドリ」は、「総取り」の「取り」です。
名付け親はベルさんです。
もしベルさんが居なかったら、この大会は「声劇競演祭」と名付けていたのは秘密です。
ネーミングセンスと親しみやすさの欠片もなくて笑えますよね。
エンタメ要素としては「部門賞」という存在もあります。
これは個人的に凄く入れたかった要素なんです。
マリオパーティってゲームをご存知ですか?平たく言うと双六なんですけど、順位を決める時にコインスターとかハプニングスターとかっていうボーナスポイントがあるんです。実はあれをモチーフにしてるんです。
脚本、演技、音声編集の3つの要素について、僭越ながら自分とベルさんの2人で選考させて頂いています。
受賞すると、1つにつき10票分の加算がされます。
この配分については少し葛藤がありました。というか全然分かりませんでした。
それもそうですよね、企画段階でどれくらいの規模感の大会になるか分かるはずがありませんから。
結果については皆さんご存知かとは思いますが、それについてはまた後程。
秋口から年明けに掛けてルールの整備やその他に準備すべき事を、2人で手分けして少しずつ進めていきました。
大会規約を作り、ホームページを作り、大会アイコンを作り、TwitterやYouTubeのアカウントを作り、STORESのストア準備を進め、3月15日にTwitterで大会旗揚げを宣言。
当初は「募集する6チームの枠に届かなかったらどうしよう」と心配をしていたのですが、蓋を開けてみれば枠の倍以上の応募が。
嬉しかったなぁ。
嬉しかったけど、選考は本当に悩みました。
どう選んだのかについては、募集要項にある通り「応募チームの特色など総合的に考慮した上で選考」したとだけお伝えしておきます。
でもこれだけは言わせて欲しいです。
輝かしい受賞歴や豊富な経験を並べるだけでは、こちらが知りたい「特色」が見えてこないんです。
どんな媒体でどんな作品を発表されていますか?
あなたが大切にしている事は、文字を並べるよりも作品そのものが雄弁に語ってくれます。
「本業の仕事の合間に片手間で」なんて書きましたけど、そこは全力で取り組みます。当たり前の事です。
睡眠時間を削ってでも聴きますので、せめてあなたの「足跡」を見せて欲しい。
残念ながら、その「足跡」すら見つけられなかったチームは選考する事も出来ませんでした。
この記事を読んでいるそこのあなた、お願いだから作品を聴くための手がかりを残してね。
4月末に応募を締め切り、5月頭には選考結果の内示を行いました。
サンプルと出品作品の納品があるまでは、基本的に待ちの状態。時々参加チームから質問が寄せられるので、ベルさんと確認をしながら回答をしていく。
この辺りの時期は一番ゆとりがありましたね。
そんなに書く事が無いです。
6月15日に参加チームの情報解禁。
ここから各チームのPR活動が本格化しました。
いやぁ、凄くありがたかったし、それぞれの創意工夫が面白かったです。
7月1日に1分制限のサンプル公開。
この頃からですかね、エゴサをめっちゃしてました(笑)
大会への期待感が日に日に増していくのが肌で感じられました。
これだけでも「あぁ~、企画して良かったなぁ~」と噛みしめるように過ごしていましたね。
8月1日、ついに販売開始。
日付が変わってからすぐに数分おきに購入通知が来て、「なにこれ、バズってるん?」と思うほど。
僅か3日間で100件を超える購入がありました。
嬉しかったです。
自分が「これをやると面白いんじゃないかな」と思った事に、多くの方が賛同してくれた気がしました。
Twitterでは「面白かった」「楽しい時間を過ごせた」「1,000円で6チーム聴けるのはコスパ最高」など好意的な反応がほとんどでしたし、作品そのものへの「ここがちょっと気になったかな」というコメントはあれど、リスペクトを感じるものばかりでした。
リスペクト。
この精神こそがラジオドラマを盛り上げていく上で絶対欠かせない要素なんです。
8月10日と20日には、当初予定していなかったのですがTwitterのスペースにて公式トークイベントを行いました。
アーカイブは残っているので、良かったら聴いてみて下さいね。
時系列的には少し遡るのですが、部門賞の選考という大きな仕事がありました。
どういう考え方をしたのかについては、こちらをご覧ください。
https://radidori-colosseum.jimdosite.com/%E7%B5%90%E6%9E%9C%E7%99%BA%E8%A1%A8/
9月1日に部門賞を発表したのですが、動画だったので驚かれた方もいらっしゃるかと思います。良い声だったでしょ?
発表直後から悲喜交々のコメントで溢れていました。
中でも印象的だったのは、選ばれなくて悔しいんだけど、受賞チームの事をきちんと讃えている事。
これもリスペクトの精神ですね。
この記事を書いているのは9月2日の日中、つまり最終順位発表前です。
声の本屋にぼし堂さんが2つ、ひとさじのはちみつさんが1つの部門賞を獲得したので、声の本屋にぼし堂さんが優勝に最も近いと思われているんだろうなぁ、でも結果は違うんだよなぁという事実を自分とベルさんの2人しか知り得ないのは、まぁ役得ですよね。
部門賞を貰ったチームが優勝しないという展開も今後長く続けていればあり得るよねとは思っていたのですが、まさか第1回で発生するとは。
まぁそういう事もあるよね。
さて、およそ3,500文字を過ぎた所でようやく各チームの感想です。
部門賞はそれぞれの要素にのみフォーカスしていますので、個人の感想はまた変わってきます。
①エスペラント「エスペラントの翼」
SFファンタジー。自分も過去に効果音の弾幕(戦闘シーン)を作った事があるので、大変だったろうなぁと思いながら聴いていました。こだわればこだわる程、編集者の首を絞めるんですよね(笑)ストーリーは王道。おおよその展開は読めるんだけど「そうそう、こういうので良いんだよ」とも言える。とっつきやすいお話でしたね。演者さんの叫びというかがなりが好きだったなぁ。
②ポロンクセマ「自意識がもう」
シニカルコメディ。「クセが強い!」というのが第一印象。ですが代表のやまさん様がこれまで手掛けられてきた作品を拝聴すると、それも納得だしそれが良い。YouTubeで探してみて下さい。長編が好きな方はとても楽しめると思いますよ。編集的な側面では、滅茶苦茶難易度の高い事をやっておられるなと感じました。それはストーリーにも同じ事が言えて、ギリギリのバランスで、一人の登場人物が放り込まれることでそれはもう見事にぐちゃぐちゃになる。演者さんもとても良い味を出していたと思います。
③声の本屋にぼし堂「射光の丘」
選考前にYouTubeで聴いた別作品が「小説みたいな作風だなぁ」と思ったのをよく覚えています。クライマックスで「あーなたのー声がー♪」と歌が流れてきたときはぶったまげたなぁ。出品作品はシリアス。部門賞コメントでたくさん触れているけど、とにかくお題テーマ「変化」の表現が素敵でした。徐々に謎が明らかにされていく構成が、聴いていてワクワクしました。
④付知峡「伊賀の半蔵・甲賀の千代女(ちよめ)」
戦国物。実は、納品された作品の中で一番最初に聴いたのがこの作品でした。ナレーションベースでストーリーが進行していくのは新鮮でしたね。なるほど、こういう進め方があるのかと勉強になりました。ナレは結構ツラツラっと進んでいくんですが、半蔵と千代女のやり取りは聴かせ所としてじっくりと時間を掛けていた印象でした。甘酸っぱく、瑞々しいですよね。その後はどうなったんだろうなぁ。
⑤KOE-NOS「魔王城にて会議は踊る」
ファンタジーコメディ。登場人物全員が主役であるという宣言を、エントリー時から見事に貫いていたと思います。我慢しない、譲らないを突き進んだ作品が今作でした。ファンタジーなのに会議物というちょっと変わった組み合わせも面白かったですね。6チームの中では1番アニメっぽい雰囲気でしたので、とても聴きやすい作品だったと思います。
⑥ひとさじのはちみつ「希う、この夜に」
エントリー時は日常系とあったんですが、カテゴライズがちょっと難しいかも?部門賞コメントでベルさんが「温度」、矧矢が「湿度」と表現が似通っていました。そこからの言語化は難しいけど、聴いた方はなんとなく分かってもらえるはず。6チームの中では重めの内容だったんですが、ぐっと引きつける演技が光りましたね。
苦労して選考した甲斐あって、どのチームにもそれぞれ魅力があって素晴らしかったと思います。
どのチームが優勝したっておかしくない程に。
この大会を通して、互いを知り合い、交わり、高め合って頂ければと思います。
長い長いこの記事も、そろそろ終わりに近づいています。
今は20時を回った所で、Twitterにはたくさんの称賛、喜び、感謝の声で溢れています。
いやいや、こちらこそだよ。
参加チームの皆様、視聴者の皆様、そして共同主宰のベルベる☆に、最大級の感謝を。
そして、結果発表の動画の最後に次回予告が。
なんと、ラジドリコロシアム第2回大会の募集が10月1日から始まります。
早いね~。
でも、この大会を文化として根付かせたいから。
詳細は後日お知らせする予定です。
お楽しみに。
プロだろうがアマだろうが、関係ない。
大人数だろうが少人数だろうが、たった一人きりだろうが、関係ない。
諸君らの挑戦を、待っているぞ。
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