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読んだ本6 人口減少時代の都市 成熟型のまちづくりへ

5月の課題図書 『人口減少の都市 成熟型のまちづくりへ』

人口が減るという現実を捉え、拡大してきた都市を意志を持ってポジティブに戦略的に縮め、成熟した都市になるための資本を育てるための投資をしていきましょうという本。(ざっくりしすぎ?!)
2章にあった、戦前のことではあるが、(当時は儲けた)交通や電気を市営事業によって自主財源をつくり収益性の低い事業の財源に充てていたところは、とても興味深いところだった。
戦後の東京都や神戸市のやり方は違えど「国に依存しない」という考え方や取り組みは今だからこそ見習う部分であると思う。

第3章まで、人口減少都市との向き合い方を世界の動きや日本の戦前から戦後まで整理しながら記述されているのに対し、4章の最後でコミュニティの話に落ち着き、住民参加、合意形成を行いボトムアップで乗り切るとしてしまったことは少々拍子抜けしてしまった。

私が読みながら自分で立てた問いは「何に投資するべきなのか?」。
そこに沿って自分なりに整理をしてみたい。

都市のスポンジ化を楽しむ
コンパクトシティという言葉は前から違和感があった。人は簡単に引っ越ししてくれないのになぜ集約できるんだ?とずっと思っていた。私は、土地区画整理事業とか団地開発のように、まっさらな場所に突然人が移り住むってことになんとなく馴染めない。いろんな事情があって人は移り住むが、そこには元々のコミュニティーや文化や風習があって、それに自分が馴染むから長く住むことを選択するのであって、行政がそれを誘導するものではないと思っている。
なので、減っていく人口はすぐには回復しないし、空いてしまうところを楽しむ暮らしをできるようにすればいい。

人的資本、社会関係資本、自然資本とか
「目に見えないものを見えるようにする」ことが可能になりつつあるとの記述があり、そこが明らかになることに期待したのだが、残念ながらなかった。これからの投資は確かにそういうものだと感じているが、そのためにも財源をどこで作るかという壁にはぶつかってしまう。
そこで、エネルギー事業を公営事業として取り組みをしているところがあるというのは、すごくワクワクした。
沖縄の場合、沖縄電力なので、そこに自治体が手を出すのは現実的ではないし、沖縄市の場合、海がなく、山もなく、実は晴れも少ないので、何をエネルギー源とするのかはあまり思い浮かばないが、考え方は活用できる気がした。

日本版とつくと怪しい
シュタットベルケ、シティリージョン、ランドバンクなど、日本版となるとなんか怪しく感じてしまう。シュタットベルケといえば、水道事業はそれにあたる気がするが、会計が別なため、水道事業でプラスになっても、一般会計に歳入として受けるということは聞いたことがない。(可能ではあるはずだけど…)

所有と利用の分離
一代と思えばよいかもしれないが、受け継ぐときに自分ごとになりにくいし、市場に任せた財産活用ができないことが、急激に変わっていき世の中にどれだけ対応できるのか、ふに落ちないところがある。マネージメントされたまちは暮らすところとして果たして面白いのかな?っていう疑問もある。

広域圏とか自治体関連携とか
行政の事務を広域でまとめてやりましょう。という意味あいでシティリージョン構想が語られている。広域事務組合に事務を共同処理させる動きは実際にある。ただ、こういう戦略的なコトに対しては不向きな組織が出来上がっているという現状がある。歴史や文化が違う欧州と同じようにはいかないはずである。できればお隣同士とか、同じ経済圏、生活圏の自治体と連携で予算も事務も一緒にできるようにできるといいなと感じることはある。日本版ではなく、日本発の仕組みを考えるべきではないかと思う。

私が得た3つ
読み応えたっぷりなこの本から得たことを改めて整理すると、
①人口減少時代には、地域経済を回すことを強く意識すべきだ(雇用を生み、税収をあげることになる)
②公共、民間の遊休不動産を使い倒すことでスポンジ化をポジティブに変えられる(楽しくなると経済が回るはず、土地の価値が上がると税収があがる)
③目的である生活の質の向上に繋がるかを検証しておくこと(選ばれるまちとなることで人口が維持できる)
こんな感じでしょうか?

仕事に生かすという意味では、まだまだ考えるきっかけを持ってもらう程度しかできないけれど、面倒くさがられない程度にセンス良くこの辺の考え方を周りに浸透させていきたいな。

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