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読んだ本5 地方消滅 東京一極集中が招く人口集中…違和感を並べてみた

4月の課題図書『地方消滅 東京一極集中が招く人口集中』

2040年の若年女性の増減に着目して、都市が存在するかどうかを消滅可能性都市として自治体を評価した。出版された時はものすごくセンセーショナルに取り上げられていたが、初めて読んだ。

少子化と高齢化が同時に進む日本で、こどもを持ちたいけど持てない人の阻害要因を取り除くために、地方には雇用を、東京には子育てしやすい環境を作ること、人口のブラックホールである東京に一極集中させないために地方中核都市を若者にとって魅力のある都市にするということを事例や対談を交えて書いてあった。
結局のところ「雇用があるところに人口は集中する」のである。

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違和感その1…地方中核都市を人口のダム機能とする。
これまでの生活スタイルや考え方に基づいた方針のような気がしてならない。コロナ禍で移動の制限があるから余計にそう思うのかもしれないが、若者が未来に希望が持てる地域になった方が良い。まずは地域が自立していることが前提で、それが有機的に結びつくから経済社会面で互いに支え合うことができると思う。
"地方中核都市に資源や政策を集中的に投入し、地方がそれぞれ踏ん張る拠点を設ける"とういうのは違和感がある。そもそも、誰がやるんだろうか?すごく行政チックというか、上から目線というか…主語がないからかな。

違和感その2…公共施設の跡地など空いた土地の活用として農地を整備
コンパクトシティ化は暮らしやすさを考えると必要だけど、庭や畑は個々人が所有することがいいと思う。(ここでも主語がないので定かではないが)行政が持つにはコストがかかりすぎる。それよりも、少し前はどの家庭にも小さな庭のような畑があって、日々食べる野菜を育てていた。沖縄では小さな畑を「あたいぐゎー」といって今でもよく見かける。それは、SDGsであり、健康増進であり、コミュニティの場所であり、防災対策でもある。

違和感その3…教育に農作業体験
1週間程度の農作業体験をしたからといって、地方の農山漁村に若者を惹きつける契機になるとは思えない。小中学校であれば先生たちに負担だし、それであれば子どもの頃散々農家のお手伝いをした人たちが回帰していなければならないのにそうなってないのだから、体験がそうなるとは思えない。
それよりも、高校課程における農業や漁業、林業を学ぶ時に、若者を惹きつける契機を仕込んだ方が先生たちも専門だし、良いのではないかと思う。

違和感その4…東京一極集中を防ぐために中高年の地方移住の支援をする
人口が多くなった東京から中高年や高齢者などを移動させるために、多くの情報や必要な人材を整理し発信するということらしい。若者が少なくなっている地方にさらに中高年を移住させることが得策なのだろうか。本には今後働き盛りの世代が年老いた両親を東京に呼び寄せるため、さらに東京の高齢者が増加するとなっているが、逆に働き盛りの世代が両親のところに戻るということの阻害要因を取り除く政策が必要だと思う。
本の序盤で出生率が高い沖縄の分析が必要とあるが、この働き盛りが戻ってくるというのが他府県に比べて沖縄は高い感覚がある。
ということで沖縄県の人口コーホートのグラフを作ってみた。

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こんなに違いがあるとは思わなかったが、H12- H22が私の感覚に近い。大学や就職で多くの人が県外に出ていき、転職や親の高齢化、退職の節目節目で帰ってくる。それが、H22-H27ではそんな形は跡形もなくなっている。それでも人口が増えているのは沖縄の謎であるが、日本の地方と同じように、人口ブラックホール飲み込まれているのかもしれない。R2の国勢調査を注目したい。

違和感その5…東京五輪は高齢化及び少子化に対応した日本をアピールする場
コロナ過ではないと仮定して、そんなことが可能だろうか?そのあとに続くアピールポイントが、”医療福祉施設、バスターミナルなどの交通施設、公的不動産の活用、多様な居住のニーズに対応できる住宅などの一体的な再構築を行い、環境にやさしく高齢者が歩いて暮らせ、同時に子育てしやすい「未来志向の都市モデル」”を各地域で先行的に着手して成功事例をつくるということらしいが、ハード公共事業のオンパレードに見えてならない。2014年からみた2020年にそんなマンパワーや資金が日本や地方にあるとは思えないのだが…

違和感その6…公務員の女性登用、役員・管理職への女性登用
違和感しかない。女性が働きやすい環境を作ることは、女性が少ないからできないのだろうか?女性と言ってもいろんな状況がある、それは女性に限らず、男性でもそうだし、ハンデを持っている人でもそう。当事者でなければ解決できないとしたら、今の大人たちはなんて無能なんだろう… 
目の前の一人一人を幸せにしたいと思いながら環境を作っていけばいいのではないか。こどもがいる若い夫婦が能力を発揮できる職場とは?という問いに管理職が向き合えばよいと思う。


人口がこれから急激に減っていくこと、それがもたらす影響など、データや現象に基づき整理されている部分はとても納得のいくもので、消滅可能性都市という評価で全国にそれへの危機感を示したことは、とても大切なことだと思う。でも、それへの対応が私の感覚とは合致せず、多くの違和感が残ってしまった。
この本が出たあと、取組を行った都市がR2の国勢調査の結果、どういう数字となっているか、とても興味深い。巻末の全国市町村別将来推計人口を再度発表してほしい。

ギリギリアウトで4月の課題図書を仕上げました。5月はちゃんと5月中に投稿できるようにがんばろうと反省してます…

この読書部は都市経営プロフェッショナルスクールの卒業生が続けてインプットしたい!ということで始めたサークルみたいなものです。
都市経営プロフェッショナルスクールのことは以下をご覧くださーい!

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