陽炎

二ヶ月と十日と少し。私が文章を書くことを怠った時間。私が再度筆を執るまでに掛かった時間。気持ちだけが一人で夜道を彷徨っているので、供養しようかと。

二ヶ月と十日と少し。カンカンの日照りがまだ肌に馴染まないまま、溶けそうなその身体をドロドロと引き摺って歩いていたのに、最早それすらも恋しく思えてしまいます。自然を司る四季ですらそうなのだから、いろいろありますよね。東京オリンピックは終わったし、次期総理大臣も決まったのかな。テニスの王子様の映画も公開されて、私は2回見ました。D.Graymanの新刊も発売すれば、スマブラにはソラが参戦して仰天したり、クソお世話になった一つ上の先輩は退職して、ワクチンも2回打ち、茄子は前ほど安くはなくなっていました。

二ヶ月と十日と少し。私にとってかけがえのない、欠かすことの許されない私の欠片。誰にとっても何にも代え難い、代えることのできない不可逆な血肉。

二ヶ月と十日と少し。寝る度に朝が来て、朝が来る度に夜が来る。よくもまあ、飽きないですよね。飽きないために、人は夢を見るのでしょう。飽きないために、人は星空を仰ぐのでしょう。

二ヶ月と十日と少し。いつまでも懲りないものでして。またこうして、私にとってかけがえのない、欠かすことの許されない欠片を積み上げていくのです。またこうして、誰にとっても何にも代え難い、代えることのできない不可逆な血肉を蓄えていくのです。

二ヶ月と十日と少し。カレンダーの桁がオーバーフローするその瞬間だけは、数直線の目盛線のようなものが、くっきり、はっきりと目に浮かぶのです。誰が決めたわけでも、誰に強制されたわけでもないのに、一切合切をその線の内側に置いていかないと通り越せないような気がして、切なさと焦燥感に駆られます。

二ヶ月と十日と少し。それは、それ以上でも、それ以下でもないのです。

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