一度やめてみる?

 どうやら最近巷では、デジタルデトックスという言葉が流行っているようだ。現代生活になくてはならない、スマートフォンやPCと言った通信機器から離れることで、SNSから距離を置くことが目的とされている。と言っても、私自身デジタルデトックスを経験したことは一度もないので、一体それらから何が得られるのだろうか、という疑問はある。が、これほどまでに世間を騒がせているのだから間違いはないはずである。ぜひ機会があれば試してみたいものだ。
 人間というのは不思議なもので、周期的に何かが何度も何度もブームを巻き起こす。十数年前に流行した韓流ドラマは、コロナ期間、ネット◯リックス等の動画配信サービスの普及により再び爆発的な人気を呼び起こした。平成初期に主流であったシースルーバングは令和を生きるティーンのマストスタイルである。我々は同じような流行りを幾度となく、性懲りもなく繰り返しているのである。
 この習性に則って、〇〇デトックス、という流行も幾度となく繰り返されてきた。韓国人である私の祖母は、こういった流行に異常なほど敏感であるのだが、いつだかは「酵素デトックス」なるものに興じており、何やら怪しげな発酵食品作りに勤しんでいたのを覚えている。祖母の場合は体型の変化だか何かを期待しての酵素デトックスであったが、かたや現代人の興じるデジタルデトックスから得られるものは一体なんなのだろう。現代社会に生きる人間の半数の幼少期には、スマートフォンなど存在していなかったというのに。
自分達が生み出したものが爆発的に普及し、結果として自分達になんらかの悪影響を及ぼしている為に、苦労してそれを再び手放そうという涙ぐましい努力をしている人間とはなんなのだろう。人間とはなんとも虚しく、悲しい生き物である。

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