枯れてゆく切り花

切り花が好きだ。
2週間くらいで枯れてくれる所がありがたい。

ひとしきり会話を楽しんだ後で、長居をせずに帰っていく友人みたいだと思う。
その場をぱっと明るくして、さっさと立ち去るのはかっこいい。

鉢植えの良さももちろん知っている。同棲相手やペットのようにずっと同じ家で過ごす喜びがあるし、長く連れ添ったら愛着もわく。

けれど「枯らさないようにお世話をしなくては」と、プレッシャーを感じて苦しいので、やすやすと部屋に招き入れることには抵抗がある。

私は「思い立ったらいつでもすぐに旅に出たい」と思っているので、不在時にもお世話が必要な物は極力、かかえたくない。
その点、切り花は後腐れがなくて良い。


ただし、一度招き入れた切り花は最後までしっかり「看取る」ことにしている。
要は、枯れ始めても捨てないで、枯れ切るまで見届けているのだ。

枯れてきた花をいつまでも飾ることを良しとしない人もいるだろうけれど。

枯れ切るまでの変化を観察するのはおもしろい。

同じ種類の花でも、枯れ方は皆同じというわけではなくて、早々に下を向いたり茎の途中で折れ曲がったり、最後までまっすぐだったり。個性がある。

植物の種類によって花びらの散り方も様々で、少しずつ散っていったり、一気に落ちたり、最後まで散らなかったり。

「へえ、こうなるのか」という発見があって、脳への刺激としても気持ちがいい。

木の枝や固めの茎の花だと、新しい芽が出てくることもある。それもまたうれしい。

水をこまめに変えていると、腐らずに、きちんと枯れてくれる。ドライフラワー化するというのか。最後まで、ある種の美しさがある。

枯れてゆく草花に、老いを感じ始めた自分を重ねて見ているのかもしれない。

部屋に招いた切り花先輩から、かっこいい枯れ方を学んでいる。

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