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コバルトツリーモニターの繁殖について【About the breeding of Varanus macraei】

この記事は、実際にコバルトツリーモニター〈Varanus macraei〉の繁殖に成功した、ドイツのケルン動物園とチェコのプルゼニ動物園の記事を参考に記載しています。

繁殖個体

ケルン動物園で使用した個体
  雌→全長850mm(頭胴長275mm)
  雄→全長930mm(頭胴長290mm)

プルゼニ動物園で使用した個体
  雌→全長920mm(頭胴長300mm)
  雄→全長990mm(頭胴長330mm)

※頭胴長とは、頭の先端から尾の付け根までの長さの事を指します。

飼育環境

«ケルン動物園»
200×100×70(L×W×H)のガラスケースで飼育され、一般公開されていないバックヤードにて飼育されていました。
レイアウトには巨大な枝やコルク管、植物(南カリマンタン、べザール山にて生息確認の取れているフィカス)を使用しており、床材はパインバーク(松の樹皮)を使用していました。
光源は、2本の蛍光灯(54W)と2本のバスキングランプ(100W)で賄っており、紫外線もしっかりと供給されていました。
約13:11(明:暗)で徹底的に管理されており、時折自然界の雲を再現するために、1部ライトを消灯していたりもしていました。
室温は29℃〜32℃で管理されており、ライト直下の最高温度は40℃で管理しており、湿度は約70%でした。
産卵床は、ミズゴケ:砂:腐葉土(1:1:1)の割合で制作されています。
餌は週に5回、主にイナゴ等の昆虫類にカルシウムとビタミンをまぶして与え、補足的にマウスや鶏肉、魚等も与えていました。

«プルゼニ動物園»
100×100×150(L×W×H)のガラスケースで飼育されていました。
ドアの下には、金網で覆われた直径10cmの通気口が3つあり、天井から20cm下の壁面には10×100cmの通気口がありました。
レイアウトには造花や木製の棚、複数の枝が使用されており、床材は木材チップを使用していました。
光源は、白色蛍光灯(18W)、Sere UV5ライトチューブ(18W)、T-Rex Active UV Heat(100W)で賄っており、サーモグラフィーにて管理されていました。
室温は、30℃で管理されいました。
給水には、50×25×20cmの水皿を使用していました。
湿度管理は、午前と午後に水が噴霧され、70%〜90%の範囲を常に維持していました。
産卵床には、ピートモスを使用していました。
餌は週に2回のコオロギと、週に2回のマウス(時折、イナゴに置き換えられる)を与えていました。
ビタミンは最初NUTRIMIXを与え、最終的にはPLASTINに置き換えられました。

交配及び妊娠期間

«ケルン動物園»
交尾期の指標として、まずメスがオスに近付いているのが確認されました。
この間、ペアはしばしば互いに近くで休んでいる姿が確認されました。
交尾を確認した後産卵までの大凡の期間は、25日〜35日の間でした。
交尾は常にコルク管の水平位置で行われましたが、これに関してはレイアウトの構造に依存している可能性があります。
観察された交尾は、短く見積っても5〜6分程続きました。
妊娠期間中、雌は普段より頻繁に紫外線を浴び、日光浴をする姿が確認されました。
また、この間雌は落ち着きがなく、殆ど常に動き回っている姿が確認されています。
これは、食料需要の増加が原因と考えられます。
しかし、産卵の数日前に雌は虚飾状態に入りました。

«プルゼニ動物園»
プルゼニ動物園では最初の交尾を確認した後、一般公開を辞めてバックヤードにて管理していました。
その結果、交尾をその後確認することは叶いませんでした。
最初の交尾を確認してから約3週間後、雌の攻撃性が高まる為、雄は常に雌から離れて生活していました。
産卵の2週間後、雌の攻撃性が弱まり雄が雌に接近する姿が確認されました。

卵の推積と孵卵

«ケルン動物園»
交尾が確認されてから約4〜5週間後、初めて産卵の確認がとれました。
この産卵では、計4個の卵が巣箱の中で確認できました。
卵は埋められていた訳ではなく、産卵床の上に産み落とされていました。
孵卵の為、バーミキュライト:砂(2:1)て半分満たしたプラスチック容器に、管理場所を移しました。
卵は勿論裏表が変わることなく、慎重に移動させました。
プラスチック容器のサイズは、20-22.5×12-14×14cm(L×W×H)で、容器に対して2個の卵が入っていました。
温度を一定に保つ為に、プラスチック容器を大きな薬用インキュベーターの中に設置しました。
最初のクラッチは、温度29.3℃/湿度97%で保たれていました。
154〜158(156±1.8)日間の孵卵後、4個の卵から4匹の孵化が確認されました。
孵化の数日前に、卵殻は赤い霜降りと凹みが確認できましたが、孵化が始まる直前には確認出ませんでした。
1つの卵は、以前に孵化した卵で観察されたより、さらに赤い霜降りと凹みを出現させた為、孵化を容易にするために、手動で卵を開きました。
幼体の状態が良かった為、もう一方の卵は手動では開かず、翌日に自然に孵化しました。
孵化後の卵殻の大きさは、42-50×23-25mmでした。
孵化した幼体の鼻は数時間卵から突き出ており、孵化は通常24時間以内に完了しました。
最初のクラッチが推積してから約8ヶ月後、同じペアが再び産卵しました。
同じく4個の卵が直ぐにみつかり、数日後に糞便の中から5個目の卵の死骸が発見されました。
今回は、孵化した卵の内3個は発育の兆候が見られず、2〜3週間後に処分されました。
残りの1個は、160日後間の孵卵後に孵化しました。
3度目のクラッチでは、雄が変わりました。
この雄は、前回までの雄より非常に性格は穏やかでした。
ペアでの飼育が始まってから39日後、交尾が観測されてから25日後に3個の卵が産まれました。
45-46×18-19mmの2個の卵が、当時比較的湿度の高いコルク管の中で見つかりました。
しかし、発育の兆候が見られず腐敗し始めました。

«プルゼニ動物園»
最初の卵は、長さ50〜55(52.5±2.4)mm/重さ14〜18(15.3±1.9)gの範囲でした。
産卵された全ての卵は、イェーガーFB80インキュベーター内で湿ったバーミキュライトで満たされたプラスチック容器で培養されました。
28℃〜31℃の範囲で孵化温度は、様々なクラッチでテストしましたが、温度や湿度による性別の固定化には成功しませんでした。
雌の判別は、大凡1歳頃で信頼できるようになりました。
性別の指標として、雌は雄よりも神経質であるというデータを取得する事に成功しました。

画像出典: http://varanidae.org/Vol3_No4_Ziegler_et_al.pdf

産まれた幼体の発育状況については、リクエストがあれば記事にしようと思います。
この記事がきっかけで、コバルトツリーモニターの国内CB個体が増えることを祈っています。

参考文献: http://varanidae.org/Vol3_No4_Ziegler_et_al.pdf
画像出典:Wikipedia様

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