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聞こえない告白

「そういえば、私達って知り合ってから長いよね」

「初めて会ったのは中学の時だったよね。覚えてる?」

「……そう。なら良かった」

「だって、大切な思い出だからさ」

「君は違うの?ひどいなぁー」

「ふふ、うそ。冗談」

「その時、どんな話をしたか覚えてる?」

「覚えてない?えー。何か残念」

「教えてあげようか?どんな話したか」

「あの時、君はね……私の事からかったんだよ」

「正確に言うと、君の友達の事をだけどね」

「私が同じ小学校だった男子……君の友達と話してた時ね」

「教室に入って来た君が友達にさ」

「『おっ、良いなー。女の子と話して』って言ったの」

「相手の男子は『からかうなよー』って言ったんだけど」

「私はさ、『君も何か話す?』って言ったの」

「そしたら君はさ、『あ、うん……また今度』って、顔を赤くして自分の席に行ったの」

「……覚えてる……よね」

「覚えてない?……ふふ。その顔は覚えてるよね」

「本当に覚えてない?じゃあ、いいよ。覚えてないって事で」

「覚えてるよって言ってくれたら嬉しかったんだけどな」

「うん?何て言ったかって?」

「……」

「……き……って言ったんだよ」

「うん?聞こえなかったって?」

「ふふ」

「今のタイミングじゃなかったかなぁ……」

「いや、こっちの話」

「後で教えてあげる」

「え?気になるって?」

「うーん。じゃあさ、1つ約束して」

「今から君と目を合わすからさ……」

「私と目が合ってから3秒後にうなずいて」

「いいから!じゃあ、目を合わすよ」

「いくよ」

……

(心の中で)『好きです。付き合ってください』

……

「ふふ。うなずいてくれたね」

「何なのかって?」

「後で教えてあげる」

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