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あなたは地面にもぐっていく階段の一番上の段に立っています。階段はとても古く、砕けたコン…
わたしには生まれた時から母がなかったので、近所の石材置き場にあるひとつの岩を母と定めて…
受付を済ませて入室すると、紫外線が肌にぶつかり、ぱちぱちと跳ね回る感覚に全身が襲われて…
どっちかいうと好きではなかった。きらいというのでもないけど、苦手。笑うと目がなくなって…
かちゃり、と子機のあがる音がしたので、相手の応答を待たずインターホンに名前を名乗った。…
ひとりで住む家は寒い。冬になってようやく気づいた。あたりまえだが、自分のつけたところに…
すべての花の色が夕闇に沈みはじめる頃、庭を掃いていると、子どもが手を光らせて帰ってくる。通りすぎた後ろ姿に「あんた」と声をかけると拳をぎゅっと握って立ち止まるが、親指の付け根や指の股からこぼれる青白い光は隠せない。「またやったんか。やめ、言うてるやろ」子どもは振りむき、ふてくされたように腕を組んで、手首から先が見えないようにする。「一匹だけやもん」それが嘘であることは、半ズボンにまで飛んだしぶきが夜空の星のように点々と光っていることからもわかる。はー、とため息をわざと聞かせ
お前にだけ教えたるわ。 先生にも看護師さんにも言うてへん。言うても入院なごなるだけや…
生まれてこのかた殴り合いの喧嘩というものをしたことがない。ひとりっ子だったのできょうだ…
最近、自分の夢がクマンバチの意識と繋がってもうたみたい。夜寝たら絶対おんなじ夢見る。暗…
ヤモリ飼いはじめてん。ヤモリいうか、厳密にはヤモリのしっぽ。本体がないから地味やけどな…
好きじゃなくなったから別れてほしいと恋人が言う。理由は「蟹が死んだから」だそうだ。蟹?…
正反対の夫婦って時々おるけど、おれんちのおとんとおかんがそう。おとんガリガリやし、おか…
「同窓会なんか行くもんちゃうで、なあ」って、あみちゃんがメニュー取りながら言うた。「ほんまにね、みんなしわっしわやもん」てわたしが言うたら、ルゴルサーティワンが「あんたもやろ!」てでっかい声でつっこんだから、あみちゃんとわたしで「しーっ」て指で注意した。ルゴルは隣の席の若い兄ちゃんがこっち見たのに気づいて、「ごめん」て下向いた。 三人とも適当にコーヒー頼んだらちょっとひと心地ついて、逆にさっきまでのひどさが身に染みてきた。「酒の勢いかなんか知らんけど、あほちゃう、この年で