見出し画像

我こそはヒロアカ無料公開から幼馴染にハマりヒーローズ:ライジングにたどり着いたマン【感想文】

僕のヒーローアカデミアをアニメ4期およびヒーローズ:ライジングまで観ました。

https://shonenjumpplus.com/episode/10833519556325021790

2022年9月に始まった無料公開を受けて「そういえばまじめに読んだことないな」と思い、第1話を読んでみたらスゴくいい話じゃないですか。スルスルと読んでしまい、無料公開範囲が終わったらそのままアニメに移って、これまたスルスルと見続けています。
今までは絵がカッコいいなぁとパラ読みに留めていたのが残念でなりません。

いいですねヒロアカ。
ちりばめられたアメコミリスペクト。
「人類の8割に超常の力が発現したら社会はどうなるか?」という思考実験をじっくりと描くSFじみた作風。
キャラの一人ひとりに魅力と見せ場を用意するきめ細やかさ。
それらを存分に描ききる堀越先生並びにアニメスタッフの圧倒的画力。

なにより!
劇場版第2弾『ヒーローズ:ライジング』ともなればそりゃもうすごかった!

感情複雑骨折性格終了天才爆発男和物理複雑骨折性格破綻主人公男激突炸裂全開幼馴染関係了。

※訳:この幼馴染正気か?

今回は『僕のヒーローアカデミア』の感想文、特に緑谷出久と爆豪勝己の幼馴染コンビについてお話したいと思います。

原作感想:デクVSかっちゃん2とかいう恐怖体験

主人公の緑谷出久(以下デク)は、8割が個性を持って生まれる超人社会において何の能力も持たない無個性として生まれました。
「必ず救ける」ヒーローへの憧れを捨てられないデクは、不安な気持ちを抱きながらもヒーロー育成機関の超名門・雄英高校への受験を志します。

そんなデクを「クソナード」「無個性の出来損ない」となじり続けてきたのが「必ず勝つヒーロー」をめざす天才少年・爆豪勝己(以下爆豪)。

幼稚園から小学校、中学、高校と「個性持ちのいじめっ子・爆豪と無個性のいじめられっ子・デク」という関係を10年以上も続けてきた幼馴染がデクと爆豪なのです。
超人社会だからこそ芽生えた優劣思想ゆえのいじめ構造でしょうか。こわいですね。

爆豪「来世は"個性"が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!」

原作第1話より

マジかよコイツ。

そんな関係も、デクがオールマイトに見初められて力をストックして他人に受け継ぐ個性"ワン・フォー・オール"を受け継いでからは一変。

実力者だが性格最悪な爆豪をデクが努力で追い抜いて「力じゃなく心が大事なんだ!」を読者に伝える、由緒正しき週刊少年ジャンプにふさわしい展開が始まるのです。

図に表すならこう!

でくばく

すばらしい。いかにもな王道展開ですね。
週刊少年ジャンプで8年続くマンガなのですから、これぐらいのお約束は……

お約束は……

王道展開……

この幼馴染's is 何?

読み進めていくにつれて徐々に明らかになっていく、デクと爆豪のひと言ではかたづかない関係性と2人が秘めていた感情の数々。
おかしいな画力バチ決まりアメコミリスペクト漫画読んでたはずなのに消化器官が受けつけない鉱石食ってる気分になってきたぞ?

私が「おっとこの2人は完全に様子がおかしいな?」と気づき始めたのは、アニメ第61話「デクとかっちゃん2」です
仮免試験終了後に、2人が本音をぶつけあいながら喧嘩するエピソードですね。

まず、おかしいのはデク。押しも押されぬ主人公のデクですよ。
10年以上ずーっといじめてきて、ついには自殺教唆までしてきた爆豪に対して嫌悪感以上に憧れを抱いていた点

「そりゃ普通は……バカにされ続けたら関わりたくなくなると思うよ……」

原作第118話より

と、前置きしながらも、

「僕にないものを沢山持っていた君はオールマイトより身近な"凄い人"だったんだ!!」
「だからずっと……君を追いかけていたんだ!」

原作第118話より

こう断言します。
無個性の自分にない力を持ち、どんな時でも勝つ爆豪。その眩しさに魅せられたデクは、ワン・フォー・オールを得てもなお爆豪を『勝利』の象徴として追いつづけているのですね。「私が悪いんだから」とDV被害を受けつづける現代社会の闇の化身かなにか?

しかし、デクはそんなネガティブな精神状態ではなく、真っ当な気持ちでいじめっ子の爆豪に憧れていると語ります。そっちのが怖いわ。もしかしておまえ自分がまだまっとうな青春友情活劇をしていると思っているんじゃないかね。

そんなデクのまっすぐなのか歪なのかもう何もわからん想いを向けられている爆豪。一気に同情の目を向けたくなりましたが、こちらはこちらでデクへの想いをこじらせていました。

その始まりは子どもの頃。「すごい個性を持っていてなんでもできる自分はすごい男だ!」と思いこんでいたチビ爆豪は、ある日川に落ちてしまい、デクに手を差し伸べられます。

「すごい自分がすごくない幼馴染に助けられた」=「自分は本当はすごくないのか?」

そう思ってしまったのか、それ以来爆豪はデクにキツく当たるようになり、やがて「ナード」と罵るようになったわけです。自分が上だと確かめたがるように。

それでデクが爆豪を恐れていれば話は簡単だったかもしれませんが、先述のとおりデクは爆豪に憧れています。
殴っても馬鹿にしても「かっちゃん」とあだ名で自分を呼びつづけ追ってくる幼馴染……こんな劇薬を10年以上浴びるのはもはや罰ゲームだよ。いじめの罰が現在進行形で先払いされとるこの男!

しかもデクが個性を獲得して本格的に自分を追い抜こうとしだしたからさぁ大変。さらに「デクがオールマイトに選ばれた(自分は選ばれなかった)」「自分のミスで尊敬するオールマイトを終わらせてしまった」といったコンプレックスをも拗らせてしまったわけです。

「嫌いなはずの男に憧れている」ストレートなヤベェ奴思想をひっさげているデクと、傷ついた万能感および優越感ならび焦燥感あるいは畏怖そして劣等感を大鍋でぐじゃぐじゃに混ぜ混ぜして自分でも何してんのかわからないただ幼馴染が目障りでたまらない爆豪。

図で表すならこう!

画像2

この幼馴染's is 何?

映画「ヒーローズ:ライジング」感想:ひとつになれ!?!?!?!?

https://heroaca-movie.com/2019/

ヒロアカ劇場版第2弾『ヒーローズ:ライジング』は、アニメでいえば第4期が終わったあたり――ここまで語ってきたデクと爆豪の関係が明確になった後のお話です。

正直な話をすると、見るまではあまり期待してなかったんですよね、ヒーローズ:ライジング。

なぜなら、この映画は掘超先生が最終回に使おうと思っていたアイディアのひとつを使ったとの情報は小耳にはさんでいたのです。
そういうフレコミでアピールする原作あり映画にいくつか心当たりがあり、

「こんなよくある謳い文句、逆にそうでもないのでは?」

そう思ったわけです。それにほら、1番面白い最終回案なら映画ではなく原作に使うじゃないですか。つまりヒーローズ:ライジングは2番目以下の最終回案の流用ではなかろうか?

いざ見始めれば、序盤からあからさまな第1話デクポジションの少年も登場するではありませんか。これは豪華な番外編といったところでしょうアッハッハ。ほら気づけば1年A組総力戦でチョーカッコイイ豪華バトルをどかどかやって残り20分ですよもうラスボスだけじゃないですかえっとこれ尺足りるんですかあと20分もボスと戦うんすか大丈夫なんすかアッハッハ。

「かっちゃん……方法がひとつだけ……たったひとつだけある……!」


「私の個性は、聖火のごとく引き継がれてきたものなんだ」


「かっちゃん……!!!」
「デク……!!!」

すべて『ヒーローズ:ライジング』より

1番面白い最終回のやつじゃないんですか!?

これが!?!?!?

1番面白い最終回のやつじゃない!?!?!?!??!?!?!

ラスト20分、それまで小学5年生気分で映画を観ていた私のハートが『デクVかっちゃん2』を受けた幼馴染錯乱ハートに切り替わりました。

「デクが爆豪にワン・フォー・オールを譲渡する」

完全に予想外です。なにが予想外って、そこまで2人にとって大事なものを徹底的に捨てさせる展開が現実化したのが予想外でした。

まず、受けとる爆豪の心境がただごとではありません。『デクVSかっちゃん2』の中で爆豪は、見下していたはずのデクがオールマイトに選ばれた現実に苦しんでいました。

「自分の『必ず勝つ』憧れは間違っていたのか?」
爆豪がそう思い詰めるほどのワン・フォー・オールの存在。それを自分が継承しなくてはならない。よりにもよって、自分を差し置いて選ばれたデクと手を繋いでです。

この時の爆豪の心境たるや。映画本編では、言葉にならず苦悩する爆豪の顔を約10秒の長尺で映す荒業で表現しています。一生分の屈辱と諦観が入り混じったようなあの10秒は必見ですね。たぶんスタッフに爆豪曇らせ興奮性癖マンがいるんだと思う。

一方、デクがワン・フォー・オールを他人に渡せば、彼はまた無個性に戻ります。ヒーローになりたいと願いながらも、本心で無理だと諦観していた中学3年生に逆戻りするわけです。当然、オールマイトとの約束も果たせません。

「これしかない」それだけの理由ですべてを呑みこみ、爆豪にワン・フォー・オールを渡すデク。
この映画を観るまで何度デクの自己犠牲に「たった1人のお母さんに心配かける人間が大勢を救けるヒーローなんかになれるかぁ~~~~!!!!」と叫んだかもはや覚えていませんが、この継承シーンは群を抜いてインパクトを受けました。

これは完全に想像の話なんですが、デクは相手が爆豪だからワン・フォー・オールの譲渡を決意したのではないでしょうか?

あの状況では、2つのワン・フォー・オールがなければ勝ち目がありません。理屈でいえば爆豪でなくても譲渡すべきシーンでしょう。

しかし、相手が爆豪でなければ、そもそもワン・フォー・オールを渡す発想にデクが辿りつけないかもしれない。そう考えさせられるほど、この映画に辿りつくまでの幼馴染の描写が濃密極まりない。

デクも爆豪も、とても大事なものと決別せざるをえなかったワン・フォー・オールの継承。
代わりに1番大切な『必ず救ける』『必ず勝つ』夢を果たした。2人はあの日に思い描いたヒーローになった。ヒーローズ:ライジングは、そういう話だったのだと思います。

ところで私はワン・フォー・オール継承から20分ずっと泣きっぱなしだったんですけど劇場で観た人たちは大丈夫だったんですか?ラストバトルにあえてワン・フォー・オールの喪失を感じさせる哀しいBGM流して感動させる力技やめろ

最後に

原作と『ヒーローズ:ライジング』を通して、幼馴染方向に盛大にかたよったヒロアカ感想を書いてきました。
最後に、今後のヒロアカへの期待について簡単に述べたいと思います。

『ヒーローズ:ライジング』は、原作最終回のアイディアとして考えられていたにふさわしい話だった。そう私は受けとっています。

少々『僕のヒーローアカデミア』爆豪勝己グランドルートエンディングのきらいはあるものの、受け取ったデクがワン・フォー・オールを誰かに渡して終わる展開は、非常に締まりがいいのがひとつ。

もうひとつは、活真くんオリジンとしてすごくよくできている点。ヒーロー向きの個性じゃないけどヒーローに憧れている少年が、自分のヒーローに「君はヒーローになれる!」と言われて幕を閉じる。第1話のリフレインとして美しいですし、ワン・フォー・オールがなくともヒーローの意志は受け継がれる展開がかなり好みですね。

ですが、最終回ではありません。『ヒーローズ:ライジング』をあくまで劇場版にした、本当の最終回が待っています。

読みてぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!

リアタイでヒロアカの最終回読みてぇ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!

最初は「そういやまじめに読んだことないな」ぐらいの軽い気持ちで手をだしたはずが、最終回を確かめたくて仕方なくなってしまいました。

そしてとんでもなく面白い。

いい作品に出会えました。どうもありがとう。

今回はこのへんで。ではまた。



PS:ところで本誌パラ読みしていた頃に見開きで血吐いて倒れてるかっちゃん見た記憶があるんだけど大丈夫だよね?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?