17/12/24 メリークリスマス 作:どくどくウール氏
「『……今はただ備えよう。メリークリスマス。』…っと、ふぅ…やっと書けたわ」
久しぶりの執筆を終えて、私はほっと一息ついていた。最近読みたい本が多くて、中々こっちに手が回らなかったのだ。
時計を見るともう日付が変わりそうだ。そういえば今日はクリスマスイブだったか。
浮き足立つ世俗とは切り離された私だけど、それでも神聖で楽しい日だという認識はある。
…よりにもよってそんな日に書いているのが古代ローマ皇帝の小話なのだけど。
「うーん…!久しぶりだから手こずったなぁ…へとへとだわ…」
執筆作業で凝り固まった身体を解すように腕を伸ばしていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえてきた。Ⅱ号機だ。
「マスター、入るわよ。……書き終えたのね。いつものカリギュラ帝の与太話」「ええ。ちょうど今終わったところ。でも与太話はちょっとひどくないかしら?」
「これを与太話と呼ばずになんと呼べばいいのよ。なに、バスターカラテシテンノって。どう見ても私じゃない」
「かっこいいでしょう?」「かっこよくない」「私はかっこいいと思う」「……そう」
にこにことⅡ号機をからかっていたが、ふと彼女が手に小さなお皿を持っていることに気付く。
「Ⅱ号機、それって」「餅よ。ふもとの町でモチつきをしていたそうだから、気分だけでもと思ったの」
「貴女が搗いたの?」「ええ。人間なら二人居ないと搗けないそうだけど、機械の私には造作もないことよ」
少し得意げに話すⅡ号機だけど、手に持っているのがお餅なのだから何とも締まらない。
「ありがとう。とっても美味しそうだわ。だけど…ふふふ、クリスマスにお餅だなんて…なんだかおかしいわね」
「クリスマスに古代ローマの皇帝がカラテで通り魔をする話を書いているあなたが言えることなのかしら」「うぐ」
痛いところを…そんなところまでつかなくたっていいのに。
「…おほん、とりあえずいただきます。ちょうど小腹も空いていたところだしね」
「喉に詰まらせてはダメよ。吸引機能なんて私には付いていないんだから」
「ちゃんと貴女が細かく切ってくれてるじゃない、大丈夫よ。…そうだ、言い忘れてた」
「ええ、私も言い忘れていたわ」
「「メリー・クリスマス。私の大切なひと」」
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