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【ゲゲゲの謎】思い出のヒーロー鬼太郎が強すぎて感想文どころではない
2023/12/1、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観ました。
私は『ゲゲゲの鬼太郎』に愛着がありません。
映画を見るまでは「夏休みに田舎のおばあちゃんの家で再放送を見ていた自分を覚えている」程度で、アンパンマンやスーパー戦隊のような「子どものヒーロー」枠に押し込んだまま、すっかり忘れていました。
「目玉のおやじと戦争帰り喫煙青年のバディがすごい」「本当に祟りが起こる因習村がヤバい」「被害者のはずが加害者になってしまったヒロインがいる」といったインターネット感想に背中を押されて、とりあえず見ておこうかなぁぐらいのテンションで劇場の席に座ったわけです。
TLは「親父と水木のバディが良い」「因習村がすごい」「I beg youを歌うのがうまい女がいる」はいっぱい教えてくれたのに「ぼくが小さい頃から知っているヒーローが実は誰よりも人間を憎む権利を持っていた」なんて誰も教えてくれなかった
— はちみつ (@sukideha_nai) November 30, 2023
鬼太郎、お前どういう感情で人間守ってたの……?
今回は『ゲゲゲの謎』を通して子どもの頃のヒーローにえらいバックボーンが生えてきたと「勘違い」した話です。よろしくお願いします。
鬼太郎に「人間なんて守る価値ないよ!」と叫んで困ったような苦笑を返されたいだけの2週間だった
ゲゲゲの謎は6期アニメの前日譚らしいですね。アニメのゲゲゲの鬼太郎は1~6期に分かれていて、それぞれで作風が異なり設定もパラレルじみているのもハッキリと知りませんでした。
なので鑑賞直後の私にとって「田舎のばあちゃん家のでけぇテレビの中で悪い妖怪と戦っていた不気味だけどかっこいいヒーロー・鬼太郎」と「ゲゲゲの謎で両親含めご先祖様まるごと人間に搾取されていた幽霊族が遺した希望の子・鬼太郎」は同一人物でした。
https://twitter.com/sukideha_nai/status/1730191270952489164
バスで30分かけて映画館来てゲゲゲの謎観に来て気づいたら1時間歩いてバス停どころか今どこにいるかもわからないんだけどなんで?わからないとんでもないものを見た記憶しかない
— はちみつ (@sukideha_nai) November 30, 2023
哭倉村が組み上げたシステムの醜悪さはここで語るまでもないですが、問題はあの非道が村だけの話ではなく、あの世界における日本全体の縮図でしかない点です。
日本が日露戦争で勝利したのは幽霊族の血液で作った「M」のおかげですし、第二次大戦の戦場では上司が保身のために部下を無駄死にさせる。戦後はマシになったかといえば、血液銀行が「M」を求めているあたりそうでもなさそう。村の被支配層と思われていた名のない村人たちも、実はもっと弱い幽霊族を食い物にしていただけ。
もっと掘り下げれば妖怪の住処を奪ったのは数を増やして力をつけた人間の歴史そのものなわけで「強者が弱者を搾取して強者になる」構図は『ゲゲゲの謎』における人間の業に見えます。
こんな奴ら守る価値あるか? あのクソデカ狂骨解き放っちゃえばよくない?
おやじが無茶な人柱になってまでその狂骨を止めなきゃいけないのか!? 水木がかけがえない記憶全部失わなきゃいけないほどなのか!? 人間が大好きな岩子さんがあんな体にされるのがこの世の摂理でいいのか!?
哭倉村どころか丸ごと滅んじまえよこんな人類!!!!!!!
と、ラスボス思考になったタイミングでためらないなく記者を守る現代の鬼太郎に場面転換するわけです。
鬼太郎には人間を憎む権利が誰よりもあるはずなんですよ。父さんが目玉だけになったのも母さんが自分を抱くこともなく死んだのも、全部人間のせいなんですから。
それでも物語冒頭の忠告を無視して村に入りこんで勝手に危険な目にあってる記者も助けちゃう。もっと言えば、妖怪ポストで都合よく助けを求めてきた人間の子どものために危険を承知で妖怪と戦ってくれる。鬼太郎とはそういう子なのだと90分かけて思い知らせてくる、そんな映画でした。何も言えねぇよじゃあ。あの村の悲劇から生まれた妖怪が困った人間に手を貸すまっすぐな少年になっちゃったんなら。水木、教育がうまい。
鬼太郎にめちゃくちゃ思い入れがあるわけじゃなくてアンパンマンとかゾロリとかと同じ使い古しのおもちゃ箱にそっと置かれていたんだけど、今日になってポルターガイスト起こしてるおもちゃ箱がめっちゃガタガタ揺れてる
— はちみつ (@sukideha_nai) November 30, 2023
(もう2週間も前なので定かな記憶ではないとして)劇場から出た私の頭を駆け巡っていたのは、夏休みの田舎で見ていた『ゲゲゲの鬼太郎』でした。
猫娘や砂かけばばあや子泣きジジイあたりが集まっていて、ぬりかべがのぺっとしゃべっていて、ねずみ男がなんかいて、一反木綿の背中に乗りながら髪の毛針やちゃんちゃんこで敵と戦う鬼太郎。そういう風景です。
ストーリーはよく覚えていませんが、デカくて強そうな妖怪に果敢に立ち向かう鬼太郎を「カッコイイ」と子どもながらにぼんやり憧れていたことを『ゲゲゲの謎』で思い出しました。愛着はありません。子どもがアンパンマンやスーパー戦隊を深く考えず楽しむように、あの頃の私にとって鬼太郎は当たり前にヒーローだったのです。
「無邪気に応援して憧れた子どものヒーロー鬼太郎は、実は誰よりも人間を憎む権利を持っていた」
「だけどその権利を行使することなく今日も人間を守っている」
ン十年ぶりにそんな事実を突きつけられて、いったいどういう感情で受け止めろというのか。結局消化するのに2週間かかり、今ようやく言語化して呪いを解こうともがいています。
でも勘違いですよね?
そうなんですよ。
ゲゲゲの謎は6期鬼太郎の前日譚であって私が子どもの頃から知っているX期鬼太郎とは繋がらないパラレルの関係です。
そもそも鬼太郎は人間と妖怪の仲介、あるいはトラブル解決屋であってヒーローではないって意見もたくさんあります。実際、X(Twitter)で感想を投稿したらそういう声がたくさん届きました。
だとしても、あの日劇場で打ちのめされた現実は変わらねぇんだよ。
鬼太郎に思いを馳せたあまり自我を失い意味なく歩いたバス停8駅分の時間は戻らねぇんだよ!!!!
2回目観に行きたいのに怖くて怖くて劇場予約ページ開けないんだよ!!!!!!!
愛着がなかったからこそ詳しい設定を知らず、知らなかったからこそ勘違いで勝手に情緒をおかしくする。それが私の『ゲゲゲの謎』体験でした。せめて鬼太郎が割と人間を見捨てる話も多いってのを思い出しておけばこんなことにはならなかったのに……。
今後、新しいコンテンツを楽しむ時は完全初見にこだわらず最低限の背景は知っておくべきだなぁ、と思いつつ終わります。
ところで勢いで見た6期鬼太郎第1話でよりにもよって目玉のおやじが「鬼太郎が人間を助けるのは水木に拾われた恩返し」言ってたんだけど。水木、教育がうまい。(2回目)
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