17/12/07 運には自信があるのよ? 作:ブルータス氏

「こう見えて私、運には自信があるのよ?」
ふんすと鼻息をひとつ、特に意味のない腕捲りをしながら彼女は一歩も引かない姿勢をみせる。
こんなスイッチが入った時の彼女を説得するのは骨が折れるが、彼女の言葉に賛同できない私は腕を伸ばして彼女から端末を引き離す。
「どうして引かせてくれないのかしら」「ターゲットを引ける確率は1パーセント未満よ。あなたに当てられるわけないじゃない」「そんな事は引いてみないとわからないわ」「屋敷の資源は有限よ? 無駄遣いは許容できないわね」「あ、腕を飛ばすなんてズルい!」
珍しくムキになって端末を取り戻さんと手を伸ばす彼女。その体を弾みで傷つけないように残った腕で抱えると彼女は
恨めしそうに私をみつめる。
「自分が幸運だって、その自信は何処から来るのかしら」
客観的には彼女が運の良い人だとは判断できない。療養という名目で隔離されている時点でむしろ運が悪いだろう。幸運値で言えばEかE-といったところか。
「決まってるじゃない。私は貴女に出会ったのよ」
エヘンと胸を張る。論理に一分の隙もないだろうと確信した笑顔だ。人工知能内をいくつもの反論が飛び交うけれど、どれも表に出す前に消える。結局口から出たのはただの堅物メイドとしての言葉だった。
「無駄遣いはいけません。ホラ、もう横にならないといけない時間よ」「もー、ケチー」「ケチで結構」
しぶしぶとベッドに潜り込む彼女に聴こえないように小さく呟く。
「もう、ばーか」

といった感じの話があれば病弱令嬢に引かせる名目になるんじゃないでしょうか。

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