17/12/25 サンタ魔嬢

彼女に消灯の合図をして準備に取りかかる。
サンタ服を着る邪魔になる翼を取り外す。アマゾネスドットコムから取り寄せたモコモコの上着を羽織る。クリスマスが冬で良かった。薄着の場合、装甲を脱げない以上珍妙な格好になっていただろう。
ズボンを履き、帽子を被る。鏡を見て完璧なサンタ姿、いやヒゲをつけ忘れていた。ヒゲとプレゼント袋を装備して改めて鏡を見る。完璧。
「カラーリング的にはプロトタイプの方がサンタらしいのだけれど」
それでも彼女のサンタ役は譲れない。足音と金属音をたてないように彼女の部屋へ向かう。

例年通り彼女はぐっすりと眠っている。彼女とてサンタがⅡ号機だと解っているだろうが、彼女が問い詰めたところで認めるⅡ号機ではない。その証明をするにはⅡ号機がプレゼントを置く現場を押さえるしかないのだ。そのために寝たふりをしようと目論んだのだろうが、Ⅱ号機が一枚上手だった。
午前中から雪かきやローマ雪像作りに励ませ、午後には餅をつかせた。クリスマスらしい豪勢な夕食ではしゃがせて就寝前にはちみつ入りのホットミルクを差し入れる。夜更かしが得意な彼女もここまでお膳立てされては勝ち目がないだろう。
トナカイを模した寝間着になっている事から私がサンタだと押さえて一緒にはしゃぐつもりだったことがうかがえる。まだまだね。
吊るしてある靴下の中に入っている願い事を読んでみる。何かを書こうとして塗り潰した痕と願い事がひとつ。あなたと一緒にいたい。
「バカね。これじゃ七夕じゃないの」
寝返りで乱れた彼女の布団を整え、頭を撫でる。今年も頑張ったわね。
とはいえプレゼント無しではサンタの面汚しよ。彼女が憧れるセラピストのサイン本を靴下にねじ込んでおく。あえて今回はローマを外しておくのだ。
「メリークリスマス、ハニー」
サンタは今年も去っていく。来年もこうしてプレゼントを贈れるといいのだけど。

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