見出し画像

【FF14漆黒のヴィランズ】誰かこの男(ヒロイン)たちを止めろ【感想文】

『ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ』を5.0まで遊びました。

「漆黒のヴィランズが傑作だからそこまで遊んで!」

2022年末に『FF14』を遊び始めたころからそう言われていました。8、9か月分の期待とともに突入した漆黒のヴィランズは、パンパンに膨らんだ私の期待に3人のヒロインをもって完璧以上に応えてくれたと思います。本当に、本当に面白かった。

今回は漆黒のヴィランズ感想文として、3人のヒロインに絞ってネタバレありで語っていきます。

1人目は素性も真意も全然わからねぇけど信用だけできるフード系自称ジジイお兄さん!

2人目は口を開ければ後悔ばかり口にするしくじり先輩系亡霊!

3人目はうさんくさいオッサン。

以上のメンバーでお送りします!


1.水晶公は私の『FF14』嫌いをすごい勢いで治すのやめろ

・英雄はやりがいのあるお仕事

「あなたに助けられた人たちが、大勢いる」

英雄やっててよかった……。

FF14を遊んでいてずっと疑問に思っていたんですよ。「なんでヒカセンが英雄にならなきゃいけないの?」って。ヒカセンがエオルゼアの英雄として讃えられるたびにモヤッとしていました。

だってヒカセンがメインストーリーで褒められるのって、ほとんどが蛮神を倒したり帝国を倒したりしたときじゃないですか。暴力装置として崇められているみたいでしっくりきてなかったんですね。

戦勝祝賀会や暗黒騎士クエストを通過するたびに「なんでこいつらのためにヒカセンが傷つかなきゃいけないんだ?」と憤ったりもしました。もうやめようぜ! エオルゼアの英雄なんて誰も知らない第一世界で人生やり直そうぜ!

「あの英雄は(中略)絶望の時代のそこかしこで輝いていた」

英雄やってて本当によかった……。

第八霊災が発生した未来からやってきた水晶公は、第八霊災を阻止すべく第一世界に身を投じます。彼が希望を信じて闘ってこられたのは、未来で英雄として名を残したヒカセンを救いたいからでした。

水晶公「第八霊災の阻止に賛同した人の多くが、言っていた。あの英雄のために、自分ができることがあるなんて上等だ、と」

仮にこの次元で第八霊災を止めても、彼がいた元の世界にはなんの影響もありません。彼らが知る英雄と私が知るヒカセンも、本質的には別人かもしれません。それでも水晶公や彼を送りだした人々は、絶望の時代に灯火となった英雄を助けるために力を合わせてくれたわけです。

私が「なんで戦わなきゃならんのだ? もっとラフに冒険したいんだが?」と心のなかに閉まっていたモヤモヤを、水晶公は「あなたのおかげで絶望の第八霊災に”希望”が生まれたのだ」と吹き飛ばしてくれました。紅蓮終盤のゼノスもそうだったけどこのゲーム定期的にプレイヤー本人に語りかけてくるな。

水晶公の真実が明かされるクエストの直前が『光をもたらす者』『舞台上で最も哀れな役者』なのも好きなんですよね。『光をもたらす者』で今までの大罪喰い討伐がすべて台無しになって『舞台上で最も哀れな役者』ではそんな現実も受け止めてヒカセンを労ってくれるクリスタリウムがあって。

やめろ慰めるなこの明るすぎる空は俺のせいなんだよ優しい言葉をかけないでくれ、なんて具合で「何のために戦っていたんだ?」と自問自答していた心に、水晶公という存在そのものが「無駄じゃなかった」と告げてくれたので即堕ちです。感情を完全にコントロールされてる……『FF14』の手のひらで弄ばれている……!

そんなわけなので、私は「第八霊災後の未来で英雄に励まされた名もなき人々の総意」としての水晶公に、美しさすら感じました。本当にこれでいいのかなぁと首を傾げながら10か月ほど歩んできた道のりを肯定してもらえたらそら嬉しいってもんです。I LIKE 概念水晶公。

「それで……その……大丈夫だろうか!?」

でもヒカセンが罪喰い化で倒れたときに全力で心配してくれた個人水晶公もいいですよね。

てかなんだよ「それでその大丈夫だろうか!?」って。そんな純朴青年な本音漏らすやつにスーイスイお前の光を奪って異世界転生するスイよ言われてなんて悪いやつだ許せないぜ…とか思うわけないだろ自分の善性を過小評価するなおまえが育んだクリスタリウムの人たちを見ろよ胸を張れクリスタリウムの人たちも大好きですクリスタリウム街推しです。

・お子さまもおいしく召し上がれるコンテンツファインダー

「独りにはさせないさ……!」いいよね。

私、MMORPGが苦手なんですよ。とくに協力プレイが本当に肌に合わなくて『FF14』を始めたのもソロプレイでメイン進められるって噂を聞いたからなんです。

私がMMORPG苦手な理由は迷惑かけたくないとか、セオリーの動きができなかったらどうしようとか、タンクで2グループまとめるのもまとめられるのも忙しすぎて目が回るとかいろいろあるんですが、『FF14』だと没入感の問題がとても大きいです。

たとえば蛮神。普通の人が蛮神に接するとテンパードにされちゃうから、光の加護を持つヒカセンが戦うしかないシナリオ上の理由がありますよね。だからこそ蛮神を狩れるヒカセンが英雄になるわけです。

ですが、実際は4人か8人で蛮神と戦います。しかも私が操作するヒカセンよりずっと強い人に囲まれて。「なんで知らない人がいるの?」「こんな強い人がいるのにうちのヒカセンだけ英雄扱い?」とか思っちゃうんですよね。紅蓮ラストの神龍戦もゼノスとタイマンでやらせてほしかった。コンテンツサポーターは偉大。

水晶公
「さあ……時空を超えて来たれ……!」
「ひとたび我らに力を貸したまえ……!」
「彼方の勇士、稀なるつわものたちよ……ッ!」

漆黒のヴィランズラストバトルも討滅戦なのでヒカセン+知らない人7名の討滅戦ですが、知らない人の正体は次元も時間も超越する術を持つ水晶公が召喚する”稀なるつわもの”です。これは今までと一線を画した演出だと感じました。もしかしたら『FF14』やってて一番興奮したかもしれません。

7つってコトは……1+7=8ってコト!?!?!?

エメトセルクとの相容れない衝突やアルバートの決意を見せられたプレイヤーの感情が高まりまくって、没入感が頂点に達するあのタイミングでシナリオとゲームシステムが完全に重なり合う。ヒカセンを中心に描かれた7つの召喚陣の意味に気づいた瞬間に「うわあ!!!!!!!!!!!天才!?!?!?!?!」って叫んだ午後7時ぐらい。

そもそも漆黒のヴィランズは、水晶公が次元を超えてヒカセンを召喚しようとしたのが始まりでした。第八霊災が起きた未来で英雄を救うために編み出された技術が、最終決戦で本当にヒカセンを救う構図になるのもよくできています。なによりオタクは物語の始まりが物語の幕引きを担う展開が大好き。この演出はいったい何重構造になっているのか。運動会の重箱かなにか?

あとラストバトルでムービー見終わった後に"稀なるつわもの"さんたちが居残っててクラッカー鳴らしてくれました。私も同じ立場になったら精いっぱいの祝福クラッカーを君にしそう。

・水晶公は私の『FF14』嫌いすっごい治してくれた

この流れで消えないことあるんだ

こうして振り返ると、水晶公は私が『FF14』に抱いていた苦手意識をシナリオ、システム両方の面から正してくれました。もうヒカセンが英雄になる運命を肯定できそうですし、コンテンツファインダーもいまは「まぁ私のヒカセンは"稀なるつわもの"だからな……! あ、ごめんなさい道間違えましたごめんなさい」気分で楽しんでいます。

おおむね楽しみながらもうっすら「ここ合わないなぁ」と感じていた要素に、もらえると思っていなかった答えを与えてくれた水晶公、本当にありがとう。君のおかげで楽しいことも嫌なことも『FF14』では大事なのだと知りました。

そう、ヒカセンの旅はなにひとつ無駄ではなかった。

いや結構無駄なことしたな。

2.アルバートは「俺は英雄なんかじゃないしさ…」みたいなやさぐれ嘘をつきまくるのやめろ

「なら……魂ごと、持っていけ!」

この英雄がよぉ……!!!

・英雄(ヒカセン)の英雄アルバート

漆黒のヴィランズは多彩なテーマが同時並行するシナリオで、群像劇の一面を持っています。「第一世界を救う闇の戦士」を主軸として「サンクレッド、ミニフィリア、ミンフィリアの家族昼ドラ」「真相を隠し続ける水晶公の謎」などが挙げられますが、その一つに「英雄・アルバートが自分を取り戻す物語」が混じっているのは間違いないでしょう。

かつて世界を救おうと立ちあがり、そのせいで第一世界を滅びに導いてしまったアルバート。光の巫女の尽力により完全な滅亡は免れましたが、アルバートは仲間を失い、自分も亡霊として誰にも認識されないまま100年の時を過ごします。

アンニュイ亡霊

そんな経緯なものだから、ヒカセンと再会した当時のアルバートは何もかもに諦観するウジウジ男になっていました。スクショ見返したら記憶の100倍ぐらい暗かったです。こんなお化けに安息の私室を乗っ取られてたヒカセン
かわいそう。

アルバート
「世界は決して救われないし、世界を救おうとする奴は、もっと救われない」
「少なくとも、俺はもう……。さまよっているうちに、戦っていた理由さえ忘れたよ……」

過去に囚われて一歩も動けなくなったアルバートは、死んだまま時が止まった亡霊そのものです。そんな彼の不景気なツラがヒカセンの冒険を見届けていくなかで、少しずつ柔らかくなっていくのを見るのが好きでした。アルバートは表情が絶妙だと思います。

「誰かの想いが好きだった」

スリザーバウ感想戦inヒカセンルームの懐かしむような顔とか。

事件屋で見た気がする顔

巨大タロースが動いたときの「マジかよ……」顔とか。

芸術

ごめん間違えました。「誰かの想いが好きだった」を思い出したスリザーバウ直後の罪喰い襲来で「まぁお前は誰の想いも受け取れないし守れないんやけどなギャハハ」ってなんでそんなことするの?

CV:諏訪部順一にこのセリフ言わせていいんだ……

そして『最果てに並ぶ』で過去の自分のすべてを許せると告白する、この清々しい顔ですよ。光をもたらしてしまったヒカセンをアルバートが穏やかに励ましてくれるんですよね。

「なんのために戦ってきたのか」をプレイヤーが考えさせられるこのタイミングで、光の氾濫を引き起こした彼が「絶対に間違っていなかった」と語ってくれる。漆黒のヴィランズはこういう細かい文脈を連鎖させるのがとにかくうまい……!

いま思い返すと、アルバートはこの時点で自分を取り戻していたし、永い旅の結末を予感していたのでしょうか。

冒険はどこまでだって続いていく――!

そして最終決戦。とうとう罪喰い化を止められなくなったヒカセンを、アルバートは自分の魂を譲って救ってくれました。

このシーンは全ヒカセンが好きに決まっているので細かすぎて伝わらないここ好きポイントだけ語りますが、復活のヒカセンをバックにアルバートの「冒険はどこまでだって続いていく――!」が個人的に最高です。

アルバートも最初から第一世界を救うために戦おうとしていたのではなく、かつては一介の冒険者でした。ロールクエストでも、世界を背負っていない冒険ヤロウアルバートがちょくちょく出てきます。彼の本当の始まりは世界を救う英雄ではなく、世界を気のままにめぐる冒険者だったのです。

彼の最後の言葉が何度も語られてきた「世界を救う」ではなく「冒険」なのは、アルバートが本当の意味で初心に還った証ではないでしょうか。世界だとか歴史だとかの未来すべてをヒカセンに託して、ようやく彼は過去を振り切れたのだと思います。

第一世界のツケは第一世界の英雄が支払うんだよ

そういう男だからこそ"英雄"になれたんだと言わんばかりのエーテル大斧!!!!!

「この世界の英雄に、託されたんだ」

そしてヒカセンの「この世界の英雄に、託されたんだ」!!!!

亡霊アルバートの存在はヒカセンしか知りません。あの世界の人々にとって、夜を取り戻した英雄はヒカセンです。

ですが、英雄にとっての英雄が確かにいました。部屋に帰るといつもいて、皮肉を言ったり雑談を交わしたり、ときには励ましてくれて、最後に背中を押してくれたとびっきりの英雄でした。

「いつか、ゆっくり話すよ」が叶い、彼が当たり前に語られる未来が訪れてくれるでしょうか。劇中で新しいフィールドを訪れるたびに挿入されたアルバートの語りが、実は後世に書かれた「漆黒のヴィランズ」アルバート視点の創作伝奇だったら嬉しいですね。

・2番目ぐらいに解禁されるタイプの親友系攻略キャラしやがってよ

あざとすぎる

男のヒロインがアホみたいに多かった漆黒のヴィランズですが「これノベルゲームで一生見たな…」と思わされた回数はアルバートが断トツで多かった印象です。チャイ・ヌズさんはたぶんファンディスクの攻略対象。

食事と睡眠を推奨する先輩冒険者(亡霊)

大罪喰いとの戦いを乗り越えてヒカセンが自室に戻るたび、アルバートがどこからともなく現れてふたりが語らいます。普段はたくさんの人に慕われ囲まれている英雄が、誰の目も気にせず特定の成人男性と秘密のおしゃべりをする……"トキメキ"という文字を辞書で引いたら「漆黒のヴィランズにおけるヒカセンとアルバートのプライベートトークタイム」が出るのではなかろうか。

最初はヒカセンへの警告や世を儚むセリフばかり言ってたアルバートが、密会の数が増えるにつれて自分の話をし始めるのも「あ、好感度あがってんな」感がすごい。ヒカセンからセトの話を振られて最初は驚くけど、ぽつりぽつりと思い出を話しだしたシーンにスチル絵がないのバグじゃないんですか?

先ほど「アルバートが自分を取り戻す物語」といいましたが、彼の心の変化がこういった何気ないおしゃべりで丁寧に描かれているおかげで、そう読み取れた気がします。

「おーい、不法侵入者ー」男子高校生?

あとヒカセンがアルバートに対してはすげぇなれなれしいのもぐっと来ますね。いつもどおり部屋にいるアルバートに「おーい不法侵入者ー」とか、オンド族に渡したクリスタルのくだりの「肝心なところを見ていないとは……」とか、軽口叩きまくってて。

「来いよ!」
この顔である

個人的に大好きなのが、ラダー大昇降機を見届けようとしたアルバートをヒカセンが誘うくだりです。「何ボーッとしてんだよ! 来いよ!」「やれやれ……」なんて掛け合いが聞こえそうなふたりの仕草にキュンときます。ちょっとナメてじゃれあっても許される友達っぽく接しているのが、他のキャラとはひと味違う距離感を構築していて新鮮です。

そうやって軽口叩きまくりの選択肢ばかり選んでいたので、アルバートとの最後の会話も「無茶を言うなぁ……!」を選びました。

この「こんなときも変わらねぇな」みたいな笑顔の応酬すっっっっごい好き。エンドロールの最後で大画面バーンするやつですよこんなん。

本編ではアルバートとヒカセンの魂がひとつになるトゥルーエンドでしたが、なんやかんや全部なんとかなって2人が冒険者として旅に出るグッドエンドを収録したノベルゲーム版「漆黒のヴィランズ」お待ちしております。

3.エメトセルク全部やめろ。家帰ってねこ動画いっしょに見ようプリンいっしょに食べようほらコンビニで2個買ってきたからさ。

でもそれでやめるお前を覚えているなんてできない!!!!!!!!!!!!(プリン用のスプーンを叩き折るエモートアクション)

・さあ来いエメトセルク私は「もう遥か昔で誰も覚えていないがそれでも『故郷』に帰りたいと願いつづけている」キャラに弱いぞおおおおおおおおお

「当然の欲求だろう?」

お前そういうキャラかよ!

黒薔薇でもキメたか?

紅蓮終盤あたりの「俺はソル帝!正体はアシエン!アラグもガレマールも全部俺のせい!」スーパーハイテンションなんだったんだよ!!!!

黒幕どころか会社と正反対の電車に乗って海まで行っちまいそうな限界リーマンだったじゃねぇか!!!!!!!

失礼しました。

闇の戦士となったヒカセンに不可解な取引を持ちかけ、味方ではないが敵でもない奇妙な関係となったエメトセルク。最初はただ胡散臭いなちょっとシリアスな場面で出てこないでくれますかいまマトーヤさんが死んだ生きたで大事な話してますんで程度にしか思っておらず、正直ノーマークでした。

そんなエメトセルクを「やべーなこいつ」と最初に思ったのは、惑星がひとつだった遠い昔に戻りたい願いが原動力の男だと知った瞬間です。

何もかもが現在より優れていた古代が、厄災に端を発するゾディアークとハイデリンの争いによって終わってしまった。突然の不条理ですべてを失ったアシエンは、14に別れた世界をひとつに統一して懐かしいあの日に帰るために行動していたのだと明かされます。

私が大好きな漫画に『ロックマンX』(岩本佳浩 ・カプコン )という作品がありまして、それに「懐かしい未来」というワードが登場します。かつて夢見ていた、いつかたどり着きたい未来、みたいなニュアンスで使われるのですが、エメトセルクにぴったりな概念です。むしろ「懐かしい未来」を知っていたから、彼の願望がスッと理解できたのかもしれません。これ『ロックマンX』読者以外に伝わらないのでほどほどにしますね。

ともかく、目的も理屈もわからないエイリアンみたいな存在だったアシエンが、一気に共感できるキャラクターになりました。エメトセルク風に言うならば、不気味でしかなかった「なりそこない」が人間になった、でしょうか。

私は漆黒のヴィランズを「未来」を夢見る物語だと考えています。光の氾濫に襲われて100年が過ぎた第一世界には、それでも未来を諦めない人類がたくさん生きていました。

滅びが確定している世界において明日を夢見るとはどういうことか? ノルヴラントの住民はそれぞれの生き方でその答えを見せてくれましたし、ノルヴラントの総力が作りあげた超大型タロースはその結晶です。

ともすれば、もうアシエンしか覚えていない「過去」に執着し続けるエメトセルクは、この物語にいなくてはならない悪役なのでしょう。壊れかけの第一世界や出来損ないの原初世界に情を抱くことがあっても、愛おしい過去を取り戻すためならその未来を切り捨てようとする。「厭だ厭だ」とぼやきながら。理想的なアンチヒーローです。

しゃがんでくれる大人が性癖です

エメトセルクへの共感を加速させるのが、ノルヴラントの海底に築かれた幻の故郷アーモロートです。まず街並みがすごく綺麗。パブリックイメージな中世ファンタジーにオーパーツメカ要素を加えた『FF14』で、ストレートに近現代的を思わせる都市が登場するのが強烈にエモい。

美しいアーモロートには、自分が幻だと気づいていない古代人たちが暮らしていました。その古代人がみんなほんっっっとうに善い人なんですよね。上の画像ではヒカセンたちを子どもと見るやスムーズにしゃがんでくれています。拙者子どもを見下ろさないでスッと目線を合わせて語りかけてくれる大人大好き侍と申す候。

子どもには場違いそうな議論の場に招待して一人前として扱ってくれるひともいましたし、(彼らにとって)変な服を着ていたらやさしく怒ってくれる人も。エメトセルクを探す片手間でちょっと探索しただけなのに、とても善良な人類だったのだと心で理解させられました。

「いい世界だったんだ、穏やかで朗らかで……」

そらこんな遠い目で懐かしみますよ。

ちょっと通りがかっただけの来訪者がそう感じるのですから、生まれ育ったエメトセルクの心境たるや。そして、それほど愛したアーモロートの街が厄災に滅ぼされ、生き残った隣人たちをゾディアークに食わせる判断を下したときの絶望たるや。

海底原寸大アーモロートリカちゃんハウスごっこにいそしむのも、わかる気がします。何もかも大きくなってしまった街並みや隣人を見上げながらアーモロートをさまようとき、彼は何を想っていたのでしょうね。私は「いいからメンタル行ってくれ」って思いました。

・さあ来いエメトセルク私はかつて友情を育んだ幼馴染がのっぴきならない事情で過去を忘れてしまっても決して感情を表に出さず"他人"として接してくる男に弱いぞおおおおおおお

なんでそれ言った?????

エメトセルク「言ったところで、思いだすわけもないか」

お前そういうキャラかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!

最後の大罪喰いがヴァウスリーと判明し、いよいよ漆黒のヴィランズも終盤(とプレイヤーに思いきり誤認させやがった中盤)に差しかかったころ、彼奴は唐突にブッこんできました。まさかの幼馴染属性。こんな黒幕しかできませんよって顔に書いてあるキャラデザで幼馴染はうそでしょ。

「あの人らしい運命だ」

後にヒュトロダエウスが語ったところによると、古代においてエメトセルクの幼馴染の魂とヒカセン、アルバートの魂は同じ色をしていたそうです。今まで7つの世界が原初世界に統合されたと考えると、ヒカセンは7/14ぐらいエメトセルクの幼馴染だったのでしょうか? 約分しておさななじみ1/2。水をかけるとアシエンになっちゃうふざけた体質。

「エメトセルクはヒカセンに幼馴染の面影を見ている」そう色眼鏡ミラージュプリズムすると、エメトセルクのアレコレが深読みできてしまいます。たとえば『光をもたらす者』でイノセンスを討伐した後の一連のシーンです。

ヒカセンがヴァウスリーの過去を覗くと、ユールモアの先代君主を誑かすメトセルクが登場します。心なしか口調も軽薄で、ソル帝を名乗った初登場シーンを思い出させる名調子です。

現実ではヒカセンが光に呑まれてしまい、漁夫の利をさらいにエメトセルクがやってきます。「交渉する価値もない」「心底失望した」など口では侮辱の限りを尽くしますが、直前の過去と比べると明らかに様子が異なります。実際に聞いてみるとハッキリわかりますが、暗い、重い、楽しくなさそうの三重苦です。テンションが極端に低すぎる。

あげく、別れ際には……

エメトセルク「……本当に、哀れだな」

誰に「哀れ」と言っているんですかね。第一世界を救おうとして第一世界を滅ぼす化け物になろうとしているヒカセンでしょうか。

あるいは、そんな化け物に大切な人の面影を見たばかりに勝手に期待して勝手に失望した自分自身になのでしょうか?

『FF14』で最も悪趣味で最も美しいクエストタイトル私調べ堂々の第一位※『舞台上で最も哀れな役者』とは、いったい誰を指しているのか……そもそも暁と非戦協定を持ちかけたのもヒカセンの魂に気づいたからなのか……この色眼鏡めっちゃ視力あがりますね。今なら月までハッキリ見えるぜ。

「お前、何故そこに……!?」

最終決戦ではヒカセンに幼馴染の面影を見て、強い動揺を見せたエメトセルク。結局、彼の幼馴染がどんな人か、その詳細が語られることはありませんでした。

幼馴染の名前や性格、どういう日々を共に過ごしたのか、ふたりはどんな関係だったのか。漆黒の後日談や秘話、あるいは暁月のフィナーレで語られるのかもしれませんが、もういないエメトセルク本人の口から知ることはもう叶わないでしょう。

プレイヤーとしてはちょっと残念ですが、エメトセルクにとって本当に大切な人だからこそ、ヒカセンですら知ってはいけないのかもしれません。あれだけ過去を愛した男なのですから、彼の聖域に他人が踏み入ってはいけないのでしょうね。

でもせめて幼馴染なのかだけは教えてほしかったなぁ。実はエメトセルクの「思いだすわけもないか」を聞いた瞬間にエメトセルク(14歳)(その目に深く刻まれているはずの印象的な漆黒のクマはなく、血行も良い)が幼馴染(15歳)(顔はよく見えない)(文武両道品行方正な幼馴染に「たまには肩の力を抜きなよ」とはにかみながら肩をぽんぽんと叩いている)と穏やかな風が吹く街並みを他愛ない雑談をしながら散策している記憶を確かに"視"たのでずーっと幼馴染って言ってきましたけど作中では一度も幼馴染なんて言われてないんですよね。いつか確定させてほしい。

・さあ来いエメトセルク私はまじめすぎるあまり責任感で自分では止まれない男が使命から解放された瞬間に見せる素の顔に弱いぞおおおおおおお

わかってたよお前がそういう奴だって。

『光をもたらす者』時点でエメトセルクの心はいっぱいいっぱいだったんでしょうね。元々彼はゾディアークに捧げた同胞を取り戻すため、ひいては眩しい過去に還るため、コツコツと暗躍したり世界を滅ぼしたりしてきました。ヒュトロダエウスが「根がまじめ」と評するエメトセルクは1万2000年もの間、重すぎる荷物を背負っていたはずです。

作中でエメトセルクは何度も「なりそこないより古代人が残るべきだ」と主張しますが、あれも責任感の裏返しと考えられます。

「みんなを助けるためならなんでもやる、やらねばならない」
 ↓
「今の人類はそのための生贄にすぎない。大丈夫。彼らはなりそこないで、私たちが残るべきだ」
 ↓
「だから、何をやってもいい」

こんな論法で自分を正当化していた気がします。古代人が本当に完璧なだったのなら、知的生命体の権利を侵す倫理的な問題だってわかっていたでしょうに。

積み上げてきた全部を背負って精神がぐちゃぐちゃになって、それでもまじめだから投げだせなくて……をくり返したエメトセルクは、きっと疲れていました。トドメといわんばかりに、幼馴染と同じ魂を持つヒカセンが化け物に堕ちる期待外れを晒すわけです。海底に引きこもってノスタルジーに浸るのもやむなし。私は「いいから休んでくれ」と何度も願いましたが、そんな言葉で止まるような男が1万2000年もがんばれるわけがないのです。

「悪役がどちらか、決めようじゃないか」

エオルゼアやノルヴラントの想いを背負ってきたヒカセンと、今は亡き古代の責任を背負ってきたエメトセルク。こうして要素を抜き出してみると境遇がとても似ています。

「この星の物語における悪役が、どちらか決めようじゃないか」は本当に言い得て妙で、決着をつけなければヒカセンもエメトセルクも相手の正義を否定しきれない。どちらも英雄で、どちらも反逆者です。ああ、漆黒のヴィラン"ズ"ってそういう。

反逆者の名を懸けた戦いはヒカセンの勝利で幕を閉じます。アルバートの大斧によく似たエーテルに貫かれたエメトセルクは、

エメトセルク
「ならば、覚えていろ」
「私たちは……確かに生きたんだ」

そう言い遺し、ヒカセンの頷きを見届けて消滅します。彼はその死をもってついに解放されました。失った過去も同胞も二度と戻らないですが、先に続くヒカセンたち新人類がその存在を記憶してくれるはずです。
過去だけを見つめていた男は、最期にそんな未来を夢見て荷物を降ろしたのでしょう。

エメトセルクについて最後に。彼はラダー大昇降機の前でこんな話をしていました。

エメトセルク
「戦いの末に、勝者の願いが優先されることになっても、敗者もまた尊重され、ある種の和解に至ることがある」
「そういう決着にもっていくのは、とても難しい……。 勝者が敗者を見下さず、憐れまず、敗者が勝者を仇としない。その両方が必要だからだ」

エメトセルクの最後の笑みは「ある種の和解」に至った証左だと信じてこれからも先へと続きましょう。ファイナルファンタジー6位の男は伊達じゃなかった。

おまけ.ヒカセンのボケキャラ化が止まらない

ぷりぷりミミズ漬けを食すヒカセン。そういう芸人?

漆黒の男どもと直接関係ないですけど、どうしても語りたいので。漆黒のヴィランズ入ってから明らかにヒカセンがギャグキャラになりましたよね!?

「……アリゼーと来たかった」シャワー浴びた直後に許されるのかこの発言

アリゼーとシャワー浴びたかったとか!(曲解)

「クポポ、クポーッ!」
「あれ、私またやっちゃいました?」

絶対にふざけちゃいけないシーンで盛大にチョコボの鳴きまねしたりとか!

どうした急に

「マトーヤお母さん……」はTwitterにいるオタクの言動だよ。

めちゃくちゃ怒られました

といった具合で、漆黒のヴィランズではヒカセンのおふざけ選択肢がいっぱい増えた印象があります。地味な変化かもしれませんが、私にとっては本当に嬉しい変化です。

ユニークな選択肢が増えたおかげで、ヒカセンの人間味がぐっと増した気がします。お前、冗談とか言う愛嬌あったんだな……苦難全部呑みこんでエオルゼア絶対救うマシーンなんかじゃなかったんだな……! 大喜びでアルフィノ画伯とその助手を宣言しましたし、元気に大声でかわいくて美しい我が枝フェオちゃんを呼びました。

「両方に、お説教が必要だ……!」

そしてヒカセンに人間らしさを見出したからこそ、シリアスな選択肢や展開にも感情移入できるようになりました。『光をもたらす者』『舞台上で最も哀れな役者』では彼女がなにを想っているか想像して落ち込みましたし「消えることなき希望の唄」の「両方に、お説教が必要だ……!」でテンションが有頂天に。「……!」が職人技ですよ。いい仕事してますね。

この記事であーだこーだ言ってきた漆黒の男どもの相手をしてきたのは他ならぬヒカセンです。彼女が存分にはっちゃけ、決めるときは決める人間らしさを発揮してくれたからこそ、男どもの魅力も存分に引き出されたのだと思います。

終わりに

闇を求めた物語の最後が透き通る青空。これだね

以上で漆黒のヴィランズの感想文を終わります。まるで漆黒のヴィランズ総括みたいですが、後日談にあたる5.1~5.3はまったくの手つかずです。こちらも本編に負けず劣らず面白いそうですので、この記事を書き終えたら早速進めたいですね。

ですがひとまず、ありがとう漆黒のヴィランズ! 最高だったぜ癖ありすぎた漆黒の男ども! 『FF14』にこんなにのめりこめたすべてに感謝を!

『最強の俺が死んだら帝国の一兵卒になっていたからせっかくだし最強の力でのし上がる~俺の体を使っている奴がいるけどぶっちゃけザコに決まってる~』完結

そしてお前は漆黒の感動を真正面からブチ壊してんじゃねぇよ。相変わらず気持ち悪い笑い方してんな。復活おめでとう♡。

暁月のフィナーレはゾディアークぱっくんちょゼノスVS究極合体ハイデリンヒカセンの限界惑星バトルになるのかなぁ、などと思いつつ今回はこのへんで。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?