仮面ライダーキバ コラボ妄想

やあマスター。ちょうどいいところに来てくれた。実は、分からず屋の店主が僕の演奏の価値を理解してくれなくてさ。食い逃げだって追われてるんだ。すまないが、酒代を立て替えておいてくれるかい?

いやあ助かった!僕もサーヴァントの端くれとして全くの無力というわけではないが、音楽家なんて本来戦うものじゃないしね。もし音楽家が、己の指が傷つくことも厭わず戦うとしたら……それはきっと、よっぽどのことがあったに違いない。

よし、それじゃあお礼も兼ねて、その例外の話をしよう。人類史の片隅で、天を紅く焦がすほどに生きた、二人のヴァイオリニストの物語だ。

……その世界に十三の魔族あり。

頂点に立つは牙の魔族。他者の命喰らう硝子の吸血鬼。多種族を虐げる絶対強者。

地に満ちたるは心の魔族。最も多くを生み出した万物の霊長。互いに諍いつつも愛を紡ぐ者たち。

22年の時を隔て、二つの特異点が出現した。

一つは、やがて水泡と弾ける絢爛の時代。評価はされれど理解されることに恵まれなかった青年はそこに。

一つは、技術革新目覚ましき擾乱の時代。亡き父親の輝きを追い求めた気弱な青年はそこに。

二つの魔族、二つの時代。奏者は四本の弦の上で指を踊らせ、蒼穹に向けて弓を引く。

運命が紡ぐ旋律、それは親子の鎖(きずな)のエチュード。

Fate/Grand Order × 仮面ライダーキバ コラボイベント

A.D. 1986 / 2008
連鎖魔界公演 ブラッディ・ローズ
-覚醒/隔世の二重奏-

ヴァイオリンには、弾くべき時と、聴かせるべき相手がいる。

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