黄金色

「帰ったらビールね!」
君が仕事に行く前に僕に言う。
僕は今日仕事が休みなので夕飯を準備する。
ビールに合うやつを。

君がビールを飲む姿が僕が好きだ。
ゴクゴクと飲んだ後に口に泡の髭が付く。
それをペロッとして笑顔でぷはぁ〜と言う彼女がものすごく可愛いのだ。

先程TVで金麦のCMがやっていたので
ビールって金麦でいい?
そう聞くと

金麦は発泡酒だけどね〜、いいよ。

僕はあまりビールに詳しくない。
あまり違いがわからないのだ。

何が良いの??
そう聞くと

そりゃ、生ビールが優勝だけど
金麦は金麦の良さがある!

じゃあ今日は金麦だなぁ。

いってらっしゃい。

見送った後私は買い物に出かける。
鶏ももとポテトと金麦を買って彼女の帰りに備えるのだ。
帰って来たら唐揚げのいい匂いですぐに飲みたいだろうがお風呂だけ先に入ってもらってゆっくりしてもらおう。


帰った私は唐揚げを漬け込んでギターを弾き飽きて渋々慣れない手つきで掃除をする。
仕事で頑張ってるんだ帰って来たら面倒な事は何もさせないぞ。なんならお風呂上がりの髪も僕が乾かしてあげるくらいの勢いだ。

あれ、もうこんな時間だ。
寝てしまった。
僕はレッドホットチリペッパーズのドキュメンタリーを見てる途中で寝落ちしてしまった。

そろそろ帰ってくる頃か、支度をしよう。
揚げ物ってこんな大変なんだなぁ。

つい独り言を言ってしまった。

今日は唐揚げとポテトのおそらくビールに合うであろうセット。

喜ぶかなぁ。

ちょうど一回揚げた所でドアが開く。

「ただいまぁ〜〜お腹すいた〜。」
「お疲れさま!とりあえずお風呂入っちゃって!」
今日は唐揚げと伝えると彼女やった〜と鼻歌を歌っている。

彼女はとりあえずビールと居酒屋での常套句を言って来たが先に入ってゆっくりと飲みながらご飯食べようと説得をして渋々お風呂へ向かった。

出るまでに2度目揚げ、ポテトまで揚げた。
我ながら最高のタイミングなんじゃあないか?

ちょっとおしゃれな卓袱台の様な丸型の机の上に唐揚げとポテト。
ちゃんとご飯も炊いてあるよ。

彼女はキャミソールにショーツ。
男が唾を飲む様な格好。
ニヤニヤしちゃう所だがそんなのはキショなので平然と装う。
セーフ、こんな魅力によく耐えた僕。

2人ともテーブルにつきお互いのグラスにビールを注ぎ合う。

「お疲れ生です。」
僕がそういうと彼女は咄嗟に
「それ金麦じゃなくてマルエフだよ」
と一瞬でツッコミを入れてくる。

違いが全然わからない僕は苦笑いしかできなかったが
彼女はカンパーイとグラスを前に出してくる。
今日も一日お疲れさま。


その黄金色のシュワシュワした液体を美味しそうに喉を通す。

案の定、期待通りだ。

ゴクゴクと飲んだ後に口に泡の髭が付く。
それをペロッとして笑顔でぷはぁ〜と言う彼女がものすごく可愛いのだ。

唐揚げも美味しいと食べてくれた。

僕とした事が金麦を3本買ったが2本しか冷やしていない。

もう一人一本空けてしまっている。

ごめん一本冷やすの忘れてた。
彼女はラッキープールだねと微笑んでくれた。

あぁ、そんな歌あったなぁ。
ここ最近聞いてなかったけど確かに昔の僕はそれがすごく好きだった。

知らない間に眠ってた
午後の風の中で
日に焼けた鼻 汗ばむ胸 ぬるくなった缶ビール

あぁ、すごくピッタリ。
心地いいほど似合う。

ぬるい金麦を2人で分けてすぐ無くなってしまった。

明日はお休みだからもう一杯だけ飲もうか。

僕がハイボールを作った。
たまにはハイボールもいいでしょ?
ベランダで飲もうか。蚊取り線香も焚いてさ。
夏の夜の匂いがする。
蚊取り線香の匂いも。
君のシャンプーの匂いも。


終わらないで欲しいなぁ、夏。
君は夏が好きだから。

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