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戦うこと(7.地水師)

天水訟の次に出てくるのが、地水師(ちすいし)。天水訟は争いが起こりやすい状況ではあるものの勝てる可能性が低いため自分の主張を無理に押し通そうとしないことの大切さを示していたのに対し、地水師は「戦うこと」を意味します。 

地水師

「師」という字は、師団などの言葉があるように「軍隊」の意味。中国の周の時代の軍制で2500人規模の軍隊を指します。
五つの陰の中、下から二番目に陽が一つ入っている地水師。五陰が群衆や一般兵、一陽がしっかりした指導者を表しており、優秀なリーダーの采配の下で戦う形です。
 
戦いはリスクもあれば大きな痛みや苦しみも伴うもの。だからこそ地水師の卦では戦うにあたって、正しさや適切さが大切だということが強調されています。やみくもに進んだり勢いに流されたりするのではなく。過信せず、対策をしっかり取り、状況に即した判断をすること。
地水師は、前のめりにこちらから戦いを仕掛けるというよりも、状況を受けて試練に立ち向かうという雰囲気の卦です。
 
水雷屯から見てきたように人の成長に沿って考えるなら、地水師はたとえば受験に向かって努力するようなものでしょうか。受験戦争や就職戦線という言い方もあるとおり、個人でも何かを手に入れるために多くの人と競わなければならない時があります。
また組織の中や仕事上でも、問題を解決したり交渉を成立させたり案件を勝ちとったりすることなど、目的に向けて戦わなければならない状況はよくあるでしょう。地水師は人生や社会におけるそんな状況に重なります。
 
地と水で構成される地水師。地の象は易においては群衆を表し、戦いを連想させる言葉がかけられていることがよくあります。一人一人の力は小さくても集まって大衆になると大きなうねりを起こすもの。それは戦いのような大きなことにおいても小さなことの積み重ねが大切、ということを示しているようにも思えます。また大きな目的のためには多くの人の協力がなければならないことも。
下卦の真ん中にある一陽は、行き過ぎず引き過ぎない適切な判断ができる意思決定者の存在が不可欠であることや、指揮命令系統を一元化する必要性を示しています。
 
欲しいものを手に入れ守りたいものを守るためには、時には戦う必要がある。戦うときに大切なことを教えてくれるのが地水師という卦です。

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