見出し画像

風が吹く(9.風天小畜)

水地比の次に出てくるのは、風天小畜(ふうてんしょうちく)です。

風天小畜

小畜とは「小さく畜(とど)める」という意味。少し停止すること、何かを少し蓄積することを表します。
 
五つの陽と一つの陰で構成されている風天小畜。陽は進もうとする力、陰は留めようとする力で、一つの陰が五つの陽を留めようとしている形です。弱い陰が強い陽を止めるのは容易ではないですし、数としても圧倒的に陽が強いので、留められる力は弱いもの。そのため「小さく畜める」という名前がついています。
 
『易経』の風天小畜の卦には、次のような言葉がかけられています。

雲が集まってくるが、雨は降らない。

(密雲雨ふらず)

ここでの「雨」は、恵みの雨を指しています。干天の慈雨。成就させたい願いの実現につながる、時の後押しともいうべきもの。
 
雲が集まってきて、雨が降るのではないかと期待している。けれどまだ恵みの雨は降ってこない。期待通りに物事が運ばないような雰囲気があります。
それは、叶えたい願いについて行動に出るには時が満ちていない、まだ大きな行動にでるべきではないという状況です。
でも足止めする力は大きくはなく、いずれそう遠くない時に動ける時が来るはず。一旦立ち止まり、今できることをすること。そんな先に見える希望も、同時に示している言葉です。
 
この風天小畜は、『易経』の卦の言葉を記したと言われる文王が殷の紂王によって囚われの身になっている時の状態を表しているという説があります。後に文王の子である武王が紂王を倒し、殷は滅ぼされ周の時代となりますが、その前の耐えなければならない困難に直面している状況です。
 
風と天でできた風天小畜は、時代の変化の風が吹き、自分の中にも変化への願望が吹いている姿でもあるのかもしれません。まだ目に見える形での変化はないし、今は時の後押しもない。いずれ願いは叶うかもしれないけれど、それは今ではない。今は留められて耐える時。
 
でも時が満ちれば蕾は花開くし、必ず季節は進むから。つまずくことがあっても、失敗や障害によって止まることがあっても、必ず実現させようという思いを持ちつつ、今はまだ力弱いけれど、それでも今できることをすること。止められるたびに、初心を確認し、退くべき時には退き、慎重な姿勢で。
そんな力強さを感じる卦です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?