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易とは ~変化すること~

「易(えき)」には様々な側面があります。易占という易の考えを用いた占いもあれば、易について書かれた書物『易経(えききょう)』は儒教の経書の一つ。易の考えは自然観や宇宙観を表したものであり、東洋医学や東洋哲学など古代中国発祥の様々な学問の根底に流れる思想の元になっている、ともいえます。
 
様々な側面があること、そして長い時の中でそれぞれに発展したり分岐したり(たとえば易占一つとっても「周易」「断易」「梅花心易」など複数の種類があり、それぞれ考え方や判断方法が違います)異なる分野にそのエッセンスが取り込まれたりされたことで、「易」と一言で表されていても違った意味合いを持つことがあります。それは易そのものが、様々な思想の源流となるような、豊かさを持っているということでもあるのでしょう。
 
一言で表すとしたら「易」とは「変化すること」。時が止まることなく流れていくように、状況や物事は同じように見えても常に揺れ動いていて少しずつ変化していく。易は、そんな途切れることのない変化を写し取って表したものです。そして『易経』に書かれているのは、その変化の種類や変化する状況に向き合うための知恵。
 
『易経』は英語訳では『Book of Changes(変化の書)』。「易」という言葉自体が「変化すること」を表します。それは、好調な時がずっと続くわけではなく、また厳しい状況も好転する時が来るということ。満開の花はやがて散り、冬の次には必ず春が巡って来るように。何事も止まることなく変化循環し続けることは、自然界の法則でもあります。 

易がいつどのように成立したのか、明確には分かっていません(中国神話の時代に易の基礎が作られ、約3000年前の周の時代に発展し、約2500年前に儒教の祖でもある孔子によって完成したという伝説がありますが、現在では実際の成立時期はもっと後の時代のはずだと言われています)。それでも易が古代から連綿と続く歴史を持っていることは確か。それは、二千年以上前から「変化すること」が強調されている、ということでもあります。日常の中では誰でも、つい目の前のことだけに意識が持っていかれたり、何かを変えるのを面倒に感じたり、変化に鈍感になってしまいがちだからこそ、変化の大切さは強調し過ぎることはないのかもしれません。
 
時の流れや何らかのきっかけによって、物事が移り変わっていくこと。また理想の状態の方へと向かおうと、自分から動いていくこと。変化には他動的なものと自発的なものがありますが、そのどちらも同じくらい大切。それは、行きあたりばったりで状況に流されるのではなく、今の状況を見て少し先に控える変化に備えること、そして自分の中でよりよく変化しようとすることでもあります。
 
年末年始の区切りの時間は、目の前のことだけではなく、もっと大きな視点で物事を考えるのに適した時期といえそうです。今はどのような変化の時間の中にいるのか、また自分自身にとってよい変化を起こせるように、立ち止まって次へのステップを考えられるような、そんな節目の時間にできればいいなと思います。

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