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一人では得られないもの(13.天火同人)

天地否の次に出てくるのが、天火同人(てんかどうじん)。同じ志を持つ人と集まり協力すること、協働することを表す卦です。

天火同人

天の下に火という配置は、空に太陽が昇り始め、辺りを照らすような形。
この卦にかけられている言葉に次のようなものがあります。

広野で、人と集まる。思うことは通る。

(人に同じうするに、野に于いてす。亨る。)

広野に集まるという言葉は、特定の人たちだけの利益を追求しようと閉じられた場所で密談するのではなく、明るく広い野原に皆で集まるように、隠すものなく公明正大に、広い視野を持ち私心なく、全体の利益に向かって皆で協力していくこと。そのようなあり方であれば順調に事が進むことを表します。
 
広々とした野原を、明るい太陽が照らしているような、天火同人。
家や会社や電車の中など壁に囲まれた中にいると、知らず知らず視野が狭くなってしまうような気がします。また毎日決まった人とだけつき合い、同じルーティンを繰り返していると、考えが凝り固まってしまいがちです。そんな日常が続けば、自分ではこれが普通だと思う物事の捉え方から、自分の限界を狭く考えて小さくまとまってしまうことまで、さまざまに影響があるでしょう。
普段は屋内や周囲に建物がある場所で過ごすことが多いからこそ、たまには天火同人で描かれているような、太陽が暖かく照らす、遮るもののない広い野原に立つイメージを持てるといいなと思います。頭の中で完結したり狭い範囲に閉じこもったりすることなく、明るく視野を広く。顔を上げて開いた心で、物事をよく見ること。自分や周囲のことだけを考えるのではなくて、全体にとって良いことを考える視点を持って。
 
天火同人は、人と協力して何かを行うことを表します。それは一人のリーダーが強力なリーダーシップでその他の人々を引っ張っていくような形ではなく、それぞれ実力や才能がある人が集まって協力し合って進んで行くような形です。
チームとなってはじめて成せることがあります。違う音色を持つ楽器が集まるからこそ、オーケストラのシンフォニーを作ることができるように。それぞれの配役や演出や裏方を担う人がいるからこそ、舞台が成り立つように。それぞれのポジションを担当する人がいるからこそ、球技ができるように。
 
人と集うことで、立場や個性の違いが浮き出ることもあります。時には内部の問題や軋轢が生じることもあり得るけれど、物事を明るい光の中で正しく認識し、整理し、人と協力し、積極的にやるべきことをすること。
広く多くの人と交流することによって生まれるものがある。思い込みに縛られず、心を開いて、広く周りを見渡すこと。そうすることで、自分だけ一人だけでは決して得られないものを得られることを示しているような卦が、天火同人です。

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