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季節を生かす(11.地天泰)

天沢履の次に出てくるのが、地天泰(ちてんたい)です。 

地天泰

地が上に、天が下に、配置された形。現実とあべこべのようですが、上へ向かって昇ろうとする天の気と下へ向かって降りてゆく地の気が交わり、陰陽の気が通じ合って物事が滞りなく交流する、泰平の時を表します。
会社でいえば、上層部の意思が現場の人によく共有され、現場の人が持っている感覚も上層部によく伝わっているような状態です。
 
内側を表す下三本が陽で、外側を表す上三本が陰という形は、人にたとえれば、内側には強い意思を持ちつつも、人に対しては柔和な態度の人。強くなければ優しくなれない、という言葉を思い出すような形です。
または地位や年齢が上の人が、職位や年齢が下の人を尊重し、下位の優秀な人に仕事を適切に任せたり時には教えを請うたりする姿と見てもいいかもしれません。
地天泰は、陰陽の気がうまく交わる調和の時ですが、それは上記のような姿勢やあり方あってのもの。
 
地天泰は、陰の中に陽が増えてくる形でもあります。冬至で生じた陽が増えてきて、地天泰では下の三本が陽となり、時期的には立春を過ぎた初春や早春。
虫が地中から外へ出る準備を始め、木々が枝に養分を行きわたらせて開花の準備をし蕾を膨らませる頃。梅が花をほころばせ、モクレンや桜や桃などが花を咲かせる準備をする時期。水仙が香り、クロッカスやチューリップやアネモネなど色とりどりの花が足元を彩り始める前後。
地中や植物の内部に春の陽気が満ち満ちて、空気中にも春の気配が漂う頃のイメージです。
 
地天泰は動植物が活動的になり始める季節、もしくはその直前。行動するのに適した時であり、期を生かすべき時でもあります。季節が止まることはないように、いつまでも動きやすい時季が続くわけではないからこそ。
 
寒さが和らぎ過ごしやすい日が増えてきて、行動しやすい季節が到来するのは嬉しいもの(厳寒や酷暑だとそれだけで動きたくなくなるのは、生き物の自然でしょう)。
 
地天泰の卦は、感謝の時ともいえるかもしれません。少しずつ暖かくなる陽ざしに、少しずつ日が長くなってくることに。動ける季節、動ける環境に。その状況に感謝しつつ時を生かすこと。
人生にも動きやすい時、動きにくい時があります。それは突発的な社会状況の変化による場合もあれば、個人的な事情やライフステージの変化などによる場合もあるでしょうが、今できることがいつでもできるとは限らないのは変わりません。
 
動きやすい季節をあたり前のことと思わず、いつまでもその状況が続くと思わずに、動ける状況に感謝し、今を大切に生かすこと。そんな姿勢を思い出させてくれるのが地天泰の卦です。
 

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