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天の恵み(14.火天大有)

天火同人の次に出てくるのが、火天大有(かてんたいゆう)。

火天大有

空(天)の上に太陽(火)がある、太陽が空高く輝いているような形です。
健やかさや強さを表す天と、明るく輝く火。目標に向かって力強く進む様子のようでもあり、輝くような才能が何にも阻まれることなく発揮されている様子のようでもあります。
 
大有とは「大きなものを有する」「有するものが大きい」こと。
そして、高く昇った太陽が辺り一面を明るく照らしている時とは、物事が明瞭になり、行動に適している時です。
盛運で、まるで天の恵みや後押しを表すような火天大有。恵みを恵みとして受け取るということは、与えられたものを生かすこと、はっきりと物事を見て判断し行動することでもあります。たとえチャンスが目の前に来ていても才能があっても、生かさなければ与えられていないのと同じ。ものにしたいと思ったら行動は欠かせません。
 
また強い光があれば影が濃くなるように、多くを受け取る時は、同時に生じやすい負の面への対処もしなければなりません。
 
目立ったり何かを手に入れたり上り調子の時には、リスクが足元に近づいて来やすいものです。「始め」の段階から注意深くある必要があることが『易経』には書かれています。
景気良く見える人には、誘惑や罠、悪い人や騙して利用しようとする人が巧妙に近づいて来ることが少なくありません。または利益や結果を出すことを優先して、ちょっと引っかかる部分もあるけれど皆もやっていることだから大丈夫だろうなどと問題を軽視して何かを始めてしまうと、途中から修正したいと思っても難しく抜け出せなくなってしまうもの。
とにかく何かを始めたり成そうとしたりする時は、最初から注意して、始めを踏み外さないこと。最初の段階から、害あるものと関わらないように自分を律すること。
盛運で好調に見える時ほど慎重さを忘れてはならないと注意を促すのが、易の姿勢の一つでもあります。
 
与えられるものがあるなら、それを生かすことを期待されるものです。持っているものが大きいなら、それに伴う責任も大きい。地位がある人には、相応の責務があります。
恵みを生かせるかは、その重荷に耐えられるかという面にもかかってくるのかもしれません。負荷に耐える力や心身の強さ、自分のことだけを考えるのではなく全体を見るような視点の高さ。
 
ただ火天大有は一つの陰が五つの陽を従えている、陰がトップの地位に就いている形です。受け取ることや柔軟さを表す陰。火天大有が表すのは、強力なリーダーシップで周りを引っ張っていく姿ではなく、周りの力をうまく生かすリーダー。
 
何でも自分で行わなければならないとすべてを背負いこむのではなく、実力ある仲間の力を借りること。人のいい面を認め、その力を発揮してもらいやすいような環境を整えること。全体を見て悪い部分を抑え良い面を伸ばすように差配すること。
それは持っているものや与えられているものを認め、感謝して、生かす姿にもつながります。
 
明るく輝くような時、または大きなものを目ざす時ほど、与えられたものをありがたく受け取り生かすような、柔らかな姿勢も大切なのかもしれません。そんなことを示しているのが、火天大有です。

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