リンゴの美味しい食べ方を、わたしは忘れたくなくて
日曜日の朝。まだ人気のない神保町の街を、とぼとぼと歩く。
目指すのは、大通り沿いにある、一棟の雑居ビル。
エレベーターに乗り込み、「3」のボタンを押す。
降りた先には、「無用之用」と書かれた看板が立てかけられていた。
木箱に入った無数の古本たちが、わたしを出迎える。
ぽつねんと入り口付近に佇むわたしに、いつもの店主さんが無言で会釈をする。
わたしは深々とお辞儀を返し、それから、本の海の中を彷徨い出した。
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友人からその知らせが入ったのは、土曜の夕方のことだ