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『映画大好きポンポさん』感想 「切る」ことの難しさ

のなめちゃん、ポンポさん大好き!

ということで『劇場アニメ 映画大好きポンポさん』、2周見てまいりました。

しかし公開がこんなに待ち遠しかった映画も久々ですね。次点が7月公開の『サイダーのように言葉が湧き上がる』(1年待たされている)ですが。

ポンポさん自体のおすすめは2巻が出たときにしています。
1巻はpixivで読めるよ。

以下ネタバレありの感想です。

前半

簡単に言うと、僕が見たかったポンポさん第1巻のアニメをやってくれていてとても良かった。

この作品の原作を読んでいた人が何に惹かれていたか、それはこの登場人物たちの、コミカルながら狂気をはらんだ創作への情熱だろう。

かくいう僕もその一人で、この作品において最も好きなその狂気的ともいえるセリフ、シーンの数々を忠実に再現してくれていたのが嬉しい。

例えば、「幸福は想像の敵」とか「このシーンを撮るためにここまでやって来たのよ!」とか。

時系列も分かりやすく整理されており、テンポよくカットが移行していく様は見ていて爽快感があった。

そして原作同様、キャラが個性的かつ魅力的。

ポンポさんは相変わらず見た目で年齢がわからないものの人間的魅力が演技から、しぐさから不思議と伝わってくる。漫画では後に学生だと判明してみんな腰を抜かしたのだが・・・(大したネタバレではないです)

ジーン、ナタリーは好きなもの、やりたいことにまっすぐ。ジーンのまっすぐさはこの後いろいろと問題を引き起こすレベル(映画では引き起こしていたが)なのだが、それは続編を読んでほしい。2人とも俳優さんが声を当てていたが、声優への先入観なく楽しむことができて良かった。
マーティン・ブラドックに声をあてた大塚さんは、逆に違和感がなさすぎて怖かった。原作を読んでいたころに脳内で再生されていた声と何一つ変わらなかった。

何より、アニメーションになって一番良かったと思ったのは、どのシーンをとっても絵がとても綺麗なこと。特にナタリーが水溜りを踏んだところに朝日が煌めくシーンは鳥肌。ジーンがバスの中から思わず見惚れてしまったシーンだが、元の絵にエフェクトをどんどん掛けていって絵が完成していく瞬間はワクワクしながら見てしまった。

細かい動きが漫画以上にしっかりしていて、一瞬も飽きることのない前半だった。

どうでもいいけど、アニメーションでタイムラプスやるの面白いよね。

後半とアニメオリジナル要素

ロケ地スイスにてポンポさんが「ジーンくん。この映画、間違いなくニャカデミー賞とっちゃうぜ。」との言葉を残していきなり会場に移るのが原作なので、思った以上のテンポ感で進んでいくことにびっくりしていると、このセリフ時点でまだ45分程度。

そこから舞台はニャリウッドに戻り、ジーンの編集シーン、そしてアランの融資プレゼンへと移る。

このアランというキャラに対しては正直賛否両論あると思っていて、僕は4:6で6が否定くらいの立ち位置だと思う。それは決してこのアランやエピソードが悪かったというわけではなく、単純に僕がクリエイター:社会人の割合が4:6とか3:7であることに起因しているのだと思う。

実は、漫画では一度も作られたMEISTERを見る側の人や、スポンサーの話は出てこない。(続編では出てくるが)

そこでアランを登場させることによって、クリエイターの視点とは別に、それを取り巻く現実だったり、予算の話だったり、あるいは観客の大半であるだろう視聴者層の視点を入れることができた。

現に、感想を見ていてもアランのプレゼンシーンが良かったという人もいれば、あのシーン自体が蛇足だったという人もいる。

この映画がある程度大衆に向けられるものであるためにはこのエピソードはあった方がいいんだろうな、でももっと尖った作品であってもよかったかも?と思う。いい感じにマイルドになったというか。

しかしまあ全世界への配信とか、クラウドファンディングとか、1巻が出たころにはまだどちらも今ほどの市民権を得ていなかったような気もするし、現代感が一気に出たシーンでもあった。

そして最後のセリフ。これがインタビューを見ている人ではなく、観客の我々に対しての言葉になっているのも良い仕掛け。この映画の時間が90分だと分かったタイミングで我々全員「やりやがったな!」と叫んでしまったものだ。

映画そのものと劇中作「MEISTER」の関係性

僕が『映画大好きポンポさん』が映画化した中で感心したのはこの点。

漫画では大きく触れられることのなかった劇中作「MEISTER」と本作がきれいにリンクするように、そして大きなメッセージ性を持つようになったことだ。

映画しか見てこなかったジーンと音楽にすべてを捧げてきたダルベール。二人は多くのものを切り捨てて、映画/音楽という目的に向かってただただ進んでいく。その重ね合わせ方、そして2人分の重さが乗ったこの創作についてのメッセージは嫌でも視聴者が、「自分の生き方はどうだった?」と自らに問いかけることにつながる。

僕自身捨てるのは苦手だし、捨てる方が得意な人は少ないだろう。家族も、仕事も、娯楽も、手放せないままに音楽を気ままにやっている。音楽を仕事にする気概もない自分にとっては、すべてを犠牲にして打ち込むジーンやダルベールは純粋にうらやましく、尊敬に値する。自らの仕事に誇りを持つほかのキャラクターたちも同様だ。

みんなが前を向いている物語

ポンポさんの作者の杉谷さんは無類のアイカツ!ファンだ。

Twitterをさかのぼれば、多くのファンアートを見ることができるだろう。

僕もアイカツ!シリーズは大好きで、と言っても最初のシリーズしかちゃんと見れていないことを謝罪しておくが・・・、ともかく、アイカツ!は登場人物が誰一人として相手を蹴落として・・・などといった考え方をせず、みんなが自分自身と戦い、前を向いている物語だと思っている。

その点では、ポンポさんはアイカツ!の精神性を受け継いでいる点があると言えるのではないだろうか。ポンポさん、ジーン、ナタリー、ミスティアと自分が目指すことにまっすぐ進んでいくキャラたちは、アイドルのように輝いて見える。

アランも最初は後ろ向きな部分が大きかったが、ジーンと出会ったことで改めて自分の道を見つけた。アランは視聴者寄りのキャラクターなので、これを見た観客にも、改めて自分の道をまっすぐ見つめられるようになってほしいという気持ちがあるのかもしれない。


のーねーむの映画の小部屋

ポンポさんには各キャラ(メインスタッフ)の好きな映画3選が紹介されており、キャラについては原作コミックの巻末に解説漫画が載っている。特に1巻のカバー下の漫画はぜひ読んでほしい。

ポンポさんの挙げている3作は『セッション』『デス・プルーフ』『フランケン・ウィニー』。
早く『デス・プルーフ』を見たいところだが、とりあえず先日『セッション』を見た。今はアマプラで見れるのでぜひ見てほしい。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B016B9JQ0S/ref=atv_dp_share_cu_r

いや、これアカデミー賞受賞したのか。こんな尖ってるのに。

最後は大団円!みたいなのを想像していたら最後までうげ~って感じで重かった。しかし重さはあるものの、狂気と、解放を兼ね備えた名作だった。

ちなみに僕の好きな映画は『蜜蜂と遠雷』『シコふんじゃった』『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』です。邦画のみで今選んだ。

実際なんだかんだ、邦画が好きなんですよね。今でもアニメ映画を主に見てることが多いですが、邦画もよさげなのは積極的に見に行くことにしています。今年は映画館が閉まっている時期が多かったですが、『花束みたいな恋をした』は良かったです。いろいろとしんどくて。


ポンポさんは今年出た3巻で持って大団円。映画見て良いな~って思った人は全部読みましょう。正しい順番は以下の通りです。

3巻は本当に3巻でした。大好き。

ということで今日はここまで!

皆様のサポートは、次回作品の制作費に充てさせていただきます。