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スラムの犬から王になれ!!

映画の感想ってそのうち脳から消えちゃうから覚えているうちに書いておくことにするよ。
自分用だから読まなくても良いぜ。
後半だけ※ネタバレ有※つってあるネタバレある記事出すから、いやな人は途中で読むのやめてね。

犬王って何?恐竜キングみてえな事?

これ…wikipediaッス…

犬王 - wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AC%E7%8E%8B

ウンチ大百科-下巻-

まあ要するに黒柳徹子と同じで実在の人物なのね。いや黒柳徹子は架空か。

ただじゃあ伝記映画かって言うと全然違うので身構えなくていいぜ。
この犬王からインスピレーションを得た『平家物語 犬王の巻』っつー小説があってそれの更にアニメ映画化みたいな事らしい。
経緯としてはほぼ『パリピ孔明』と同じやね。


高校生の俺「能楽ってロックじゃん(笑)」

まず最初に言いたいのが、
犬王の劇中映像が公式からいくつかYouTubeに流れてるけど、
アレ全部一切見ないで下さい

全部のシーンを初見で見て欲しい。絶対そっちのが良いから。

「でもどんな映画か気になるし…」って人もいるよな。うんうん、それは彼氏が悪いね。
うるせえよバカ殺すぞテメェ。そんな心配はいいからパッションだけ持って劇場に行けや。

まあぶっちゃけ犬王、刺さらん奴には何ともない映画だよ。1900円と1時間半無駄にするだけかもね。(そんなに失敗したくねえなら一生ホームアローン3見てろよ…カスが)
なので一応この映画が刺さりそうな奴を箇条書きにします。一個でも当てはまったら劇場に行け。

  • ボヘミアンラプソディー見に行った時劇場で小さく足踏みしてたヤツ

  • ライブハウスに行ってたヤツ

  • ミュージカル好きでライオンキングの物真似してるヤツ

  • THE FIRST TAKEの火炎の物真似」が好きなヤツ

  • 高校生の時「○○ってロックじゃん(笑)」みたいなこと言ってたカス

  • ノイタミナのモノノ怪見てたヤツ

  • NetFlixのどろろ見てたヤツ

異常です。
当てはまるヤツは劇場で見ないと死にます。

「じゃあ実際どんな映画なんですか?見つけにくいものですか?」って奴もいるだろう。
一言でいえば『ライブ感に極振り』だよ。
たまに音と一緒に映像流れるタイプのライブあるじゃん。アレの一番盛り上がるところが1時間半あると思ってね。

この映画は能をロックに再解釈してるんだけど当然、能="申楽"のシーンがメチャ多いのね。
だからストーリーなんて二の次、いやちゃんとしてないって意味じゃなくて、本当に二の次なのよ。
ひたすらに能のライブシーンで尺を使う。もう気持ちいいくらいずーーーーーっと。アニメーターのやりたい放題だよ。
ひたすら圧倒的な音楽と映像美を見せられ続けテンション上がるようなことばっかりしてくる訳で、いっそライブ感だけの映画って言いきっちゃってもいいくらいですよ。

いやほんと小さいモニターとAirPodsなんかで見るのは惜しいぜこの映画。
確かに100点満点の映画じゃないよ。80点くらい?
でもこの映像と音楽は劇場の設備でデッカく楽しまないと損なのよ。
実際俺は冒頭のたった30秒で「この後がどんなにクソでも絶対に来てよかった」と思ったよ。

つーわけでお前らも重いケツ上げて、近所で一番音がデカい劇場に行こう。



※ネタバレ有※















※最近どう?元気?(笑)※











犬王GT(ごめんなさい手塚治虫先生)

みんなはどんな犬が好き?俺は雌犬。
でも今日からは犬王って言うわ。

まあ犬王、和柄テイストで伝奇アクションモノだからモノノ怪オタクの俺なんて刺さりまくりだよそりゃあ。
とにかく冒頭でガッツリ観客を掴みに来てる。
琵琶法師の語りがだんだん図⇒情景⇒アニメになっていくニュートラルな入りからの特級呪物『ムジュラの能面』。
やったー!!平安あるある、『呪いメッチャ強い』だ!!

あのシーン何か怖いというよりもっと深いヒトが生理的に恐怖するような画作りになってるの凄いよね。
異常な呪いを放つ面、それ以上に異常な狂気に呑まれた能楽師。呪いの仮面を被った、つまりは呪いを演じる為の舞。膨れ上がる胎、生まれ落ちる人ならざる蛭児。
日本的な"呪い"の概念が一挙に集約されたそんなシーン。

でまあこのシーンで気づいた人も居るかもだけど犬王、めっちゃ"どろろ"です。
これについては後でも言うわ。

その後は視点が友魚(トモナ)に変わるわけだけどここでも出ました特級呪物『草薙の剣』。
そこで友魚(トモナ)は盲人になって、平安なので当然琵琶法師になるワケ。ちなみに江戸時代だったらビートたけしか綾瀬はるかになります。
劇中で明言はされて無いけど、犬王って基本的には呪いの物語。呪われた者同士が呪いを振り切ろうと抗いもがく話だよ。

で、俺は記事書いてて気づいたけどこの琵琶法師って="ロックンロール"なんスよね。
なに言ってんだお前狂ったか。は?お前が狂え。
まあ要するにこの映画の二大要素『能楽』『ロックンロール』がここで揃うのよさ。丁寧な伏線だよこれも。

そのあとはまあ、
舞う⇒呪い祓う⇒体のパーツ戻る
のループですよ。
あ、気づいた?

そう、どろろシステム!!

要するに犬王の大枠ってバトルなしのどろろなんよね。

もしこれが全12話の深夜アニメだったらクソアニメだと思うよ。
けど1時間半だと能シーンも3つくらいしか入らないから大満足ですわ。むしろ劇中モブみたいに「もっといろんな犬王の舞が見てえ!!」ってなる。
そう、この映画"劇中の観客"と"実際の観客"をシンクロさせるのが超うまいのである。

俺はアニメ評論家でも映画評論家でもないので専門的な事は知らねえけど、犬王の能は"客席からの視点"のカットがすごく多いように見えた。
群衆で見えない縁者とか、見上げるような遠景のカットとか。
それこそ「彼らは今こんなショーを見てるんだぜ!!」ってな画面。
実際、能のシーンはほんとにすっごいエンターテイナーって感じ。個人的にはそれを舞台装置込みで見せたのが良い部分だと思う。
「観客にはこう見えてる」っていうオーバーな脚色じゃなく、マジで目の前で"コレ"が起きてるっていうライブ感を大事にしてる。
そりゃああんなもん平安人に見せたらもう勃起しっぱなしだよ。

個人的には腕塚が一番オキニです。
犬王の能のコンセプトが伝わってくる超重要用シーンで、能楽=ライブという斬新すぎる再解釈。あそこハチャメチャ盛り上がるよね。

ただ終盤の展開にはみんな結構モヤっとしたと思う。
特に最後の御所で舞うシーンとかは、ご都合展開ラッシュになっちゃった感もあった。
能の方も突如芸風が変わったりとかね。
じゃあ結局アレ何だったのかっつーとさ、アレ、ボヘミアン・ラプソディですよ。
最後のステージ、上裸の犬王、オペラみたいなギタープレイと、もうスタッフがボヘミアン・ラプソディしたくて堪んなかったってのが画面から伝わってきたよ。

その後の犬王が歴史から消えるまでの展開は正に物語のクライマックスとして文句無し。
友のために"犬王"を辞めた犬王と、
友のために"友在"であり続けた友在の対比とかね。
彼らは呪いは祓えたけど、それ以外の要因で破滅してしまう。まさに諸行無常の物語。
無音の中で舞う犬王、悲しかったよね。

で、俺は問題はこの後のシーンだと思う。
現代まで怨霊として残った友在のシーンが蛇足か否か。
個人的な感想とすると『無い方がスッキリ終わる』けど、『有った方が良い』と思う。
最初の方でも言ったけど犬王は呪いの物語なので、あのまま終わると"犬王"は呪いで始まって呪いで終わってしまう。
だから最後にもう一度犬王と友魚が再開しないと救いが無いわけですよ。原作は知らないけど少なくとも映画では犬王と友魚を"悲劇のヒーロー"にしたくなかったんでしょうね。最後は笑って終わろうよっていう。


女王蜂ってアブちゃん以外はCGらしいです

総評として犬王、「楽しい映画」だったと思うでイヌよ。
とにかくライブシーンがもう滅茶苦茶に楽しい。
逆にかぐや姫の物語みたいなのを見たい人は「ちょっと違うなぁ?」つって首傾げて出てくるタイプの映画ね。
アニメのVシネだよもはや。

あと作画が超ヤバイので和風アニメが見たいやつは必見。もうね、見た事ない表現がワンサカ出ます。
で、この作画とライブ感を引き出す音響を最大限楽しむ方法は1つしかない。
映画館に行け。
俺はシアター信者じゃないけど、映画館じゃないと得られない体験ってのは有るので。
是非犬王のライブは劇場で見てほしいな。


※追記

アマプラに来たので再度見てみた感想を書いておきます。
俺は犬王を呪いの物語と言ったな。アレは嘘だ。
嘘っていうか半分嘘っていうかさ。
犬王は『異能者』で、友有は『異端者』なんですよ。
そして犬王にとってこの物語は冒険譚で、
友有にとっては復讐譚なんです。
だから友有だけが亡霊として現代まで彷徨い続けている。
犬王は書いて字の如く『異形たる能面の者』であり、生来犬王は誰からも認められる訳がない者である。だから彼にとっては友魚と出会うことで始まるこの物語は奇跡みたいなもので、つまらない人生の一瞬を彩った冒険譚なのだ。
一方で友魚は友有になった頃から明確に自身の異端を自覚しているように思う。
彼は犬王に呪いをかけた者も、彼の才能を認めない世界も憎くくて仕方が無い。だから呪いが解けた後も政府に逆らい首切り場で処刑されている。犬王の父は人知れず死んだが、彼の世界への復讐はまだ終わっていない。そりゃあ亡霊にもなるだろう。


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