2017/06/03

https://arstechnica.com/features/2017/05/emergent-gravity-and-dark-matter-explained-by-excited-universe/ に何て書いてあるのか知りたくてメモしてみました【書かぬとわからぬおれカネゴン】

単なる自分用のメモなので、合ってるか間違ってるかとか責任は負いません(たぶんそのうち消します)

ダークマター仮説を棄却するのは大いなる試練となるかもしれない。理論の背景について当事者にインタビューした。
> CHRIS LEE - 5/22/2017, 8:30 PM
> 宇宙とは奇妙な場所である。私たちがふだん目にする普通の物質以外に、見ることのできない物質が大量にあるというのだ。悪名高い「ダークマター(暗黒物質)」である。さらにやっかいなことに、宇宙は目に見えないダークエネルギーに満たされているというのだ。ダークエネルギーは宇宙の膨張を加速しているという。これらすべてが、私たちの理解を超えた何かがあるということを示している。現時点では、量子力学で扱われていない何らかの粒子がダークマターを生み出しているのではないかと考えてしまいがちだ。ダークエネルギーはというと、重力との関連の方が深そうだ。
> しかし、両者に関連があるかもしれないのだ。アムステルダム大学のErik Verlindeによると、ダークマターは存在しない可能性があるという。Verlindeの研究によって、ダークエネルギーで満たされた宇宙(宇宙定数は正)があるとすると、重力は必ずしも一般相対性理論のとおりにはならない。Verlindeによる概算では、現時点でダークマターが原因と考えられている力が、一般相対論とVerlindeの研究から導き出せるかもしれない。
> ダークマターの否定は非常に大胆な主張であり、Verlindeも過去の発表で大きな注目を集めた。しかしそんなことが本当にありうるのだろうか。今回はダークエネルギーの第一人者からより優れたアイデアについて話をしてみた。

> 理論vs証拠

ダークエネルギーやダークマターのような「何か」が不可欠であるということについては、強力な証拠がある。銀河の観測可能な物質について、ニュートンの重力の法則(この力は小さすぎるので一般相対論を必要としない)によれば、恒星の移動速度は銀河の中心から遠ざかるほど遅くなると予言している。しかし実際には、恒星の移動速度の低下は銀河の中心から遠くてもある値にとどまり、むしろ恒星が銀河の端にあっても移動速度は一定に近い。これは、観測にかからない何らかの物質が他にも大量にあると考えることで説明がつく。
> そのことだけを考えれば不合理に思えるかもしれない。しかし宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を説明するためにも、それとちょうど同じ量のダークマターが必要なのだ。CMBは長年に渡ってきわめて高い精度で測定が続けられていて、宇宙モデルは驚異的な高精度でこの測定結果と一致している。ただしスペクトラムのピークに1つだけ一致しない部分があり、つじつまを合わせるにはダークマターを加えなければならないのだ。通常の物質とダークマターの比率は、CMBでも平均的な銀河でも同じなので、ダークマターは粒子であり、重力の法則を改変しないという見方を裏付けているように思われる。
しかしどうやら、現在の重力理論はあるレベルにおいて間違っているはずなのだ。一般相対論からは無限大が生み出される。ブラックホールの中心では空間の曲率は無限大になるので、重力も無限大になることが暗に示される。これは不愉快だ。無限大があると破綻が生じるからだ。
しかも、重力が理論通りにならないのはブラックホールの中心だけではない。既に述べたように、宇宙の膨張は一定ではなく、加速している。私たちはこれをダークエネルギーが原因と考えている。加速を引き起こすダークエネルギーの力は重力に似ており、一般相対論との統合も難しくない。しかしその力の起源はまったく不明であり、物理学においてこのような説明のつかない力は許容できない。
ダークマターを持ち出せば、銀河の恒星の回転速度の変化についても、CMBについても説明がつく。ダークエネルギーを持ち出せば、宇宙の膨張についても説明がつく。宇宙は実際にそのようになっているのかもしれないが、私たちの知っている通常の物質は全宇宙のわずか4%しかないのだ。
ダークマターとダークエネルギーなしでは、この巨大な空白は埋められなかった。宇宙についてはそれで一般的に理解できるとしても、それだからこそデータが今後も裏付けになるかどうかについて疑問を抱く物理学者もいるのだ。Verlindeはまぎれもなくその1人である。Verlindeいわく「ダークマターの探索は、ぜひ今後も続けていただきたいですね」「私は絶対に見つかるはずがないと思っていますし、皆さんの努力が私の説を裏付けてくれますから」「そしてどうしても見つからなかったら、そのときこそ他の何かがあるということを考え始めてくれてもよいのではないでしょうか」

> Verlideの説が正しければ、ダークマターは実際にはダークエネルギーかもしれない。Hossenfelderが正しければ、ダークエネルギーはVerlindeの説から自然に導き出せる。では、Verlindeは重力にどう挑んでいるのか。そして他の理論物理学者はそれがどれだけ風変わりなものだと考えているのだろうか
> Verlindeのアプローチが他の物理学者と異なるのは、Verlindeが「空間」を研究している点だ。宇宙は膨張しており、膨張は加速している。これはド・ジッター宇宙と呼ばれ、宇宙定数が正なので膨張は加速される。しかし数学的には、膨張が減速する非ド・ジッター宇宙(宇宙定数は負)も容易に導き出せる。
> 宇宙はそういうものだとして、宇宙が振る舞うに任せればよいではないか。そう考えたくなる理由はいくらでもある。宇宙は一種の「地平面」に囲まれており、地平面の内側にある空間と、空間の表面積には密接な関連がある。これは非ド・ジッター宇宙/共形場理論(AdS/CFT)対応と呼ばれるもので、体積内の重力理論が境界上で量子力学と対応付けられることを指し、体積中の重力方程式を解くと、エントロピーや温度といった量子の属性を得ることができるのだ。この計算は、地平面上で解かなければならない量子力学よりも一般に簡単になる。
> これは実に見事なトリックであり、Verlindeはここから、他の地平面について調べることを思いついた。ブラックホールにはこの点でいくつかの類似点がある。ブラックホールの事象の地平面で測定するエントロピー(エネルギーを変えずに系が取りうる状態の数)は地名面の内側の重力方程式から導き出されるのだ。さらにありがたいことに、非ド・ジッター宇宙と同様、このエントロピーは地平面の面積に比例することが導ける。ブラックホールの地平面はAdS/CFT対応に従わないことは理論物理学者には周知の事実だが、何とこれについてはよく一致するのだ。Verlindeは、両者のこの類似に何かが潜んでいるのではないかと考えた。
> 理論物理学者は、この宇宙で他の地平面も発見している。宇宙論的地平面というものだ。地上から宇宙を観測すると、遠くにある物体は近くの物体より速く遠ざかる。ある距離に達すると速度が光速に達するので、そこより遠くからは何もやってこない。この距離が、宇宙論的地平面だ。Verlindeは、ブラックホールや非ド・ジッター宇宙の場合と同様、例の面積の法則から宇宙論的地平面上のエントロピーを得られるという。
> Verlideは一連の研究において、あるトリックの再発見までやってのけた。つまり、ここまでの理解を逆にたどるのだ。地平面に熱力学(エントロピー)を適用して、地平面内の空間の体積からアインシュタインの重力方程式を導き出すというものである。
> Hossenfelderによれば、重力の発生それ自体は特に有用ではない。「一般相対論は周知の事実だからです」「では、一般相対論を別の理論で方程式にすることの、一体何が重要なのだろうか、という疑問がふたたび湧き起こります」「方程式を別の方法で導出する、そのこと自体は素晴らしいと思います。しかしそれ以上の洞察は得られません」
>確かに熱力学からアインシュタイン方程式を導き出すこと自体は有用ではないが、Verlindeの研究の根拠となっているのは実はそれ以外の部分なのだ。

量子力学の援用

>Verlindeが着想を得たのは「量子情報理論」である。例の面積の法則(エントロピーは地平面の面積に比例する)は、固体物理学にも適用できる。固体物理学において、原子や分子を含む球体のエントロピーは、(少なくとも理論上は)球体の表面積の属性から導出できる。しかしここで1つ注意が必要だ。この方法は、エネルギー状態が最小の物質でないと成り立たないのだ。
>Verlindeが発想を飛躍させて、宇宙定数が負である非ド・ジッター宇宙を、エネルギー状態が最小の宇宙であると見立てたのはある意味自然だったかもしれない。この場合、その表面積から、量子もつれの全エントロピーを導き出すことができる。Verlindeは、宇宙定数が正である私たちの宇宙は一種の励起状態にあると考えられるという。この場合、エントロピーは2つの性質を持つ。1つは地平面の面積から導出できることであり、もう1つは地平面内の体積からも得られることである。
>そこで、例のトリックを使って空間の熱力学からアインシュタイン方程式を導き出してみると、出て来るのはアインシュタイン方程式ではなく、一般相対論に追加項が含まれたものだ。この追加項がダークマターに取って代わるのではないかというのがVerlindeの主張だ。
>HossenfelderはVerlindeの議論を次のように説明している。「エントロピーのこのさらなる性質は、物質が存在することで影響を受ける一種の媒体のように振る舞い、それが物体を押したりするのです」「この性質はダークマターとも似ています。すなわちダークマターは存在せず、時空のようなものが通常の物質を押すことで、ダークマターみたいなものがあるように見える、というわけです」
>Verlindeは、自らの研究結果に問題があることに気づいた。「ひとつどうしてもわからないのが、量子ゆらぎ(quantum fluctuation)です。量子ゆらぎはランダムであり、あらゆる方向に向かいます。それがどうして、一定の方向に揃った力になるのかが謎だったんです。」これを解決するため、Verlindeは再び固体物理学に立ち返り、解決らしきものを得た。ガラスのような物体である。
「ガラスはきわめて短い瞬間においては結晶構造(crystalline)のように振る舞います」「しかし時間のスケールを引き伸ばすと、ガラスは流動します」「さらに奇妙なのは、ガラスを熱すると局所的には液体になるのに、長い時間スケールでは冷たいガラスと同じ流動を示すのです」「私のアイデアはこうです: きわめて短い時間におけるガラスの振る舞いは、局所的な平衡状態においてランダムかつゆらぎます」「しかし、長距離かつ長い時間スケールにおいて、ガラスは大局的な平衡状態にゆっくりと向かって安定するのです」
>Verlindeが自らの理論において、まさにこのことが空間に対して起こると主張しているのだ。長距離かつ安定までの長い時間スケールにおいて、その空間の体積の内側では相関(もつれ)が存在するという。レンジが広い場合の性質は、体積におけるエントロピーの性質なのだ。レンジが狭い場合の性質は、面積の法則の性質なのだ。この2つの間に一般相対論があり、ダークマターのように見える追加項もあるのだ。

重力の導出は修正ニュートン力学(MOND)ではない

>Verlindeの研究から得られる重力は、追加項においてニュートン力学の重力に還元される。いわゆる修正ニュートン力学という言葉を聞いたことのある方もいるかもしれない。しかしVerlindeは、自分の研究はMONDとは違うと力説する。
>MONDを発展させたのは、Milgromという名のイスラエルの物理学者だ。Milgromは銀河の回転曲線の性質がどれも似通っていることに気づいた。遠距離においてはニュートンの法則からの乖離が生じて同様の加速が発生する。Milgromは観測上の回転曲線に合う方程式を導出したが、方程式の追加項の物理的な由来については説明できなかった。MONDは長年サブカル方面で取沙汰されたが、追加項の理由が不明であるために広く受け入れられることはなかった。
>そういう意味で、Verlindeの説はMONDではない。変更部分に対して物理学的な説明がなされているからだ。さらに重要なのは、実験データに恣意的に合わせることができてしまうような自由パラメータがない点だ(説が正しいかどうかは別だが)。
>Verlindeは球状銀河は球体ではなく円盤状であるといったような、普通は使われない仮説を取り入れている。

データはある

>Verlindeの研究の面白さはまさにそこにある。Verlindeはきわめて一般性の高い法則から出発し、仮定を絞り込んで、銀河の回転曲線を算出できる重力理論を導いたのだ。
>残念ながら、実験科学者が調べた限りでははかばかしい成果は得られなかった。近年arXivの論文において、ある科学者集団がVerlindeの理論(自由なパラメータはもちろんない)による予測を従来のMOND理論(こちらには自由なパラメータがある)による予測と比較したところ、MONDの方がVerlindeよりよく一致したというのだ。
>これは仕方がないかもしれない。Verlindeが導いた方程式は多くの仮説を下敷きにしているからだ。「球状銀河は球体ではなく円盤状である」もそのひとつだ。
>同じ科学者チームが、何かの勘違いでVerlindeの理論を太陽系の惑星のある種の歳差運動に適合させようとしていた。VerlindeもHossenfelderも、これが間違いであるということで意見は一致している。Verlindeの最大の仮説は「重力は弱いはずだ」というものである。ただし太陽系やブラックホール近辺ではなく、銀河においてである。「Verlindeによる制約は、率直に言って、平均エネルギー密度がきわめて小さいことを前提にしていますね」「つまり、この方程式は太陽系には適用できません」
>理論が銀河の回転曲線と整合したことについて、多くの科学者が理論を真剣に受け止めて実験を検討し始めている。Verlindeはそのことで気をよくしている。「Arsの記者さんもきっとご存知かと思いますが、私の説に関するほとんどの論文は重力の振る舞いが違う理由の理論的裏付けなんです」「もちろん、私の方程式が精密なデータ並に一般的にどんなものにでも適用可能だとまでは言いませんよ」「検証が行われ、かなり整合していることがわかってきたのですから、いい傾向です」

Verlinde理論の利点

>HossenfelderはVerlindeのアプローチについては積極的な関心をいだいている。残念ながらVerlindeのアプローチは、ほぼすべての理論物理学者が採用している標準的な手法からは外れている。Hossenfelderは、Verlindeの手法と解釈が常識はずれであることから、理論にまだ不整合が潜んでいる可能性があると見込んでいる。HossenfelderはVerlindeの解釈については無視し、標準的な方法で導かれた重要な結果の方に集中した。
>Hossenfelderの方法では、まずラグランジアンを定義する。ラグランジアンは、ここではエネルギーを追跡する関数と考えればよい。ラグランジアンを定義すると、運動量、力、場を導ける。Hossenfelderはさらに数学的により厳密な手法も併用したうえでVerlindeの方程式を導出した。Verlindeは偏微分方程式を用いたが、Hossenfelderは共変微分(covariant derivative)を用いたのだ。
>Hossenfelderの得た方程式は、Verlindeの方程式とは一致しなかった。Hossenfelderは追加の自由パラメータを1つ追加した。「この自由パラメータは単なる定数と考えてもよいでしょう」「しかしこの定数が宇宙全体で不変であるという裏付けはありません」「方程式を銀河回転曲線に適用するなら、追加の自由パラメータとして扱わなければなりません」Hossenfelderはこのことからも、Verlindeの研究が実験データと合わないと結論を出すのはまだ早いと考えている。
>さらに驚いたことに、Hossenfelderは宇宙項らしき項を導出できたのだ。「得た項はまるで宇宙定数のように振る舞います」「ですから、Verlindeが論文で行ったように、宇宙定数を仮定してそこから理論を積み上げたりする必要はないのです」「項はいつでも得られるのですから」非常に面白い見解だ。確かにVerlindeの説は宇宙定数を最初に仮定し、そして重力の振る舞いからダークマターの代替を導くというものだ。Hossenfelderが理論を拡張したことで、よりいっそう根が深い可能性が見えてきた。

発生する問題

>Verlindeはそのために、もう一度非ド・ジッター宇宙に立ち返ることを計画中だ。しかし非ド・ジッター宇宙での計算に励起状態を加えてよいものかどうか、理論物理学者にとってお馴染みの手法を使って再計算してよいものかどうか迷っている。Ads/CFT対応と、ド・ジッター宇宙における自分の理論との関連付けを、もっと精密かつ厳密にしたいとも考えている。そうすることで、他の理論物理学者たちに少しでも取り合ってもらえるかもしれないからだ。
>Verlindeは、銀河回転曲線以外の現象についてもダークマターの方がうまく説明がつくことも承知している。最終的には自分の説が、CMBや銀河集団などについても性質が完全に一致することを示せなければならないということについても。自説からCMBを算出可能かどうかを確認する計画はあるものの、なかなかその時間が取れない。
>最後に残るのは、理論の解釈についての問題だ。Verlindeは、からっぽの空間をあたかも物質であるかのように話す。さらに、圧縮性や弾性といった性質も兼ね備えた物質は理論物理学者にとって馴染みが薄い。筆者が論文を読んだときの印象と、Verlindeとの議論からわかってきたのは、Verlindeの解釈は比喩ではなく、理論物理学者を不愉快にさせるものであるということだ。しかしながらHossenfelderは次のように付け加える「その点は重要ではありません」「ただのコミュニケーション問題ですから」「宇宙物理学者も天文学者も素粒子物理学者も、弾力性を備えた媒体についてまったく知識を持ち合わせていないんですから」「私もそこを調べるところからはじめたのですが、それなりの成果がありました」「結局、弾性については無視できることがわかったときはとてもうれしく思いましたね」
>Hossenfelderは、Verlindeの理論が今後さらに注目を集めると確信を深めている。2人の最近の論文について、論文のモデルにデータを適合させる試みが行われている。これらはすべて、強い関心を呼び寄せることだろう。
> Verlindeの理論を根拠がないと決めつけるべきではない。理論を支える重力や量子力学についてのアイデアは、何もないところからひねり出したものではないのだ。Verlindeの理論の多くは、一見かけはなれたアイデアを結びつけることで成り立っており、私たちはまだ結果を見届けていない。現時点では、エントロピーが生み出す重力がダークマターを説明できるかどうかについて、Verlindeはおろか、他の誰も成功していない。成功の鍵は2つある。Verlindeの方程式を既存のアイデアに注意深くつなげること。そして方程式を現実に近いシナリオで解き、多くの観測データと比較できるようにすることだ。
結果がどうであれ、新しいアイデアは今も昔も科学という水車を回す重要な燃料であることは確かだ。Verlindeは間違いなく科学に貢献している。あなたがそれをどう思おうと。

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