踏まれても 踏まれても・・・

酷寒の風雪を絶え 土中に根を張り そっと春を告げるかのように
足元で咲くタンポポに 幾度 心を癒されたことだろう
幼い頃 学校からの帰り道 どうにも 家に帰りたくなくて
わざと 遠回りしながら帰る路の端に黄色の小さな花を見つけ
駆け寄ってしゃがみこみ なぜかその花に見とれていたっけか・・・

びゅうびゅうと吹き飛ばされそうになる冷たい風にも負けず むしろ
どっしりと咲こうとするタンポポに 幼い私は 何故か 涙がでて
止まらなかった

家に帰れば いつも哀しげな母と お酒に酔った父 二人の間で泣いている
弟・・・
そうした家の中は 外の風以上に冷たく 私はどうにも 家に帰りたくない
そんな日々だった
そんな寂しい幼き記憶と共に鮮やかな黄色の小さな花が いつも心の片隅に
そっと咲いている

歳月を重ね もういい加減いい大人となった私でも 様々な哀しみや苦しみに涙を落とすことも在る
特に こんな寒い日は 心は軋み折れそうになるのだ

まさにそんな今
電車を降りて家路へと続くいつもの道端で あの鮮やかな黄色の花が健気に
咲いている・・・
往来の人々に 踏まれても踏まれても その黄色の花は むしろ もっと
踏んづけてもいいよ!と言わんばかりに その足元には四方八方に葉を延ばし
どっしりと咲いているではないか
「四方八方に葉を延ばし 根は地中深く張り巡らせる」
この力強くも 鮮やかな生き方を はて 私は しているだろうか・・・

小さな太陽のように 笑うように咲く花・・・「タンポポ」
街の花屋の店先に咲く花たちのような華麗な花ではないけれど 
いつも力強く私にエールを届けてくれる 愛おしい花だ

踏まれても踏まれても・・・私もどっしり構えて生きてみよう

ほら 春は もうすぐ其処に!と 微笑みながら 教えてくれている
 

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