見出し画像

【Switch版Cresteaju大ネタバレ】繰り返される夢物語への終止符と、時の牢獄からの解放について

Switch版Cresteajuは、2周目以降のプレイの最序盤に特殊なエリア(再プレイ特典アイテムをもらう空間)が出現します。そこで投げかけられる台詞の意味がずっと消化しきれずにいたのですが、少し前に自分の中でどうにか納得できる答えが出たので備忘録代わりに書いてみました。
今回の文書は考察や分析要素はほぼなく、完全に筆者個人の妄想100%の内容となっています。また、原作者Shouさんに確認を取ったものでもありませんのでご了承願います。
本編エンディングと2周目要素のネタバレを大量に含んでいますので、閲覧の際はその旨ご了承願います。
(※文書の出だしからいきなりエンディング、ならびに2周目要素の大きなネタバレが載っているので、未クリアの方は速やかに引き返されることを推奨します)








【永劫に繰り返され続ける夢、そして時の牢獄と化した世界】

Cresteajuをクリアしていれば、本編黒幕であるクレイシヴの最終目的「イリーディアに眠るアージェを目覚めさせて時を逆流させ、今までの歴史を無にかえす」については周知のことでしょうけど、恐らく自分を含め、こう思ったプレイヤーは割と多いのではと思います。
――フィルガルト大陸は過去に何回かアージェの力で時を戻されていて、今自分たちがともに歩んでいるルナンの旅路も、既に何回も繰り返されてやり直してきた旅なのではないか、と。
オリジナル版の時にはそれ以上深堀りの余地がなかったので、自分の勝手な妄想に留まっていたのですが、Switch版2周目要素によって上記の妄想がかなり現実味を帯びてきたと個人的には思っています。

2周目オープニング終了後、ルナンが夢で見た森の中に「時の祭壇」という空間が現れます。
そして、その空間の中でアージェと同じ姿をした何者かから「ここに映る世界は全てが夢、そして未来を過去にかえした現実」と告げられます。
メタ的に言えば、既に一度未来(エンディング)を見たにも関わらず、再び過去(オープニング)に帰ってきたことをアージェの時の逆流に例えたことを示すのは明白です。
ただ、作中のルナンたちの視点で考えると、この言葉はいわば「アージェによって未来を過去にかえされた」ことがほぼ確定したも同然なわけで、すなわちルナンたちの旅も過去に何回も繰り返されていた可能性が極めて濃厚だということです。
この台詞を最初に見た時、背筋に怖気が走ったのを今でも覚えています……情けないですが、その時はそれ以上考えるのを頭が拒否して、今までずっと心の中で消化不良の状態となっていました。


ただ、冷静に考えるとCresteajuの世界は、ディーンが最初にアージェプロジェクトを立ち上げた時点で、「世界の歴史の全てはいずれ必ずアージェによって時を戻されて無にかえり、その度に同じ歴史を再び繰り返すことを強いられる」という、世界全土と千年以上に渡る人々の営みを巻き込んだ前代未聞級の規模の呪いを受けたようなものです。例えるならば、『時の守護者』が築き上げた広大かつ永劫の時の牢獄ともいうものでしょうか。
時を戻されて無にかえされた歴史は、現実の出来事ではなくなった=『夢』と化したと解釈できます。
そう考えると、時の祭壇の主が言った台詞も、「(ルナンがこれから歩む歴史は)未来を過去にかえした現実」であるとともに「(いずれ再びアージェによって時が逆流して)ここに映る世界は全てが夢(と化すだろう)」という意味になるのではないかと思っています。
この台詞の意味が上記のようだと解釈した場合、時の祭壇の主はアージェの姿こそ模していますが、実際は幾度となく歴史を無にかえされて何度もやり直しを強いられてきた世界自身が、この無限の時の牢獄から脱したいと望む姿だったのではないかと個人的には思いました。
それならば、最後に言われる言葉「夢から醒めるのだ」という言葉も、「アージェによって繰り返される夢から脱して、確かな現実を取り戻してほしい」というルナンへの切なる願いだとも解釈できます。


本編中ではクレイシヴがアージェ覚醒に向けて動いており、彼の確固たる意志がルナンの旅路に大きな影響を与えていたのは確かです。(クレイシヴのアージェ覚醒に至るまでの詳しい経緯まで絡めると冗長になるので、今回は割愛します)
ただ、もし仮にクレイシヴがアージェ覚醒に至れず、作中の時代ではアージェによる時の逆流が起きなかったとしても、アージェが存在する限りは後世に下記のような要因でアージェ覚醒に至り、結果的に時が逆流して全てが無にかえることが充分に考えられます。

①後世の人が何らかの形でイリーディアを発見し、最奥のアージェを興味本位で、あるいは破壊しようと試みた衝撃で誤って覚醒させてしまう
②イリーディアが発見されなかったとしても、保存装置の故障、もしくは経年劣化により眠らせる力が弱まって覚醒してしまう

よって、もしも何回目かの繰り返しの中で
「伝説の盗賊が台頭しなかった」→
「ダイ襲撃が起きずアズグレイが普通の若者に留まっていた(=エターナルが興らず、間接的にシンディも父親と離れずに済む)」→
「サンピアス襲撃も起きず、クレイシヴが妻子と幸せに暮らし続けた」→
「ディザナック兄妹の両親も健在(=ディザが復讐の旅に出ない)」
という、本編中の悲劇の一部が連鎖的に回避され、その時代にクレイシヴによるアージェ覚醒への動きが起こる見通しがなかった世界があったとしても、後世の時代に上記のような要因でアージェが覚醒したら、全てご破算になってしまうわけです。


【時の牢獄を破壊する、たったひとつの可能性への道】

ならば、そもそも覚醒前にアージェを破壊してしまえばよいのではと思う人は多いと思います。
しかし、アージェは戦争の最終兵器であり、通常の火力ではまず破壊できないような強度をそなえて作られたのは確実です。神聖帝国滅亡後の四国もそれが分かっており、自分たちの火力ではアージェを破壊することなどできず、逆に衝撃で覚醒させて世界を無に帰してしまう危険の方が高いと判断したが故に、イリーディアごと封印する方法しか取れなかったわけですし。

クレイシヴ撃破後のルナンは、体を保持するために必要な力までも全て己の火力に転換させたうえで、通常ではシルバーリング制御下でしか発揮できないクレスティーユの力(およびルナンとして旅の間に修得した魔法の力)を全て注ぎ込んでようやくアージェを破壊できましたが、これだけの力は現実から離れた世界なればこそ発揮できた唯一無二の力であり、現実世界でこれだけの力を再現したらアージェどころか世界自体が本気で滅びかねません。
クレスティーユの力の凄まじさの一端を示すのが大クレーターですが、あれでもクレスティーユにとっては少し本気を出した程度のレベルであり、全力とは言い難いものです。もし当時のクレスティーユが全力を発揮していたなら、フィルガルト大陸そのものが瞬時に消滅してもおかしくないでしょう。しかし、アージェを破壊するにはそれだけの力でなければ太刀打ちできなかったわけです。
大クレーターの威力だけでクレスティーユの底力に怯え、彼女を封印した当時の神聖帝国がそれ以上の火力の兵器を作り上げた可能性はありませんし、後世の技術でも無理でしょう。
また、生命兵器でない普通の人間では到底クレスティーユに匹敵する力を持てる可能性はありません。ルナンでさえも、通常ではクレスティーユの本気の力に匹敵するほどの魔法は使えないので、彼女が現実世界でアージェを破壊できる確率は実質的にゼロです。
つまり、覚醒前にアージェを倒すことは不可能と断言してよいでしょう。


アージェは覚醒と同時に時の流れを一気に鈍化させ、その際に殆ど全てのものが時の流れに溶け込んで自我を失い、実質的に消滅してしまうため、一度覚醒したらもはや誰にも止めることはできません。(ディザは常人に比べると極めて強靭な精神力を持ち合わせていたためか、時の流れの中でも自我だけは辛うじて保持していたものの、肉体的には戦闘に臨める状態でなかったことは明白ですので、普通の人間では絶対太刀打ちできません)
ルナンのみ例外的に、生命兵器として与えられた強靭な精神体とそれに適応する肉体をそなえていたおかげで、時の流れに溶け込まずに自身を保っていられたため、アージェと戦うことができるのは過去にも未来にもルナンただ一人しかいないことになります。
(クレイシヴは力を封印したことで生命兵器としての力自体は弱まった可能性があることと、肉体的には老齢であったために時の流れに抗えなかったと考えられます。また、そもそも彼自身が自分を含めた全てを無にかえすことを望んでいたわけですから、敢えて抵抗せずに自分から時の流れに身を任せて溶けたともいえます)
つまり、逆を言えばルナンがいない時代にアージェが覚醒したり、ルナンがクレスティーユの力を発揮できる状態でない段階でアージェが覚醒したら、その時点で世界は無に帰してまた歴史のやり直しを強いられることが確定するわけです。
恐らく、今まで何度かアージェの力で時が逆流して無に帰された世界線では「ルナンがいない時代にアージェが覚醒した」「ルナンがクレスティーユの記憶を取り戻しておらず、力を使えなかった」「ルナンの総合的な戦闘力がアージェを相手取れるほど強くなかった」「そもそもルナンがアージェ覚醒の場面に居合わせなかった」などでアージェを止められる者が誰一人おらず、その度に為すすべもなく世界は夢と化してしまったのでしょう。


Cresteajuの作品を通じてプレイヤーが見てきた本編中でのルナンの旅路は、対アージェに焦点を絞れば下記の2点が奇跡的に揃ったことで、可能性は極めて僅かながらアージェを完全に滅して、世界を時の牢獄から解放できる見込みがある状態でその瞬間を迎えました。

①アージェは覚醒したものの、その時には唯一アージェの時の逆流に抵抗できるルナンが傍におり、現世に影響をもたらさない非現実空間ですぐにアージェと対峙できる状態であった
②ルナンはクレスティーユの記憶を完全に取り戻しており、かつ旅を通じて戦闘面でも精神的にも強くなった状態であったため、非現実空間であればこそ発揮できる全ての力を駆使してアージェを滅することができる戦闘力をそなえていた

この2点で挙げられた条件がどれ一つとして欠けていても、アージェを完全に滅することは不可能です。
ルナンがここに至るまでには道中での選択肢が多数あり、その行動がひとつ違っていただけでも運命の歯車はどんどんズレていき、ルナンが全ての条件をそなえたうえでアージェに辿り着くのは無理だったと思います。

例えば、ルナンはアネートに行くために敢えてウェスカ経由で遠回りをしています。
彼女は「エターナル直轄地のフェイマルを通るのが嫌だった」という理由でウェスカ経由ルートを選びましたが、もし少しでも早く到着することを優先してフェイマル経由ルートを選択した「もしも」の世界があったとしたら、ルナンはかなり高い確率でアネートに着く前にエターナルに捕まって奴隷送りにされていたはずです。そうなると奴隷として使い潰されるか、逆らって見せしめに処分されるか、あるいはクレイシヴに助け出されるもオイルレイク蒸発のために利用されるだけに終わってしまい、どちらにしてもアージェ覚醒を止めることはできずに夢と化した世界だったはずです。

これと同じように、アージェ覚醒で無と化した歴史の中には「ウェスカ北の森でディザに出会わなかった世界」「アネートでサヴィアーと知り合わなかった世界」「ドーグリでライゼル師匠を無視した世界」「ドーグリでクレイシヴの行方を掴んだディザを引き留めずに別れてしまった世界」など、ルナンの旅路がやがて行き詰まってアージェ撃破まで辿り着けないことが確定した世界が多数あった可能性が高いと個人的には考えています。(あと、メタ的に見ればゲーム中で全滅し、ルナンが旅を続けられなくなった世界もこれに含まれると思います)
もちろん、過去の世界は時が逆流して無にかえされた時点で全てただの夢幻と化し、誰の記憶にも残ることはありませんが、そうやって何十回、あるいは何百回も世界を巻き戻してそれと知らずに人生をやり直し続けることで、ルナンは無意識のうちに自分が選ぶべき選択肢を自らの意志として選び取れるようになり、最終的にアージェ撃破に至る道に辿り着けたのではないかと推測することもできると思います。


ルナンが奇跡的な選択の末にアージェとの相対を果たし、ありったけの力と引き換えに撃破したことで、世界はようやく時の牢獄から解放され、本来あるべき「やり直しのない世界」が現実のものとなりました。
ルナンはアージェとほぼ相打ちに近い形で肉体を失ってしまったことで一時は世界から消え失せましたが、旅で築き上げた絆と願いの力で帰還を果たしたことはほぼ確実なので、二度と消えることのない確かな現実を皆と共に精一杯生き抜いてもらいたいと願うばかりです。