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【PC版Cresteaju大ネタバレ】もうひとりの「戦う者」が歩んだ軌跡について

Cresteajuの世界の物語を語るうえで欠かせないのが、本編ラスボスが自身の目的達成のために練ってきた数々の計略です。ルナンたちはいわば、彼の描いてきた筋書きに引き寄せられる形で動いていたことになります。
そのため、本編ラスボスの目的とそれを果たすための計略について、一度整理してみたいと思います。
本稿では原則として、Switch版の追加シナリオに係る言及は可能な限り避けて、PCオリジナル版の内容のみを中心に記載しています。そのため、Switch版未プレイでも支障のない内容になっていると思われます。
(ただし、Switch版で新たに判明した「シルバーリングの効力時間の短さ」と「10年前時点でのラスボスが持つ前提知識」についてはどうしても必要な情報であったため、含めております)
PCオリジナル版のクリアが前提であり、当然ながらエンディングまでの完全なネタバレを含みます。
また、本稿の記載内容については原作者Shouさんに確認したものではありませんので、その旨ご了承願います。

なお、Switch版の追加シナリオではさらに重要な事実が明かされており、別の側面から本編ラスボスの目的と計略を考察することができます。
別の記事ではSwitch版追加シナリオの内容を踏まえた、別側面からのアプローチを含んでおります。そちらの記事はSwitch版のクリア後シナリオの完全なネタバレなので、何卒ご了承願います。(本編ラスボスに係る内容は本ページとほぼ同一内容です)





【前提の整理:クレイシヴの目的と計略、そしてシルバーリングの特性について】

まずは、本編ラスボスたるクレイシヴの最終目的、およびその達成のために必要な計略を整理します。

<最終目的>
イリーディアに眠るアージェを覚醒させて世界を無に帰す。

<そのために必要な手段①>
イリーディアに行くのに邪魔なオイルレイクを蒸発させるため、クレスティーユを操って力を行使させる必要がある。
(※補足:個人的な推測ですが、もしクレスティーユが途中で命を落とした場合、クレイシヴは恐らく「オイルレイクを強制的に燃やす」「中央山脈外からのワープ航法の確立を試みる」など、別の手段でイリーディア行きを試みたと思います。ただ、クレスティーユがいる限りはこの方法が一番確実にイリーディアに行けるため、この方法の実現に向けて暗躍したのでしょう)

<①の達成に必要な手段②>
クレスティーユを支配下に置くためのシルバーリングを作るとともに、ルナンがクレスティーユの力を万全に振るえるように記憶を取り戻させる。

<②の達成に必要な手段③>
頃合いを見てエターナルを乗っ取り、シルバーリング生成に必要な精神体の生贄を大量に確保するとともに、人的資源を記憶の遺跡発掘に差し向けてメモリーオーブの在処をルナンに示唆し、記憶を取り戻しに来るように仕向ける。


この目的達成の手段において、クレイシヴの行動の核と言えるのがシルバーリングの生成であるため、続いてはシルバーリングの特性を振り返ります。

シルバーリングは、生命兵器CR-Eことクレスティーユを操り、操作する者の意図する時にだけ生命兵器の力を発出できるようにするための機構であり、「自分の意志で力を操れた」ことにより失敗作とみなされた生命兵器CR-A(クレイシヴ)の反省を生かして考案されたと考えられます。
また、作中でクレイシヴが作り上げたシルバーリングは「精錬された100%の純銀に大量の精神体を取り込む」ことで完成したものです。
クレイシヴはシルバーリングのことは当然知っていたものの、立場上シルバーリングの生成方法を知ることはできなかったはずなので、上記のシルバーリング生成方法は数少ない帝国時代の文献やクレイシヴ自身の研究をもとに、自力で編み出したものである可能性が濃厚です。

このうち、大量の精神体は降神祭で集まった大勢のエターナルから強制的に精神体を抜き出して賄われましたが、それに伴って下記の2点の疑問が生じえます。

①なぜ、あの場に居合わせたディザたちは精神体を抜き取られずに済んだのか
②なぜ、精神体供給のためにわざわざエターナル大量殺戮という手間のかかる手段を取ったのか

①については推測ですが、精神体を抜き取る対象のエターナルに事前に投薬、あるいは集団催眠のような措置を施して精神体を抜き取りやすい状態にしていたため、そのような事前措置を施されていなかったディザたちは無事だったと考えられます。
そもそも精神体の大量抜き取りは千年前の神聖帝国時代でも行われていたはずなので、神聖帝国の技術で安定して行えるものである必要があります。集団催眠については、神聖帝国はメモリーオーブの存在が象徴するように人の記憶、ひいては人心に干渉する技術を確立しています。
クレイシヴも保存装置でルナンの失われた記憶の一部を解放したため、神聖帝国時代に記憶干渉技術を多少なりと会得していたことはほぼ確実であり、またアズグレイ殺害後にあっさりと多くのエターナルの支持取り付けに成功していることを鑑みるに、自己の目的意識が希薄な人間の心を引き付けて虜にする暗示などを施すことも可能であった可能性があります。
(ファスラクリアをその暗示媒体として使った可能性もあります。神剣の模造品とはいえ、神聖帝国時代の皇帝が使っていた剣であるため、何らかの特殊な性質を有していてもおかしくありませんし)

②についてですが、必要となる材料が単に「大量の精神体」だけならば、記憶の遺跡やバイツ近郊の神の山に行けば精神体は大量にいますので、そこの精神体を利用すれば事足りたはずです。恐らくクレイシヴもシルバースターで研究していた際には、神の山の精神体を利用することも考えたと思われます。クレイシヴ自身も生命兵器ですから、精神体に取りつかれて命を落とす危険性はありませんし。
しかし実際にはそれをせず、生きている大勢のエターナルから強制的に精神体を抜き出し、純銀に宿らせてシルバーリングを生み出しているため、シルバーリングを一から作り出す場合は普通の精神体では無理だということになります。
そこから推察するに、恐らく一からシルバーリングを作り出す(ただの純銀に精神体を宿らせる)には、生きている人間の身体から抜き取って間もない精神体を、一度に大量に封入しなければならなかったと思われます。
生命兵器(少なくともCR-E)は精神体に大量のエネルギーを注ぎ込まれた人間であるため、シルバーリングの核となる精神体も同じ人間の物でなければ、精神へのリンクを成す力が得られなかったと推測されます。(もし小動物の精神体などでも良ければ、大勢の人間を集めるよりも大量の小動物などを集めて精神体を抜き取った方がまだ手間はかかりませんし)
よって、クレイシヴはシルバーリング作成のために「自分の意のままに動く大量の人間」を「純銀製の輪が完成次第、いつでも一か所に集めて精神体を抜き取れる」状況を作っておく必要があり、いずれエターナルを乗っ取ることをかなり前から計画していたのだと思います。


しかし、Switch版で判明しましたが、クレイシヴが一から作ったこのシルバーリングは「内部の精神体が消耗品であり、比較的短期間(恐らく1日程度)しか効力がない」という致命的な欠点がありました。
クレイシヴもその欠点は承知していましたが、クレイシヴにとってはルナン(クレスティーユ)にオイルレイクの油を吹き飛ばしてもらえればそれで充分なため、シルバーリングの効力が短期間でも特に問題はなかったのでしょう。
(※オイルレイク蒸発後もルナンを洗脳したままイリーディアに降りていこうとする描写がありましたが、あれば恐らく自分の護衛兼、後を追おうとするディザたちへの牽制も兼ねて、洗脳状態が続いている間は連れて行こうとしただけだと思います。なので、ユミに腕を飛ばされてシルバーリングを失った後はルナンを置いてイリーディアに下る方を優先したわけです)
ただし、効力時間が短いということはすなわち、ルナンが近くにいる時にシルバーリングを完成させなければ、ルナンを操ってオイルレイクを蒸発させるという目的を果たせないことになるため、クレイシヴはシルバーリングの生成を進めつつ、ルナンがシルバーリング完成時に自分の近くにいるという状況を作り上げる必要がありました。

クレイシヴの行動を整理するためには、このシルバーリングの特性が大きく関わっているので、この点を踏まえて、改めてクレイシヴの行動について整理したいと思います。


【本編開始前までのクレイシヴの動向について】

クレイシヴがシルバーリングを求めだす直接的なきっかけになったのは、10年前の伝説の盗賊によるサンピアス襲撃で妻を亡くしたことですが、その前にまずクレイシヴが千年の眠りから目覚めた直後、どの辺りまで神聖帝国の状況を調べたかを考えてみたいと思います。

クレイシヴは自分の目覚めた世界が千年後のフィルガルト大陸であり、既に神聖帝国が滅びていることを知った後は「自分たちが封印されてからどれくらい後にフィルガルトが滅びたのか、どのように滅ぼされたのか」「かつての敵国であった四国はどのようになったのか」「イリーディアや他のフィルガルトの都市や各地の実験場はどうなったのか」などを一通り調べたと思われます。
ただ、フィルガルトの歴史は四国の焚書でかなりの部分が逸失しており、当時は古代図書館などの限られた施設で調べるのが関の山であったと思われるので、当時のクレイシヴが知りえたのは下記の内容くらいだと思われます。
もっとも、当時のクレイシヴは新たな人生を生き直すことを決めていたと思われるので、ある程度必要な内容を知った後は、それ以上の情報は差し当たり不要だと割り切っていたと思いますが。

○自分たちが封印されてからそう経たないうちに神聖帝国は滅び、『神聖なる裁き』という名目で四国による歴史抹消が目論まれた
○イリーディアは四国によりオイルレイクの下に沈められた
○大多数の神聖帝国時代の情報は『神聖なる裁き』の影響で失われたが、神聖帝国滅亡後に設けられた大陸教会の古代神話により、ディーン・クレスティーユ・アージェの名と、『神の両手をちぎり取って得た力』によって滅亡したことが辛うじて民間に伝承されている
(この古代神話が四国の『神聖なる裁き』へのせめてもの対抗措置であり、真相を神話風に婉曲して言い換えた表現に留まっていることは娘のユミにも話していたと思われます。ユミがフィルガルト研究家の立場にありながら大陸教会の古代神話を軽視していたのも、大陸教会の古代神話が婉曲表現にすぎないことを知っており、深堀りする意義を見出せなかったからだと思われます)


これを踏まえて、10年前のサンピアス滅亡以降のクレイシヴの動向を考察してみますが、まず前提条件として、クレイシヴは10年前の時点ではアージェが既に完成していることを知りません。(Switch版追加イベントで判明)
サンピアスを滅ぼした時点では全てに絶望していて何も考えられる状態ではなかったと思われますが、その後は「自分がフィルガルトを見捨ててクレスティーユとともに封印装置に入らなければ、フィルガルトは滅ばず、妻が死ぬ今の歴史が刻まれることもなかった」という後悔に苛まれることになり、それが高じて「アージェがあれば、歴史を過去に帰してやり直すことができる」という目標を見出すことになります。
この時点ではアージェが既に誕生済みと知らないので、恐らく最初はアージェを自分で作り出すことを目的として、フィルガルト期の遺構などで手がかりを探していたと思われます。
その過程でアージェが既に生成済みで、オイルレイクに沈んだイリーディアの皇宮奥に封じられていることを知るも、オイルレイクを一気に蒸発させるにはクレスティーユを操って力を解放させる必要があり、それにはシルバーリングの生成が欠かせないことが判明します。
(余談ですが、ゼビアマイン炭鉱遺跡にファスラクリアが安置されていることや、土砂に埋もれたジーダイの遺跡にメモリーオーブがあることは、この時の研究過程の副産物として知った可能性が高いと思います)
ただし前述のとおり、シルバーリングの生成方法はトップクラスの機密事項であり、クレイシヴは当然知るはずがありません。(万一シルバーリングがクレイシヴの手に渡ったら、クレスティーユとともにイリーディアを脱走する危険が充分考えられますし)
神聖帝国時代の情報が極めて限られている中でここまで辿り着くにはそれなりの年数を要したと考えられるので、個人的にはサンピアス滅亡からアージェの行方を知るまで4年くらい経過したと思います。

アージェの行方を知ってから本編開始時点までは6年くらいあると考えられますが、この期間はシルバーリングの生成方法の調査と、それに紐づく金属の精錬および精神体の研究に終始していたと思われます。(その過程でサヴィアーが弟子入り。また、精神体について研究していたディザナック兄妹の両親を殺害して研究成果を奪ったのがゲーム開始の1年前なので、1年前の段階ではまだ精神体についての研究が不充分だった可能性もあります)
そして、最終的に純度100%の純銀と、生身の肉体から取り出した大量の精神体がシルバーリング生成に必要であると確定した時点で、クレイシヴは大量の精神体の生贄確保のために、多数の信者を抱えるエターナルをいずれ乗っ取ることを計画したと考えられます。

ただ、クレイシヴは自分が作るシルバーリングの持続時間が前述のとおり短いことを予測しており、肝心のクレスティーユが傍にいない状態でシルバーリングを作っても持続時間の関係で全く意味をなさないことも知っていたと思います。そのため、シルバーリングの生成方法が判明した後はクレスティーユの消息を掴み、彼女の動向を常に把握しておくべきと思っていたはずです。
自分の目的のためにオイルレイク蒸発=クレスティーユの力が必要だと察した段階で、一度は幻惑の樹海の保存装置にいるはずの彼女の様子を見に行ったと思われますが、既にこの時クレスティーユは覚醒済みでガゼールの養女になっており、クレイシヴは消息を掴めなくなっていたと思われます。
(クレスフィールドは地理的に見ても一番怪しいと思うのですが、クレイシヴは恐らく保存装置に彼女がいなかった時点で「シルバーリングの生成方法を割り出すのが先だ、クレスティーユの行方を捜すのはシルバーリングの生成方法が確定してからでも遅くない」と考えた可能性が高いと思います。広いフィルガルト大陸で特定の人を探し出すのに時間を費やすことを考えると、シルバーリングの生成方法割り出しに時間をかけるほうがまだ進展がありますから)


【本編開始(クレスフィールド陥落)以降のクレイシヴの動向について】

クレイシヴが具体的に自分の目的に向けて動き出したのが、ウェスカ⇔セーネの橋でルナンと出会った直後からなので、シルバーリングの生成方法自体は恐らくゲーム開始直前には完全に割り出しており、後はクレスティーユが現在どこにいるかを探し当てられれば、いつでも計画(エターナルを乗っ取り、その立場を利用して純銀と大量の精神体の生贄を確保)の始動に向けて動ける状態だったと思われます。
橋でクレスティーユの消息を掴んだクレイシヴは、クレスティーユがアネート方面まで自分を追ってくることを企図して、セーネのエターナル虐殺を行ったと推測されます。この時点でウェスカ方面にはサヴィアーがいたため、サヴィアーが自分の凶行を聞きつけてセーネ方面に来てクレスティーユと出会い、サヴィアーに連れられる形で再び自分に会いに来るように仕向けたのでしょう。
(実際にセーネのエターナル施設でルナンと出会ったのはディザであり、彼もまたクレイシヴを追う者であったため、結果的にはクレイシヴの意図通りに事が運ぶことになりましたが、これはクレイシヴにとっては完全に予想外の展開だったはずです。セーネでの虐殺の時点ではクレイシヴはディザを全く認知しておらず、ルナンとディザがウェスカ北の森で既に顔見知りであったことも知らないはずなので)

そしてサヴィアーとも知り合ったルナンはディザに付き合う形で、ドーグリ南の遺跡で再びクレイシヴと遭遇することになります。この時点でルナンが「クレイシヴ」という名に顔見知りとしての反応を全く示していないので、クレイシヴは「今の彼女に自分と過ごしたクレスティーユ時代の記憶はない=新たな人生を生き直すために過去の記憶を消した」と推測し、名前を訊ねて「ルナン」と返ってきたことでそれを確信したのでしょう。
クレスティーユが過去の記憶を失っている状態なら、シルバーリングを使っても生命兵器の力を十全に発揮できない可能性が想定されたため、クレイシヴはシルバーリングを作るという目標の他にもう一つ、ルナンの記憶を戻すという目標を持つことになります。
ルナンがエターナルを追っており、そのエターナルは幻惑の樹海に眠るとされるクレスティーユを呼び覚ますためにクレスフィールドへ向かっていることを知ったクレイシヴは、ルナンが幻惑の樹海の保存装置まで辿り着くことを想定して、そこで彼女の記憶に働きかけて過去の一部を解放させた次第です。トレイアでわざわざルナンの前に姿を見せて「記憶を取り戻してみるがよい」と挑発したのも、そうすればルナンは確実に自分を追ってくるだろうし、メモリーオーブを求めるようになると踏んだからでしょう。

時を同じくして、アズグレイが皇帝の象徴ファスラクリアを求めてゼビアマインに歩を進め、ルナンたちもそれを追ってゼビアマインへと向かった辺りで、クレイシヴはエターナル乗っ取りの頃合いだと見計らってゼビアマインでファスラクリアを奪い取ります。
(本編ではルナンたちとアズグレイたちの戦いで弾き飛ばされて落ちたファスラクリアを漁夫の利の形で奪い取りましたが、もし両者の戦いがなかったとしても、剣を手にした方の陣営に実力の差を見せつけてファスラクリアを強制的に奪い取ったと思います。統率者としてエターナルを乗っ取る象徴としては、ファスラクリアは欠かせない物でしたから)

そしてクレスフィールドでの建国宣言で瞬時にアズグレイを葬り、フォールンとラーフィアを倒す圧倒的な実力差をエターナル信徒に見せつけたうえで、ダメ押しとして皇帝の証たるファスラクリアを掲げて「我こそが統率者」と名乗りを上げることで、あっさりとエターナル信徒の尊敬を集めて乗っ取りに成功します。
クレイシヴはエターナル乗っ取りを成したと同時に「多くの人を集めろ」と言い放ちます。これは元からの目的である精神体生贄の数を増やすのが主目的ではありますが、エターナルが元から進めていた「ジーダイ遺跡の発掘」「大神殿建設」の2プロジェクトが奇しくも自分の目的に適うものであり、少しでも早く進めるために人手が必要となったこともあったのでしょう。

ジーダイ遺跡、もとい記憶の遺跡の発掘はメモリーオーブでルナン(クレスティーユ)の記憶を取り戻すために最優先で進める必要があり、建国宣言直後に多くのエターナルがそこに派遣されたことがツーリアのモブとの会話で伺えます。事実、ジーダイ遺跡にメモリーオーブがある旨の情報が伝わったのは、ツーリアエターナル建物でルナンたちが捕まった頃ですが、日数的には建国宣言からそれほど経過していないと考えられます。逆を言えば、フォールン(およびシンディ)を利用してルナンたちをツーリアエターナル建物に留め置いたのは、記憶の遺跡を発掘してメモリーオーブまで辿り着ける環境を確保するまでの時間稼ぎだったのでしょう。
ルナンたちはサヴィアーがグラウンドシップを入手したおかげで、ゼビアマイン出立からそう時間をかけることなく、クレスフィールドの建国宣言→ツーリア→ジーダイと渡り歩いています。しかし、ルナンたちがもしグラウンドシップを持たず、ゼビアマイン出立後も徒歩でイーストプレーンの移動を余儀なくされていたのであれば、クレイシヴはルナンたちが真っすぐジーダイの記憶の遺跡を目指すように、何らかの形でメモリーオーブの情報がルナンたちに伝わるように仕向けていたと思います。
(クレイシヴは建国宣言においてはエターナルを乗っ取ることのみが主目的だったので、そこにルナンたちがいなくてもよかったはずです。また、記憶の遺跡の発掘が完了していれば、わざわざルナンたちをツーリアに足止めする必要もないですし)

また、大神殿は元々アズグレイが数年がかりで建設する予定であった、神殿の名に相応しい壮麗な造りになるはずの建物でした。
もっとも、クレイシヴにとっては単に、大勢の人間を集めて精神体を抜き取りやすい好都合な構造の建物に過ぎなかったため、数年がかりどころか物量に物を言わせて、建国宣言からわずか数週間程度の突貫工事で完成させた形になります。当然、そこにはアズグレイが目指した壮麗さのかけらもなく、単に精神体抜き取りという目的に合致する広い密室空間のみを有した大きな建物でしかないものが出来上がったのでしょう。
土砂を取り除く作業が中心となる記憶の遺跡発掘とは違い、どんなに大勢の人を差し向けてもさすがに建物建造には時間がかかります。
なので、クレイシヴは大神殿が完成して降神祭を挙行できるようになるまでの間に、シルバーリングに必要なもうひとつの素材である純銀の材料入手、および精錬に注力した形になります。
(その途上で、ユミの母親の命日の墓参りのためにサンピアスを訪れます。この時にユミと出会うのは、命日である以上は半ば想定していたのでしょう。ユミ、そしてルナンと完全に対立し、それでも自ら決めた道を歩むことを決意した彼は、シルバーリング作成のための最後の仕上げに突き進むことになります)

サンピアス墓参り後、ルナンたちが大クレーター遺跡→蜃気楼の塔を攻略してアージェの真相を調べている間、クレイシヴはフォールンを伴って南部大雪原のシルバープラントにこもり、純銀の精錬に勤しんでいたことになります。(降神祭の実施に係る運営などは手頃なエターナルに任せきりにしていて、クレイシヴは単に実施日のみを把握していた形だったのでしょう)
純銀の精錬は本職であるシルバースターの者ですら難色を示す困難な作業であるため、純度の高い金属を作り上げることについて研究して知り尽くしているはずのクレイシヴであっても、シルバープラントの力を借りて何とか為しえる大変な作業だったのでしょう。
純銀製の輪が完成したのは降神祭開催の直前で、その時にちょうどルナンたちがシルバープラントに辿り着いたので、クレイシヴはフォールンを利用してガゼール達奴隷の処刑の報を伝え、ルナンたちがいったん流砂の遺跡に行くように仕向けます。これも恐らく、降神祭で精神体を抜き取るタイミングでちょうどルナンたちが辿り着けるように仕組んだ時間調整だったのでしょう。
流砂の遺跡に閉じ込められたルナンたちを助けたのはシンディとマークスの人たちですが、仮に彼女たちが助けに来なかったとしても、クレイシヴはルナンたちが遺跡を脱出して、降神祭で大量のエターナル信者が集まっている最中に大神殿に到着できるように、施錠装置が程よい時間で自動的に解除されるように仕組んでいたと筆者は考えています。


かくしてクレイシヴの目論見通り、多数のエターナル信者が集まっている大神殿中枢にルナンたちが辿り着いた瞬間に、彼がこの時まで積み重ねてきた全てのものを一点に収束させる最後の引き金は引かれました。エターナル信者たちの精神体を吸ってシルバーリングは完成し、降り立った神クレスティーユの力でオイルレイクの油は完全に吹き飛ばされて、廃都イリーディアが千年の時を経て姿を現します。
ユミたちの抵抗でシルバーリングを失い、ルナンを支配下から引きはがされたものの、クレイシヴの最大の懸念だったオイルレイク蒸発を成し遂げてイリーディアが姿を現した以上は、クレイシヴにはもはやイリーディア最奥に眠るアージェを目指して進む以外にありませんでした。

イリーディア最奥のアージェの前で、彼を追いかけてきたルナンたちと最後の戦いに臨んで敗れ去ったクレイシヴのその後については、EDでサヴィアーの口から「クレイシヴの行方は分からないが、もうあんなことはしないし、できないだろう」と言われています。恐らくは、神聖帝国の古代の神が全て消え去って新たな時を刻み始めた大陸の片隅で、誰の目にも止まらないように生きながら、ひっそりと世界の変わりようを見続けているのでしょう。


こうして振り返ると、10年前のサンピアスの悲劇で運命が大きく暗転し、その時から道を外してしまったクレイシヴの辿った軌跡は、間違いなく「Cresteaju」の物語における重要な柱です。
主人公ルナンを常に傍で支えてきたディザが、彼女にとっての現在と未来の導き手に等しい表側の準主役であるなら、クレイシヴは彼女が向かい合わねばならない過去へ誘う者としての裏側の準主役と言っても過言ではないと改めて思いました。

クレイシヴの動向に関してはここまでで一通り書き終えましたが、PCオリジナル版ではクレイシヴの行動に大きな影響を与えたとあるものについての謎がまだ一部描写されずに残っています。そちらの解決については、Switch版の内容まで含めた記事の方で記載いたします。