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呟怖〜隧道〜
『坂』
其処は都内でも郊外の田舎で県境に位置する場所其処に戦時中から使われている古い隧道がある。
昼までも薄暗く周りに人家も余り無い為に普段は余り通る人も無い、隧道を抜ければ国道で両脇には小さな商店が立ち並ぶ人通りのある場所にでる。
このトンネルは心霊スポットとして有名な場所、
上り坂なのに車が隧道内で動き出す事から幽霊が後ろから押していると余所者が騒ぎ立てたから。
だが実際は人間の錯視を利用して作られた場所で
図ってみると傾斜がある事を地元民は知っている
故に心霊スポットと勘違いしてくる余所者を
地元住民は少し冷ややかな目で見ていたという。
あの出来事が起こる前までは…。
或る夏の暑い昼下がり、外回りのサラリーマンが
その坂の木陰部分に車を留め少し休憩していた。
するといつの間にやらウトウトしていたらしく、
車が動いている気配を感じて慌てて起きた。
案の定、車はゆっくり坂を下り始めていた、
彼は慌ててサイドブレーキに手をかけ驚愕した。
サイドブレーキは下げられていなかったからだ、
きっちり上がっているにも関わらず車は下る。
急いでブレーキを踏み込むもやはり止まらない、
其どころかどんどん加速し速度を上げていく。
急いで運転席から降りて前へ駆け足で出て何とか
車の速度を落とそうと必死に止めようとした。
周りの人達も異常に気付いて駆けつけてくれ、
何とか無事車を安全な場所へ移動できた。
だが彼ははっきりとその時見たのである。
隧道内に無数の白い手が浮かんでは消えながら、
自分の車のバックフロントを推している姿を…。
其以降彼は二度とその道を使う事は無かった、
そして程なくしてその隧道は閉鎖されたという。
なぜ閉鎖されたのか?詳しい話はなされてない、
だが間違いなくあの白い手が関係している事は
確かだと彼は確信しているという。
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