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hibi/ 2020/4/8〜4/14

2020年4月8日(水)
 両国>蔵前>両国
 日々の楽しみは散歩しかない。今日も233と散歩にいくぞ〜〜というテンションで朝からいる。当の233は最近朝は不機嫌で、不満の声を上げて起きる。ソファに置いてコーヒーを淹れていたら、不満な顔をしたまま寝ている。昼は豆腐麺。先週も作ったが半分が余っているので腐らないうちに料理する。いづちゃんが味覇を、昨日買ってきてくれていたのでそれで作る。とりがらスープとは全く異なる味わい。ラード。ラードのちからを感じる。233が味覇に興味津々で、赤いからだろうか、それを咥えたがるので未開封のものを与えると、しゃぶりつき、味覇大使みたいな写真が撮れた。広告オファーが来ないだろうか。
 のち、原付きで蔵前。ツウハンの出荷をこなしていると思いの外時間が過ぎる。わざわざツウハンのために移動しているのはとても効率が悪い、感。いまはもう在庫置き場以上の意味がこの店にない。
 遅れて帰るとそのままぼくは233を持って散歩。今日はこのためにスケジューリングされていると言っても過言ではないが、ばたばたと出荷して移動したせいですでに足腰にダメージが来ており、233を抱いて移動する体力が残っていない。川沿いを適当に移動して戻ってくる。233は今日も歩きはじめると五分くらいで寝て、家についたら起きた。そういうものだ。
 風呂に入れている間に電話、その電話が終わったら今度はwebで、ZINE講座のデザイン相談の企画を、竹田くんと中村さんと受講者の方と話す。なんだかばたばたしているな、今日は。しかしそれで事務作業の時間が取れていないのが困る。講座が終わってから、「しししし」のゲラを、しかし今回ぼくはほとんど編集に関与できていないので、ざっと見て、誤字脱字、記号のミスだけを拾う、拾う、疲労。24時の約束でまた竹田くんとつないで、できる範囲で校正を確認して、あとなんだっけ? ばたばたしているな、今日は。

2020年4月9日(木)
 両国>森下>両国>代々木八幡>両国
 両国駅に向かう途中で、そういえば履歴事項全部証明書を取らないといけないんだったな、と思い出して森下の税務署まで反対方向に歩いていくことにする。スーパーの前にある税務署なので、わりと人がいる区画。書類はすぐに発行してもらえる。そもそも、これらの書類を、役所に提出する必要があって、それでぼくの自宅待機の禁は破られ、事務所に向かうことになったのだった。そういうものだ、とも言えるし、そういうところだぞ、とも言えた。
 銀行に向かうと、入り口で止められ、「ほんとうに?ほんとうにそれは窓口でないと処理できない書類ですか?」と再三の確認を求められたのち、入店した。今後のためにと思って依頼した振込用紙がなぜか不足しているらしく、少数枚しか取得できない。待合の長椅子にはセンターに赤いテープで塞がれていて「距離をお取りください」と張り紙がしてあった。端に座る。「10日はたいへんですね」と問うと、「午前中なら比較的大丈夫です」とのこと。本当は10日締め切りの納税もあったがペナルティのないものだし、まぁ遅れてもいいだろう、というか、遅れよう、と明日の銀行はやめることにする。e-taxはめんどくさいという印象しかなくて、なんだか使い方を調べていない。そういうものだ、とも言えるし、そういうところだぞ、とも言えた。
 電車。11時台のしかも普段から全く混まない大江戸線なのだけれど、更に空いている。真ん中に座る。電車で久しぶりに本。『いまを生きる』。ぜんぜん映画を知らないのだけれど、詩の話なのだろうか。
 新宿駅で久しぶりに本屋、ブックファーストに行こうと思っていたのだけれど、ついいつもの癖で同じルートを歩いてしまい行きそびれる。そう、それがまついと本屋の運命を分かつ最後の瞬間であったのだ、ということになりかねないな、物騒だなと思うが、流石に感傷的過ぎるというものだろう。しかし、なにか目的があったわけではないが、なぜか本屋に行きたい気がしていたし、行ったらなにか買ったであろうなとも思われた。単純に行くのを忘れたのだけれど。そういうものだ、とも言えるし、そういうところだぞ、とも言えた。
 事務所。書類書類書類書類書類。馴染みの郵便局にはいつものメンバーが揃っていて妙に和む。事務所は今月末に引越し予定なので、この郵便局に通うのもあと少しということになる。レターパックを買い込む。なにへの投資なのだろうか。局の実績? 人は少ないがゼロではない。中華料理屋で後ろに座った男性ふたりが「テレワークってそんなすぐできんの?」と話している。書類書類書類書類書類。すぐに21時とか22時とかになってしまう。帰りの電車も人が少ないので、我が物顔でビールを飲んだ。

2020年4月10日(金)
 両国>蔵前>両国
 233は今日も不機嫌。そしてソファで寝る。
 社労士の方とweb会議で、助成金やら労基法やらの確認を行う。シビア。基本的に籠城戦や撤退戦なので、重い疲労がある。昼はいづちゃんがうどんを作ってくれる。ぼくもなにか作りたいが今日はどうにもそういう余裕がない。作りたい……、芋を蒸したい。戻って事務事務して、店へ。ちょっとだけ今日も出荷の作業があった。お客さんが出入りしないと簡単に店が散らかっていく。不在票が入っていて、次いつ安定してこの場所にいられるかわからなかったので、近くのヤマトの事務所まで取りに行く。本は仕入れてしまうし、本は届いてしまう。売り先だけがほとんどない。webで本を売るのも、ほんとうは辞めたほうがいいというか、それはそれで配達員の方の負担だろうと思うのだけれど、ぼくが“ツウハン”を辞めたところで何も変わらないだろうという気持ちと、いやそれはすべての活動を制約する悪しき感覚だぞという気持ちと、だからといって他の人が通販を始めることを止めたいとも思わないという気持ちと、逆にいまぼくが中途半端に“ツウハン”を辞めることは変なパフォーマンスになるというかぼくの自尊心だけが満たされてあとはだれもハッピーにならなそうな気がするなという気持ちと、なによりみんなが通販を推奨してみんな新規に始めているのを見て、流行りはじめたらすぐ手を引きたくなるぼくのひねくれた性格が発しているアラートなのだろうという気持ちがないまぜになっている。めんどくさ。
 233と今日は散歩に行けなかった。いづちゃんがお風呂に入れてくれてそれを取り上げたのち寝かしつけは任せて、またweb電話(今度は会議ツールじゃなくて電話)で打ち合わせ。長い。疲労。なにをやってもどこに向かっても基本は負け、という状況。焼きそばを作りたかったが断念して、冷凍パスタをもぐもぐ食べる。
 
 夜に給付金の詳細が出たみたいなので、サイトを見に行く。「よくある質問」のところに

問1 給付金の対象者は誰ですか。収入がいくら以下であれば対象になるのでしょうか。
(中略)
そのため、例えば、公務員、大企業の勤務者等は一般的には含まれないと想定されます。また、生活保護者や年金のみで生活されている方なども原則として対象とならないことにご留意ください。
[総務省|生活支援臨時給付金(仮称)](https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/kyufukin.html)

とあって、そういうところがマジでクソだなと思う。もらいたくないが、もらわないといろいろきついなというところも疲労感を上乗せする。飼いならされていく。外堀から。じわじわと。

2020年4月11日(土)
 両国>蔵前>両国
 今日はオープンしない、と思って寝ると、オープンに間に合わない時間に起きるのはすごいと思う。ゆるり。233の食事のとなりでコーヒーを淹れる。14時から本の受け取りがあったので店には行くことにしていて、昼ごはんにざっと、念願の焼きそばを作って二人で食べて家を出る。小エビは何に入れても適切においしくなるのがすごいと思う。SNSを見るとコフィノワさんは、豆の販売とテイクアウトだけやっているようで、入店にはマスクを着用くださいとのことだった。原付きで移動して店にいるだけならマスクいらんかな、と思っていたが、コフィノワ入店のためだけに付ける。なのだけれど、店に着いたのは14時ちょうどで、定刻なら遅刻だが先方も15時ごろとのことだったので、うきうきとコフィノワに向かう。と、入店は一組のみ、他の方は外で待つという仕様のようで、数名が並んでいた。距離感を十分に取る並び方で、この並びもだいぶ世間に浸透してきた感があったが、そこに、あの、これ、最後尾ですか? という確認を行って並ぶ。列なのかどうかが分かりづらい。ほか、あとからきた数名も、最後尾ですか? という雰囲気で連なっていく間に、前も進み入店、購入。コーヒー切れは生活に支障をきたすのでありがたい。となりのお花屋さんもやっているようで、店頭によく買う小さい切り花のブーケがあったので買おう、と思うと、となりに果肉植物が置いてあり、これも同じ値段のようだった。果肉を買う。衝動買い。
 店に行き、どうせいるなら、と看板を下ろす。待ち合わせの主、竹田くんは十五時にやってきて、新刊を受けとる。買ったばかりのコーヒー淹れて、少し話す。と、お客さんがやってきて、一名、二名。ピンポイントを狙ってくださったのか、どうなのか。ありがたい。コフィノワのためのマスクが役にたった。
 ツウハンや取次の荷物を作って郵便局に出してから帰宅。いづちゃんがカレーを作ってくれていて、ありがたい、ありがたい、233はすでに限界のようですぐに風呂、からの寝。多肉植物を買った、と報告すると、「ついにそっちに……。」という反応をいただく。そっちとはどこか。あちら?

2020年4月12日(日)
 ー
 朝からクソみたいな動画が流れてきて、正気を失う。いづちゃんも、ぼくもだが、星野源がとても好きで、なおかつ最近の動画を楽しんでみていたので、とても悲しんでいて、いづちゃんの同様を見て、逆にぼくはすこし正気を取り戻した。いづちゃんが悲しんでいるのを見るのはつらい。しかしどうしてこんなことになってしまったのだろうか。コラボ可能な素材なのだから行為自体になにも問題はない。優雅なうちへの籠もりが、という指摘もわからないではないが、それはそういうものだし、どうでもいい。シェア文化、SNSが育んできた、気軽なコミュニケーションの結果が、固有の政治権力からの一方的な政治利用、もう言葉を選ばないけれどもレイプみたいなことなのであったら、これから「シェア可能」なコンテンツや、盛り上がりをだれも作らなくなってしまうのではないか、というかぼくならそう判断する、という危機感もある。でもこれはそんな理性的な不快感ではない。なにがこんなに不快なのかがわからない。個人への好き嫌いの問題なのだろうか。自分にそこまで、ひとりの人間を嫌悪する感情があると思いたくない。なにも賛同出来ない大嫌いな人間でも、それでも、ほんとうの嫌悪や憎悪は抱きたくない。抱いてしまったのだろうか。抱いていても抱いていなくても、ただただ気持ちが悪い。

……………。

233が六ヶ月ということで、いづちゃんが離乳食で器用にお祝いプレートのようなものを作っていた。ちょっと量が多いかもしれないというそれを、233はなんの躊躇も見せず完食し、それから追加のミルクをせがむ。のちに、三人で散歩に出かける。けっこうな距離を、川沿いを、遊歩道を、花を、鳩をみたりして歩く。

 引き続き気持ちはやるせないので、買ってきた素材で、ポテトサラダと白あえとにんじんマリネとキノコのソテーと葉っぱの炒め物と玉ねぎのサラダを作る。もくもく食べる。

 取次の案内メールなどを作って配信しているともう深い夜で、233が起きてきたので、ミルクを与えて再び寝かしつける。となりでiPadで配信されたばかりのジャンプを読んでいたら、しばらくすると233は寝ていた。スムーズな入眠がありがたい。

 インスタをみて少し救われた気持ちで眠る。

2020年4月13日(月)
 ー 
 よし、月曜だからしごとしよ、という気持ちには特にならず、もにゃもにゃと起き出す。今日も引きこもる予定で、それ、つまり在宅はとても調子がいいものと考えられている。メール返し、問い合わせの電話し、資料作りで、簡単に時間は過ぎていく。

 昼ごはんにフォーをつくったらいい感じに仕上がる。序盤に少しふやかすというレシピどおりに作っているが効果の程がわからない。隣でほうれん草も茹でたため、ふやかし用、ほうれん草用、本湯で用、スープ用と四回お湯をつくる。本屋? さぁ?

2020年4月14日(火)
 両国>蔵前>両国
 日曜日の取次新規扱いメールに少しの反響があり、出荷の必要が迫られた。昼はいづちゃんがお弁当を買ってきてくれる。ぼくは表通りを頑なに歩かないので、その店は、裏口から東南アジア〜インドくらいの地域から来た方々がよく倉庫から仕出し用の資材を本店に運び込むところに出くわす、資材だから軽いのだろう、肩に担いで道路を横断し、その先で五〜六個ほど縦に積まれた壮観なダンボールの壁を好ましいものとしていつも見ている、その大きな仕出し弁当やさんのもので、いづちゃんが「表のお店が今日は開いていた。いつもは開いていない気がする」というので、「表は見たことがありませんが、裏ではいつもみんな働いています」という噛み合わない情報共有をなされたのち、食された。煮魚から上品な味がする。

 取次の注文を整理して伝票を作っていたら、これはこのままでは夜の233のお風呂に間に合う時間に帰ってこれないなということが想定されたので、昼の外出は控え、夜にゆうゆう窓口で出せばいいかということにして、もくもくと数字を作ったのち、233は本日初めての夕方の離乳食。食卓を囲んだほうがいいとうので、いづちゃんと三人で一緒に食べることにする。この、いかにも!、な食卓の様子がどうにも慣れないが、どうしようもないし、どうにかなっていくのだろう。233は二回目の離乳食を前に、「え、またもらえるんですか! 二回も! もらえるんですか!!」という驚きの表情とともにぺろりと平らげた。旺盛。

 233が寝静まった二一時のタイミングで、原付きで出荷のために店に赴く。一人暮らしではなくなって以来、店で遅くまで作業することもまたなくなっているので、かなり久しぶりの夜の店。随分夜遅くまでだったり、めんどくさくなって泊まったりしていたことも思い出す。あのときはでも今より暇だったはずだし、なんの作業をしていたのだろうか。やはり出荷だろうか。あまり覚えていない。
 そういえば、と作業中に思い出し階下のポストを見てみると、いくつか不在票が入っていた。店を開けていないので不在荷物の受け取りができない。事業所が徒歩圏内のヤマトと、これから行く郵便局はしばらく直接取りに行くしかない感じで、佐川は……、まぁ来てから考えるしかなかろうと、適当なことを考えながら不在票を見ると、ゆうゆう窓口での荷物の受け取りはコロナウイルスの影響で一九時まで、とある。「?」。 ということは、差し出しもやっていないのでは? と調べてみるとまさにそのとおりで、深夜の荷物差し出しの窓口はどこも失われているようだった。本日の入店、徒労に終わる。しかしながらまぁ、荷造り自体は数も多いのでけっこう時間もかかるだろうし、箱詰めだけやってしまおうと取り掛かると、しばらく開店しておらず散らかった店の作業動線は死んでおり、あれはどこに? これ邪魔だな? あ、改装しないと出荷できないぞ、などが重なって、18個口作るのに180分を要し、簡単に日付を超えてしまう。疲労。しかしながら実際は、店番兼務ではなく、出荷のためだけに店にいる、という事実にいちばん徒労感がある。 一人二役で売上も立っていたのにそれがないという実利上のことももちろんあるけれども、なんだか、寂しさがある。

 「music for fuzkue」がものすごくいい。

 帰ってきてからビールを飲んでいると233が起きてきたので本日の業務は終了。ここ数日、本を全く読んでいない。

#READING 『いまを生きる』(N.H.クラインバウム、白石朗訳、新潮社)


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