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クリームブリュレを食べるおじさん

おじさんは、メニューを見て、クリームブリュレに目が止まった。名前は聞いたことあるが、カタチを思い出せない。プリンみたいなやつだろうか。

頼みたいけど、まずブリュレが言いにくいな。うまく言えるか不安である。ビールの醸造をブリューイングと言うが、ブルーイングの方が気楽に言える。クリームブルレのほうが言いやすい。

クリームブルレを一つください。

おじさんは安全な言い方に逃げた。無駄なリスクを取らないのが、おじさんの生きる道である。そもそもブルレってなんなんだろう。調べると、ブリュレとはバーナーやグリルで砂糖を焦がすことらしい。 「焦がす」「燃やす」という意味のフランス語で、英語の”burn”に相当するんだって。

そうか、クリームブルレとは、クリームの表面をバーナーで焦がしてますよって意味なのか。確かにそんなデザートだったわ。クリームバーンだと、焦げ焦げになりそうだから、確かにクリームブルレの方がいい。

クリームブルレがテーブルの上にくる。アクセントにフランボワーズのソースをおかけくださいと店員さんは言った。

フラン?ヴォワ?一回じゃ言えない。クリームブルレはいちいち難易度が高い。フランボワーズとは何なんだ?フランボワーズはフランス語で、英語でいうとラズベリーらしい。だったらラズベリーでいいじゃないか。なんだかフランス語は、ヴォとかヴュとか多いなぁ。普段生きてて「ウ」に点々つけることあまりないもん。

スプーンでクリームブルレにすくう。パリッとした硬いブルレと、トロッとしたクリームが絶妙に気持ちいい。口の中に含むと、濃厚な甘さが拡がる。

すかさずおじさんはコーヒーのブラックを飲む。甘さに苦さが混じり合って美味しい。甘さに苦さを交互に味わいながら楽しんでいく。おじさんはサウナと水風呂の交互浴を思い出した。

次に例のフランボワーズのソースをかける。今度は甘さに酸味が混じり合って美味しい。甘さと酸味を交互に味わう。

クリームブルレはサウナだ。おじさんは一人でそう合点した。