2022年、私にとって競馬はエアグルーヴの年だった。

■はじめに

本日中山競馬場にてホープフルSが開催され、今年の中央競馬は無事に全日程を終了した。これを読んでいるあなたが競馬をゲームとして楽しんだのなら、的中にガッツポーズしたり、相手決着や紐抜けで歯噛みしたりと毎週忙しい一年だったと思う。推しの馬やジョッキーがいるなら、悲願の勝利に湧いたり、悔しい負けに涙したり、引退に寂しさを覚えたりして情緒がめちゃくちゃだったことだろう。我々ファンにこれらのワクワクドキドキを提供しながら、一年間休み無く走ってきた競馬関係者の皆様には、心からお疲れ様とありがとうを送りたい。

私がウマ娘に導かれて競馬を見始めてから、およそ二年弱が経ち、競馬への接し方もぼちぼち分かってきたように思う。今年は初めてG1を現地観戦したり、6月からはPOGに参加したり、レスター伯パイセンにカメラを借りて写真を撮ってみたりと色々新しい体験も出来た。
そんな中で私にとって競馬とは、昨年以上にエアグルーヴの血族を追いかける日々だった。
今年、エアグルーヴの血を引く馬が勝った中央重賞は、数えてみればなんと16勝。内訳はG1:8勝、G2:2勝、G3:5勝、J・G2:1勝とかなりすごいことになっている。ヴァレーデラルナが制したJBCレディスクラシック(Jpn1)も合わせると、国内のG1級競争を9勝している計算になる。この熱狂を体験できた日々は、とても素晴らしいものだったと改めて思う。
そんなエアグルーヴ限界オタクにとってお祭り騒ぎだった1年を振り返るにあたり、まずは今年の夏コミにて頒布された「ごまのうま本Vol.1」に寄稿させていただいた原稿を再掲させていただきたい。主催のごまさんからはしばらく前に許可をもらっていたのだが、タイミングがなくずっと塩漬けになっていたものだ。尚、再掲する原稿の情報はことし6月中旬の執筆時点のものになっているので、それ以降の話についてはまた後ほど書きたいと思う。

■女帝の血が咲き誇る、その瞬間を追いかけて(※C100にて頒布の同人誌「ごまのうま本 Vol.1」に掲載)

 これを読んでいるあなたの「性癖」はなんだろうか。こういうシチュエーションが好きとか、この手のキャラに弱いとか、特定部位のフェチだとか、色々あると思う。私の場合は「強い女が好き」である。強くあるためには努力を惜しまないとか、強くありたいがために他人に弱さを見せるのに抵抗があるとか、そういう面があれば尚良い。
 なので、数多の強い女たちがレースで鎬を削るウマ娘というコンテンツにおいて、私がエアグルーヴに惚れ込んだのは、ある意味必然だった。
 自分にも他人にも厳しく、時にトレーナーでさえも「たわけ」と叱咤することを躊躇わない。一方で、悩める後輩に手を差し伸べたり、花を育てるのが趣味だったりと優しい一面も見せる。きりりとした面差しが美しいビジュアルに、クールさの中に確かな情熱を伺わせる青木瑠璃子さんによるボイスも素敵である。語りたいポイントはまだたくさんあるが、あんまり書くと阪神大賞典のオルフェーヴルのように逸走しかねないので、このくらいで止めておくことにする。
 キャラクターだけでなく、モデルとなった競走馬の史実を下敷きにしたシナリオの温度感も良かった。オークス母子制覇、三冠最終戦の秋華賞、宝塚記念でサイレンススズカと対峙し挫折を乗り越えて勝利した天皇賞・秋……トレーナーと徐々に絆を深めながら走っていくストーリーは、いずれも熱いシーンの連続だった。そんなドラマをリアルでも体感したいという思いが、私をそれまで縁のなかった競馬という世界に導くきっかけとなった。

 そんな風に競馬を見始めた2021年は、ドラマチックな出来事の連続だった。
 白毛馬初のクラシック制覇となったソダシの桜花賞。天国のラフィアン総帥・岡田繁幸氏に勝利を捧げたユーバーレーベンのオークス。エフフォーリアとの激しい追い比べの末、ハナ差でシャフリヤールが制した日本ダービー。京都大賞典のマカヒキ奇跡の復活に、ジャパンカップで三冠馬コントレイルが見せた有終の美、その二戦の影ではエアグルーヴの血を引くキセキが名脇役として輝きを放った。アメリカと香港でGⅠ二勝を飾ったラヴズオンリーユーなど、海外での活躍も目立った。
 中でも印象的だったのが、タイトルホルダーが制した菊花賞だった。春のクラシックで連敗を喫し、再起を誓った夏のさなかに父ドゥラメンテが九歳の若さで急逝。一番人気を背負ったセントライト記念はまさかの惨敗。菊花賞に至るその蹄跡は、決して順風満帆ではなかった。それでも私がタイトルホルダーを応援し続けたのは、ただただ女帝エアグルーヴの血を受け継ぐ彼の勝利を見たかったからだ。
 そして菊花賞の日。スタートから果敢にハナを切ったタイトルホルダーは、一度も先頭を譲らずに3000mを走りきった。画面の前でレースを見守っていた私は、勝利を見届けてひたすら泣いていた。春からずっと待ち望んだ、エアグルーヴの血族によるG1戴冠の瞬間だった。
 菊花賞の逃げ切り勝ちはセイウンスカイ以来の快挙であり、タイトルホルダーの鞍上は奇しくもセイウンスカイの主戦だった横山典弘騎手の息子・武史騎手だった。そして二冠馬ドゥラメンテが骨折で走ることすら叶わなかった最後の一冠は、その子タイトルホルダーが掴み取った。人と馬が生み出す筋書きのないドラマ。私がその熱に完全にやられたのは、きっとこの日だったのだと思う。

 さて、配信で飽き足らず現地に行きたくなるのはオタクの習性であり、それは競馬であっても同じだった。ところがコロナ禍にあって競馬場に行くには、人数制限の中で指定席抽選をくぐり抜けなくてはならない。殊にGⅠともなると倍率は凄まじく、阪神開催のGⅠの指定席抽選で私はことごとく落選の憂き目に遭っていた。意を決してJRAカードの会員になり(当然図柄はエアグルーヴを選んだ)、最速先行への参加権を手にしてもダメ。数々のチケット戦争を経験した私も、これには参った。
 そんな失意の日々を経て、とうとうGⅠレースの観客席にたどり着く日がめぐってきた。2022年4月10日、クラシックの開幕を告げる桜花賞の開催日である。奇しくも、私が昨年初めて生の映像で見たレースの日でもあった。
 当日は1Rが始まる前に阪神競馬場へ行き、座席とパドックと発券機とゴール前をひたすら往復し、生で体感する蹄の音に興奮し、レースの結果に一喜一憂する。そんな時間を過ごしていると、いよいよメインレースである桜花賞の発走が近づいてきた。
 どこか浮足立った空気の中で、私はパドックをやや遠くから眺めながら考え込んでいた。素人目に見て一番よく仕上がっているのはウォーターナビレラ。一番人気のナミュールも直近二戦のレースぶりから実力は明らかだ。最内に入ったナムラクレアも外せない。この三頭が本線だろうが、ここにどうしてもエアグルーヴの血統を入れたかったのだ。
 今回、エアグルーヴの血を引く馬は三頭いた。アネモネSで2着に滑り込んで出走を果たしたラズベリームース。マイル路線で好走を続けてきたベルクレスタ。そして、デビューから常に複勝圏内をキープしながらも2勝目が遠いスターズオンアース。正直三頭ともやや決め手に欠く印象があり、たいへん悩ましい。
 そこで思い出したのは、川田将雅騎手に導かれたアートハウスが鋭く抜け出して勝った9R・忘れな草賞の光景だった。もしかしたら、川田騎手の乗るスターズオンアースが何かやってくれるかもしれない。そんな僅かな期待を込めてナムラクレア、ウォーターナビレラ、ナミュール、そしてスターズオンアースの三連複ボックスを買った。
 そして初めて生で聞くG1のファンファーレが鳴り響き、いよいよゲートが開く。レースはよどみなく進行し、最終直線に入ると好位につけたウォーターナビレラが鋭く抜け出して最内からナムラクレアが続いた。ナミュールは後方で伸びあぐねたまま。スターズオンアースの前には三頭が並んで壁になっており、挽回は絶望的に思えた。このまま武豊騎手の駆るウォーターナビレラが勝つか。そう思った瞬間だった。
 一瞬開いた僅かな隙間を縫って、青い帽子に黄色と黒の縦縞の勝負服が飛んできたのだ。そのゼッケン8番の馬が、前を行くウォーターナビレラを捉えた。スターズオンアースだった。
 場内がざわつく中、勝敗の行方は写真判定に委ねられた。結果を待つ私の脳裏に浮かんだのは、昨年末香港カップを勝利したラヴズオンリーユーの姿だった。あのときも鞍上は川田騎手で、同じように狭いところをブチ抜いて勝っていたはず。そして同時に、何度も映像で見た97年の天皇賞・秋、エアグルーヴがバブルガムフェローとの叩き合いを制し、真に「女帝」として君臨した瞬間を思い出していた。
 電光掲示板がまだ灯らないのにも関わらず、私はスターズオンアースの勝ちを確信していた。馬群の間を割ってのイン突き強襲は川田騎手の得意とする勝ちパターン。なによりエアグルーヴの血を引く彼女が、直線の叩き合いで負けるはずがない。やがて電光掲示板の一番上、一着を示すそこに数字の8が点灯した時、その予感は現実になった。
 不思議と、昨年の菊花賞のときのような涙はなかった。僅かな勝ち筋を引き寄せた川田騎手の手腕と、それに全力で応えたスターズオンアースの強さが、ただただどうしようもなく嬉しかった。ついでに言うと買っていた三連複は万馬券になった。一年余り競馬を見てきて、レースという意味でも馬券という意味でもこれが一番嬉しかった瞬間なのは間違いない。同時にGⅠレースの熱狂と、そこで勝つということの意味や重さを、これまで以上に強く実感した体験でもあった。
 その後、スターズオンアースは大外枠の不利やトラブルによる出走の遅れも気にせずオークスを勝ち、牝馬三冠に王手をかけた。そしてタイトルホルダーは天皇賞・春と宝塚記念を圧倒的な強さで勝ち、日本調教馬の悲願である凱旋門賞制覇を目指すことになった。他のエアグルーヴの血を引く馬たちも含めて、それぞれの進む道の先にさらなる栄冠が輝くことを、一ファンとして祈らずにはいられない。
 
 さて、最後にもう一度ウマ娘の話に戻りたい。育成シナリオで、エアグルーヴのお母様がトレーナーのもとを訪ねてくるエピソードがある。そこでエアグルーヴの年中行事へのこだわりは母親譲りであることが語られるのだが、最後にお母様がこんなセリフをトレーナーにかけるのだ。
「これからも娘の”お祭り”に付き合ってあげてください」
 初見ではなんでこんなにお祭りの話をするのだろうと思っていたが、数々のレースをゲームでも現実でも見てきた今なら、その理由が分かる気がする。エアグルーヴの名前に込められた「groove」という言葉には「わくわくさせる」という意味がある。全てのレースは決まった時期に開催されて、沢山の人達を熱狂させる。レースとはわくわくする年中行事、すなわちお祭りにほかならないのだ。
 そしてもう一つ、「groove」という言葉には「轍」という意味もある。終わらないコンテンツ、引退しない競走馬は存在しない。それでもきっと、その道筋は誰かの心に残り続けるのだと信じたい。
 現にエアグルーヴがターフを去って久しい今もなお、彼女の子孫たちはレースの最前線で走り続けている。そして、ウマ娘というコンテンツを通じて、あるいは過去のレースの映像を見て私が感じたエアグルーヴの「強さ」は、最後まで諦めず一歩でも前に進み続ける勝負根性として、その血を引く馬たちに確かに受け継がれていると感じる。
 そうして時代を超えて受け継がれるものと、そこに関わる人々の夢と情熱が織りなすドラマ。それらが織り成す最高の”お祭り”を、私はこれからもエアグルーヴの血統とともに追いかけていきたいと思う。

■蹉跌の秋

……さて、ここまで再掲した内容は、今年の夏前までのものだ。ここからは夏以降の話題をダイジェストでさらっていきたい。
夏競馬ではまず、七夕賞で伏兵的存在だったエヒトがあっと言わせ、鞍上の田中勝春騎手は久々のカッチースマイルとなった。ちなみに私が今年の平地重賞で唯一エアグルーヴ血統馬の単勝を取り逃したレースでもあり、カッチースマイルの晴れやかさとは対称的に苦い記憶と共に残っている。
また夏の2歳重賞、札幌二歳Sではドゥーラとドゥアイズがワンツーを飾り、新潟ではリバティアイランドが上がり3ハロン31.4とかいう化け物じみた記録を叩き出してデビューを飾っている。

そんな希望を感じさせる夏競馬とは裏腹に、秋のG1戦線は悔しさを残す滑り出しになった。
まずは牝馬三冠の最終戦、秋華賞。二年ぶりの三冠馬誕生を期待されたスターズオンアースは、夏をオークス後に判明した骨折の治療にあて、ぶっつけ本番での参戦となる。それが響いたのかスタートでまさかの出遅れ。ルメール騎手の神業めいた騎乗を持ってしても、そのロスを挽回しきれず悔しい3着。最後の鬼気迫る豪脚は、前の項でも書いた「勝負根性」を感じさせる素晴らしいものだったが、レース後に繋靱帯に炎症を発見し、休養に入ることになってしまった。桜花賞とオークスの勝ちっぷりから「この世代の牝馬最強は間違いなくこの子だ……」と思っていたので本当に悔しい。早くまた元気に走っている姿を見たい。
続く牡馬クラシック最終戦、菊花賞はディナースタとドゥラドーレスの二頭出しも、残念ながら特に見せ場なく終了。
エリザベス女王杯のアンドヴァラナウトも、名手ライアン・ムーア騎手を背に勝つかと思われたが18頭中17着という結果に。雨の阪神競馬場で私の心も泣いていた。そしてプレゼンターの長澤まさみは全然見えなかった。
マイルチャンピオンシップではソウルラッシュが出走。同舞台のマイラーズカップを勝ち、前哨戦の富士Sも2着と好走したので期待も大きかったがあまりにも悔しい4着。二週連続で阪神競馬場のスマートシートで慟哭した。

しかし、何よりも悔しかったのは、国内のレースの負けではなく、凱旋門賞に挑んだタイトルホルダーの大敗だった。
天皇賞・春、宝塚記念を圧勝して臨んだ凱旋門賞。母方に流れる凱旋門賞馬モンジューの血や、ここまでの戦績で見せたタフなレースへの適正などから、タイトルホルダーに期待をかけた人も多かったと思う。私もその一人で、ロンシャンでもいつものようにハナを取り切って先頭で走る姿に本気で夢を見た。夢を見たからこそ、最終直線で悠々と抜け出したアルピニスタ他、欧州の馬たちに置き去りにされていく様を見るのは本当に辛かった。
そして、帰国後の初戦となった年末の有馬記念も9着に終わるという悲しい結果に。しかし、春の二戦の強さは間違いなかったし、3歳時にも大敗したセントライト記念から立て直して菊花賞を制しているのだから、きっと大丈夫だと思う。信じて応援することしか我々には出来ないのだから。

■砂の舞台と若駒たちがもたらした希望の光

そんな悔しさにまみれた秋を照らしてくれたのは、太陽ではなく月の光――ヴァレーデラルナによるJBCレディスクラシック制覇だった。
エアグルーヴの血族からは初めてとなる、ダート交流重賞Jpn1の王者が誕生したのだ。冷静に考えると、女帝一族の代表種牡馬であるルーラーシップとドゥラメンテは、ダートでもG1馬を出しているキングカメハメハの直子であり、実際にダートでの勝率もそれなりに数字が出ている。また、JBCレディスクラシック以前にも、バーデンヴァイラ―が盛岡でマーキュリーカップを、ジュンライトボルトがシリウスSを制するなど、予兆は確かにあった。だとしても、ナイターのカクテル光線に照らされる中、スペイン語で「月の谷」の名を冠した馬が勝つのはいくらなんでも出来すぎではないだろうか。鞍上の岩田望来騎手も初めてのG1級競争勝利となり、嬉しい初物尽くしの栄冠だった。

そして、ヴァレーデラルナに続けと言わんばかりに、チャンピオンズCを制して中央で砂の王となったのがジュンライトボルトだ。
夏にダート路線に切り替えてから3戦パーフェクト連帯、前走は同じ中京が舞台のシリウスSを上がり最速で制しており、もしかしたら……と思わせるものがあった。しかし一方で、昨年覇者テーオーケインズの壁は分厚いとも思っていた。それすらも杞憂といわんばかりに、霹靂一閃の末脚でごぼう抜き。勝った石川裕紀人騎手はインタビューでブラボーを連呼して盛大にスベっていたが、それすらもご愛嬌といえるような鮮やかな勝利だった。

そんな1年を締めくくったのは、エアグルーヴの血族による2歳G1完全制覇という偉業だった。
阪神JFのリバティアイランド、朝日杯FSのドルチェモアはどちらも現地で勝利の瞬間を見届けることができた。とにかくこの二頭は完成度の高さが異常だった。
リバティアイランドはパドックで「私はこれからレースを走って、そして勝つ」と全身で宣言するかのような落ち着きぶりで、レースでもひとり決め手が違う出来だった。ドルチェモアはサウジアラビアロイヤルカップで大逃げする馬の番手を取って勝ったことが効いたのか、先行抜け出しの王道の競馬で危なげない勝利。底知れない器を感じさせる勝利だった。

そして一年を締めとなった本日のホープフルS、14番人気のドゥラエレーデがハナ差しのぎ切って勝利。単勝90.6倍、2着以下もオッズ10倍を超える人気薄が入る大波乱の決着を演出した。正直私も「ダートで勝ち上がってるし、いくらノーザンテーストのクロス盛り盛りだからって厳しいのでは?とりあえず応援で単複だけ買っとくか……」ぐらいの気持ちだったのだが、まさかまさかの決着で目が飛び出そうになった。信じて祈ること、それがいつかは実を結ぶのだと最後の最後に教えられたといえるだろう。

余談だが、私は以前指名馬を紹介したニコマスPOG以外にも、もう一つ、初心者競馬相談室POGというものにも参加している。ここではドゥラエレーデとリバティアイランドを指名していたため、今月だけで14000ポイント超を荒稼ぎしてまさかの首位で折り返しとなった。

初心者POGはニコマスPOGで競合したり指名回避したりしたメンバーを中心に選んだのだが、これがこんな形で実を結ぶとは思わなかった。ちなみに、札幌2歳S勝ちのドゥーラも、朝日杯を制したドルチェモアも指名候補には入れていたことを申し添えておく。あのとき指名しておけば……という後悔は正直めちゃくちゃある。だが、競馬において「選択」というものがいかに重要で取り返しの付かないものであるか、ということは常に付いて回る話でもあり、これもまたいい経験だったと思うことにしたい。

■おわりに

こうして振り返ると、2023年は本当にエアグルーヴ限界オタク狂喜乱舞の一年だったな、と思う。
重賞で出走馬の血統表にエアグルーヴの文字があればとりあえず単勝を買い、POGでも血統表にエアグルーヴの文字がある馬を可能な限り指名し、アイドルホース(ぬいぐるみ)が発売されれば購入し、競馬場に行けばエアグルーヴの血を引く馬の写真を狂ったように撮りまくり、ウマ娘関連の発表があれば「キセキ実装!!」と素振りをする……改めて書いてみると自分でも到底正気の沙汰とは思えない。エアグルーヴ(ウマ娘)が見たらきっと、「たわけが……」と眉間にシワを寄せることだろう。
ただ、そうして信じて応援することで得られたものは配当金だけではなかったと思う。夏コミの原稿にも書いたけれど、自分が今筋書きのない現在進行系のドラマを目撃しているという感覚は、なによりも私を夢中にさせてくれている。現地を訪れることが増えたこと、エアグルーヴの血族の重賞勝利が増えたこともあるのだろうけれど、その感覚は去年よりもさらに色濃いものになった。
きっとこのわくわくする熱狂を追い求めて、来年も再来年も、私は女帝の血を引く馬たちの足跡を追いかけ続けるのだと思う。
来年にはきっとキセキがウマ娘に実装されるはずだ。デアリングタクトの物語を描くならば、名脇役たるキセキの存在は欠かせない。
そして再来年にはキセキの産駒がデビューする。なんならPOG全頭キセキ産駒染めもある。
止まっていることなんてできやしないのである。

それでは最後にキセキのクソかわいい写真が拝めるnetkeibaさんの記事を貼って締め。みなさん、明日の東京大賞典も当てて、良いお年を!!!!


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