ここからまた、始まれ! ーー『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』感想

「初心忘るべからず」という言葉は、皆さんも聞いたことがあるかと思います。何かを始めたときの気持ち、初期衝動は時とともにどうしたって薄れてしまうもの。だからこそ、それを時々思い出してみる必要があるんじゃないでしょうか。

……なんかいきなり説教臭い出だしで恐縮ですが、このたび劇場公開された新作OVA「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」はまさにそういう、「初心」がテーマの作品だと思うのです。
私は公開初日に舞台挨拶のLV回が初見だったのですが、いろんな意味で「うわああああああ!」ってなりながら帰ってくることになりました。
今回はその話をじっくりやっていきたいと思います。
ここから内容にかなり踏み込んだ話をするので、以下は本編をご覧になってから見ることをおすすめします。

■スクールアイドルとニジガクの軌跡を辿って

今回は、イギリスへの短期留学から帰国した歩夢と共に日本にやってきた少女・アイラを中心にお話が進んでいきます。
スクールアイドルが大好きな彼女のために、日本文化とスクールアイドルを体験してもらおう!というのが前半のストーリーのメイン。
ところでそのツアーの中身だいぶえぐくなかったですか?????
秋葉原ではスクールアイドルの名門としてUTXが紹介されたり、神田明神の階段やメイドカフェなんかも登場します。愛さんのメガネメイドやばすぎ。アンテナショップには沼津名物のみかんジュースやAqoursのみんなが大好きなのっぽパン、そして金沢のポスターも。とうぜん原宿にも行きます。
これらはすべて、ラブライブの他コンテンツと縁の深いものばかりです。
私は虹ヶ咲にハマる遥か前、μ'sと矢澤にこが大好きだったので、「秋葉原にはスクールアイドル部のある学校がたくさんある」という言葉には「μ'sがスクールアイドル文化を秋葉原に定着させたんかもな……」と胸が熱くなりました。
直接の言及こそはありませんが、この世界のどこかに確かに他校のスクールアイドルが確かに息づいて生きているように感じられるシーンの連続。

そして、悩む栞子を歩夢が連れて行った「始まりの場所」は、ダイバーシティの階段前でした。
アニメでもスクスタでも、せつ菜のライブを見たことがきっかけで虹ヶ咲の物語が動き出した場所。

この瞬間から、全てが始まった

リアルではTOKIMEKI RUNNERSの発売イベントが行われた場所。
そして、スクスタ最後のシングルとなった、『Kagayaki Don't  forget!」のMVの場所。

偶然なのかすべて掌の上なのかは分かりませんが、OVAの公開から間もなく、明日6月30日をもってスクスタはサービスを終了してしまいます。μ's、Aqoursといった他校のスクールアイドルたちと虹ヶ咲メンバーの交流が描かれたスクスタの終わりと時を同じくして、他校の存在や虹ヶ咲の軌跡を辿るような情景描写がたっぷり盛り込まれた映像が流れる、それだけでちょっと胸を打つものがありませんか?
個人的には栞子がアイラと大階段を訪れた際の描写がたまりません。1話と同じく階段を下って登場するせつ菜や、歩夢が『Dream with you』を歌う前のマンションの階段のシーンと重なるように、階段を駆け上がる栞子の姿には思わず映画館で声が出そうになりました。
これらの映像はきっと、これまでラブライブや虹ヶ咲と一緒に走ってきた私達へのちょっとしたメッセージだったのかな、と思います。
別れはあるけれど、そこで得たものは確かに受け継がれているから大丈夫、そう言われているような。
そう考えると、キャッチコピーとして今作に添えられた「みんな、ただいま!」という言葉の意味もより一層深いものに見えて来ます。
始まりの場所に「ただいま」を言えたからこそ、ここからまた新しいなにかが始まっていく……私にはそんなふうに感じられました。

■始めたからこそぶつかる壁、でも「わたしたち」なら超えられる

とはいえ、なにかを始めることがポジティブなことばかりを連れてくるかといえば、決してそうではありません。一期で歩夢と侑の2人を軸に描かれた関係性の変化だったり、それぞれの個人回で繰り返し描かれた新しく始めることへの緊張や自己表現への不安もそうです。
そうした始まりのネガティブな部分に向き合う役割を課されたのは、今作では栞子とアイラの二人でした。
栞子は、ライブのMCやファン対応でクソ真面目なことしか言えなくて「自分にはスクールアイドルの適性がないのかもしれない」と思い悩みます。でもそこが可愛いんだよなぁ……
二期で同好会に加入した栞子、ミア、ランジュの三人の中で、アニメの世界線でステージに立つことの経験値が一番少ないのって、実は栞子なんですよね。ランジュは同好会加入前からスクールアイドル活動をやっていましたし、音楽一家の出身であるミアもステージに立った経験があります。
また、生徒会長への就任もスクスタのストーリーより後になっているため、現時点の栞子は「人前に立ってなにかをする」ことの経験値が圧倒的に少ないわけです。そんな中でスクールアイドルを始めたからこそ、壁にぶつかっているといえるでしょう。

一方でアイラは、スクールアイドルクラブの設立申請が通らないことを悩んでいました。文化的背景が日本とは違うイギリスで、スクールアイドルとしての活動を行うことがどんなに困難か。それは奇しくもアイラと歩夢の交流のきっかけとなった二期12話において、欧米の学校における部活制度やアイドルという概念について、エマたちの口から語られているとおりです。
そんな中でのアイラの日本行きは、スクールアイドルとしての活動を終わらせる前の最後の思い出作りの側面もあったのでしょう。かつてのせつ菜が、その活動を終わらせるためにステージに立ったように。
そんな悩みに気づいたのは、自分自身も限界にぶつかって悩んでいた栞子でした。
思い返せば二期8話、ランジュの帰国騒動に際して同好会に助けを求めて部室の方へ駆け出して行った栞子。
今回はまず自分から、たった一人であのときと逆の方向へと走り出します。アイラの悩みに寄り添い、夢を後押しするために。
「にじよん!あにめーしょん」4話の彼女セリフが、ふと思い出されます。

「情熱は誰もが持っていて、その背中をそっと押してあげられたらーー」

その言葉通りに行動する栞子の姿を見て、思わず涙がこぼれそうになりました。
そうして伝えたかった「いちばん大切なこと」はやっぱり「一人だけど独りじゃない」だと思うんですよね。
虹ヶ咲の世界において、「限界」という言葉を辞書で引いたら「独りでは超えられないかもしれない。でも、誰かと一緒なら超えられるもの」と書いてあるんじゃないかと私は思います。
今までの話を思い返せば、みんな誰かの存在に助けられて自分の限界を超えてきました。
アニメ二期が始まるにあたって、カウントダウン形式で公開されたPVに添えられたキャッチコピーを、みなさんは覚えていますか?

果林のなのは趣味です()
このPV、侑ちゃんだけキャプションが違うのが芸細

「私」の限界を超えるためには、「あなた」を含めた「みんな」の力が必要不可欠なんです。
だからこそ、始まりの場所で歌われる曲のタイトルは『Go Our Way!』でなければいけなかったのだと思います。
「私の道」ではなく「私達の道」
そしてそれは一本の道ではなく、並走する何本もの道なのだと思います。

髪飾りを強く結び直して歌い出す栞子。
それに続けて歌を繋いでいくのは、新しく加わったR3BIRTHの三人。
サビで集まってくる他のメンバーたち。
映像面に目をやれば、クールなダンスパートと対照的に生活感あふれるPVパートの対比が印象的です。これはR3BIRTHルームシェア合同の機運。
そこからは、「出会いがいつどういう形であったとしても、ここはみんなにとっての居場所になるんだよ」というメッセージが受け取れる気がします。
みんな違う道を違う速度で歩いていても、今ここで一緒にいられることが楽しい。
出会いは奇跡で、別れもまた必然で、だからこそ今ここにあることが大切だし、その時間は決してなかったことにはならない。
なんといったら良いのか、そういった思想性みたいなものへの共感が、私の虹ヶ咲に対する「大好き」の中にあることが再確認できました。

話はそれましたが、応援してくれるペネロペと一緒にクラブ活動にこだわらずスクールアイドルを続ける決意をしたアイラにとって、あるいはスクールアイドルの適性に悩んでいた栞子にとっても、原点である「一人だけど独りじゃない」を思い出せたことはきっと大きな意味を持つことでしょう。
そして、そのメッセージのもとで虹ヶ咲と一緒に走ってきた私や、"あなた"達みんなにとっても。

いよいよスクスタとの別れという大きな節目がやって来ます。でもそこで終わりではありません。
にじたびの公演もまだ2開催ぶん控えていますし、5thアルバムも6thライブも待っています。そして何より、劇場アニメ三部作の公開が控えています。
初期にキャストさんの口から語られていたように「アニメ化の予定はない」と言われていたはずの虹ヶ咲は、ここまで来れました。

お台場全体を見渡せるレインボーブリッジの橋脚の上から、都心の方を不敵な表情で眺めるみんな(約1名厨二病に目覚めてたけど)、そして最後のシーンで登場した「SCHOOL IDOL GPX」の文字。
その視線の先にある未来にいったい何が待ちうけているのか、ワクワクしませんか?
その時を楽しみにしながら、これからもみんなそれぞれのスピード、それぞれのやり方で虹ヶ咲と一緒に走っていけたら嬉しい。そんな風に思います。

■おまけ:エンドロールに刻まれた、私の「はじまり」の話

本編の話はここまで。ここから先は六割がた私事です。
すでにお気づきの方もいるかと思いますが、本作のエンドロールで流れる「頑張っていること、頑張りたいこと発表コーナー」にて私の送ったメッセージが採用されました……!

応募したのは「永遠の一瞬のときもブックレットに名前載って嬉しかったし、とりあえずエンドロールに名前が載るなら……」くらいの軽い気持ちでした。それがまさかこんなことになるとは想像もしておらず、初見時は「各メンバーにつき16名しか選ばれない貴重な枠の一個が私で良いのか?」と嬉しさ半分パニック半分というのが正直なところ。エンドロールで自分の名前を発見してから舞台挨拶のLVが始まるまで、ずっと映画館の席でカタカタ震えてました……w ホントに震え止まらないのよ。びっくりだよ。

ようやくその衝撃も和らいで、スクスタで果林のキズナエピソードを読んでいたときのことです。(実はスクスタ始めたのが遅かったので絆レベルが全然上げられず、今回のエピソード開放でようやく最後まで読めました……)

マジでひっくり返るかと思った。
なんで果林のキズナエピソードでカメラに言及されてるんですか???

ツイートにも書いたのですが、今回送った内容は「一念発起してカメラを買いました。これから素敵な写真がたくさん撮れるよう頑張りたいです」(要約)というもの。
NEXT SKYを見終わった後しばらくは「まぁモデルである果林とカメラってギリギリ接点あるともいえるし、そのへんの兼ね合いで運良く選ばれたのかな……」とか思ってたんですが、キズナエピソードにめちゃくちゃドンピシャの内容あって本当にびっくりしました。
これ、おそらく明確な意図を持って私の回答を選んでくださったのでは???
キズナエピソード最終話を踏まえて改めて考えれば、エンドロールに私のメッセージが載ったことは、いち果林推しとして大変な名誉だと思います。
改めて、本当にありがとうございました。

……と言ってもご覧の通り撮ってるのは馬ばっかりなんですけどね!!!!
いやでもホラ、競走馬って私がトキメキを感じる存在なのはそうだし!
トキメキって名前の馬も走ってるし!

ちゃんとお台場の風景も撮ってるから!!!

とはいえ、カメラを始めた理由については虹ヶ咲もちょっと関わってる話だったりします。
直接のきっかけは、周りで競馬にハマってからカメラを始めた人が何人も居て、自分も「やってみたい!」って思ったから。

それと同時に、理由の二割くらいは虹ヶ咲のキャストさんたちにカメラ趣味の人が結構いて、ライブのオフショットやお出かけの写真を楽しそうに撮ってるのがいいなと思ったからでもあったりします。
今こうして新しいことを始めて、楽しいと思えている理由の何割かは、確実に虹ヶ咲というコンテンツのおかげだと思います。そんな感謝の気持ちが、今回採用されたメッセージを通じて届いていたら本当に嬉しいです。
そうして自分の名前がエンドロールに刻まれたことによって、私はこの作品を見るたびにカメラを始めてまだ間もない今の気持ちを思い出すことになるでしょう。
改めてエンドロールのメッセージを見返してみると、自分が採用されたことも嬉しいですが、同じように虹ヶ咲を大好きな誰かが、それぞれの場所で何かを頑張っていることに、胸が熱くなるのを感じました。
これってすごく虹ヶ咲ぽくないですか???

「一緒なら限界を超えられる。だから、やってみたい!」
メンバーにとってもコンテンツにとっても大切な、そんな「初心」を再確認する作品となった「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」。
それは私にとっても同時に、予想だにしない形で自分の「初心」を刻みつける作品になりました。
またひとつ、虹ヶ咲というコンテンツに大事な思い出ができたと思います。それを忘れずに、まだまだ楽しみながら走っていきたいです。

何回だって思い出すのは
簡単になんて消えない So Dreaming Up!

Go Our Way!/ 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

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