突飛

「君、待ちはしないのか?」
彼は言ったが私は何も言わなかった。
それどころか、気にも止まらなかった。
「おい、さすがに怒りますゆえ」
彼は腹が立っているようだが、
私には関係がないと思ったところで、
あの、
まさに、
あれが、
近づいてくるのが見えた。
その大きい足が踏む生活は、
まるでこぼした片栗粉のように。

あれはだめだ。
彼は何をってるのだろうか。
今になっては何も分からない。
過去のことは何一つ覚えてないから。

あれは、
何を言ってるかが聞こえる。
まるで音楽のようだ。
この音楽のよう。
今流れている?
あれのことか流れているのか。

まとまらない頭を抱えて、
彼は走るが、
私は、
まるで「善」のように、
あれに、
絡まっていた。

彼は踏み潰された。
何もかもを超えたあれは、
今を超えて未来で踏んでいる。

踏まれる未来を持った彼は、
もはや何も言うまい。
あれが
あれに
あれ…
あれを踏み潰そう。
あれはもう。
これになった。

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