見出し画像

Changing perspectives on the biogeography of the tropical South Pacific: influences of dispersal, vicariance and extinction

南太平洋の島々について、視点を変えて系統地理を見直してみた:
分散と異所的種分化と絶滅

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1365-2699.2009.02095.x

Kappel, G., Lowe, A. J., and Possingham, H.P. (2009) Journal of Biogeography

ちょっと古いですが珍しいトピックだと思いました。
現在細かな島に分かれている地形において、過去もその地形で異所的な(あるいはケースによっては側所的な)種分化をしてきたと言っていいのか、考えていた時に出会った論文です。
今回はアブストだけ纏めます。

Aim

南太平洋における海洋島の島々(TSP)の系統地理的パターンと、各地の多様性をうみ出した要因についてまとめた。
すでに出版されている論文をもちいて、TSPにおける現在のパターンと、その源になった島、そして過去における移入・侵入がどのように生じたかを検証した。また、絶滅の影響も検証した。

Location

南太平洋の島々。
Table 1 によるとニューギニア(Bain, 1973)、ビスマルク諸島(Wiebenga, 1973)、ソロモン諸島(Hackman, 1973; Petterson et al., 1999)、バヌアツ(Mallick, 1975; Greene et al., 1994)、フィジー(Gill, 1970)、サモア(Cribb and Whistler, 1996)、トンガ(Sager et al., 1994)、ニューカレドニア(Avias, 1973)を対象としたらしい。

Methods

出版された論文と分子解析の結果をまとめた

Results

典型的な島症候群(e.g., 巨大化、飛べなくなる、雌雄異株化)は適応放散と同じくらいに一般的。
また各地の多様性は、島嶼生物学の定説通り、大陸から離れるほど高く、島の年齢が低いand/or島が小さいほど低くかった。
遺伝解析の結果はニューギニア/マレーシア・ニューカレドニア・オーストラリアが主な祖先種供給源の地であると支持した。
数多くの研究が、分散に基づくシナリオを支持しており、それは、数100 km以上 (長距離分散) の場合もあれば、自力で島を飛び越えたり(飛び石)、ときには人間に着いて移動する (ヒッチハイク) 場合もあるとした。
ニューカレドニアからフィジーに祖先種相をもたらした可能性のある大陸断片の東向き移動という異所的種分化説だけが、地理的証拠によって支持されているが、大陸断片上の分類群が移動したという証拠はない。
もう一つの異所的種分化説は、最後の100 Myr (アトランティス理論?) 内の太平洋における主要な大陸陸塊の存在はほとんど支持されなかった。
祖先種供給源地域における系統の絶滅と、絶滅した種がTSPにおいて存続しているケースはおそらく何度も起こっており、系統地理学的データの誤解を招いている。

Main Conclusion

これまで長い間マレーシアは、TSPと共通の分類群が多いことと、高い種多様性のために、主要な祖先種供給源地域と考えられてきた。
しかし,最近の分子研究はニューカレドニアとオーストラリアが代替の重要な供給源地域であることを強く支持している。
また、TSPの現在の生物相に寄与しているのは、異所的種分化ではなく分散(移動・移入)であり、供給元での過去の絶滅が多様性パターンの解釈を曖昧にしている可能性がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?