HAKKOU/リレーエッセイ

暮らしに関するエッセイを世代も住むところも異なる5人がリレー形式で1日おきに更新します…

HAKKOU/リレーエッセイ

暮らしに関するエッセイを世代も住むところも異なる5人がリレー形式で1日おきに更新します。HAKKOU(はっこう)は発光・発酵・発行にかけたプロジェクト名。

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固定された記事

HAKKOU 5人のプロフィール

noteに来てくださり、ありがとうございます。 HAKKOUは5人のメンバーが1日おきに更新する、 リレーエッセイです。 (各エッセイのタイトル末尾に著者名を入れています) …

つながっていく|茉記

おひさまが一段と高くなるころ、額の汗を拭きながら仕事場のドアを開けたら、おおきなバケツいっぱいのハーブが迎えてくれた。 ローズマリー、ユーカリ、スペアミント、キ…

ひとり上手 | K i i

中島みゆきの歌に「ひとり上手」と言う歌がある。初めて聴いたのは中学生の頃だっただろうか。「あなた」とお別れしなくてはならない女性の悲しみを、ひとり上手にはなりた…

「おいしかった」の正体 | 莉琴

わたしは「一食入魂」と言っても過言ではないくらい、毎回の食事を大切にしている。 おいしいものが大好きで、空腹ではなにも手につかなくなる食いしん坊だから、どうして…

母の味に出会う|ひかり

母のペペロンチーノが食べたい、ふとそう思った。 それも、お店のおいしいペペロンチーノを食べた後に、久しぶりに母の味が思い出された。 実家を出て母の料理を日常的に食…

イロトリドリな世界 | saki

何時ぶりだろうか、発熱したのは。 体調を崩すことがあっても、熱が出たのは遡ってみると幼少期以来だった。 子どもと関わる仕事をしていた時、インフルエンザで自分のクラ…

緊張がほどけるエッセンス|茉記

昨年、福岡へひとり旅をした。 あるワークショップに参加するための一泊二日。 少し前に体調を崩したこともあって、新幹線のグリーン車で向かった。 会社員時代の社員旅行…

正解と道 | Kii

夫の実家は、紀伊半島の真反対側にある。距離は概ね200kmほど。 帰省する時は高速道路を使わず、山の谷あいを縫うように走り半島を横断する。途中おいしいもの目当てに寄…

父のハムキュウリサンド | 莉琴

今でこそ、おなかが空くと何も手につかなくなるほどの食いしん坊だが、小さな頃は少食で親から心配されていたそうだ。 あまりにも食べないから、仙人のように霞を食べて生…

紅茶とミルクのあんばい|茉記

朝起きて窓を開けて、夏真っ盛りな空が迎えてくれると、ふと思い出す風景がある。 母がキッチンで朝ごはんの支度を、テレビからはニュースが流れ、出勤前の父が新聞を読ん…

日常の豊かさを教えてくれた茶道|ひかり

まだ始めて3年ほどではあるが、茶道を習っている。 始められたきっかけは偶然でもあるし、必然でもあったように思う。 5年前に生まれ育った場所から九州へ移住をした。 現…

Live | saki

朝、目覚めるとカーテンを開けて陽を浴びる。 ベランダに出ると、ハーブをはじめとした植物たちが育っている。朝一番に伺いみる姿はまるで、子どもたちが「おはよう!」と…

もうひとつの世界【アフリカ旅行記】 | 莉琴

10年くらい前にアフリカのケニアへ旅をした。 首都ナイロビから小さな空港へ行き、プロペラ機で1時間弱移動してホテル近くの空港に着く。 只、そこは空港とはいえ、だだっ…

お日さまとともに | Kii

エッセイのテーマ「暮らしを綴る」に際し今一度、「暮らし」の意味を調べてみることにした。 【暮らし】 1 暮らすこと。一日一日を過ごしていくこと。 2 日々の生活。…

記すということ|茉記

わたしの名前の一文字、「記」。 案外、気に入っている。 10代の頃だったか、父に意味をたずねてみた。 文字通り「記す」という意味が込められていた。 けれど、かえって「…

私の進んだ道|ひかり

自分をポジティブかネガティブかで判断するとしたら、ポジティブだと思う。 あれこれ考え込みながらも、持ち合わせた鈍感さを良いように使って、美味しいものを食べている…

HAKKOU 5人のプロフィール

HAKKOU 5人のプロフィール

noteに来てくださり、ありがとうございます。

HAKKOUは5人のメンバーが1日おきに更新する、
リレーエッセイです。
(各エッセイのタイトル末尾に著者名を入れています)

メンバー5人のプロフィールは以下です。

◾️Kii(きぃ)
大阪府在住。珈琲焙煎業と施設職員。山羊座。
雑木林と海を眺められる家に家族と暮らす。
親戚と食器は多いが、口数と運動量は少ない。

◾️莉琴(りこと)
東京都在

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つながっていく|茉記

つながっていく|茉記


おひさまが一段と高くなるころ、額の汗を拭きながら仕事場のドアを開けたら、おおきなバケツいっぱいのハーブが迎えてくれた。
ローズマリー、ユーカリ、スペアミント、キューバミント、ローリエ…
この日ご一緒した方が、前日に畑から収穫されて持ってきてくださったのだ。
玄関いっぱいにたちこめた、力強い枝ぶりのハーブらしい香りが、涼しさを運んでくれていた。

「薬草と小さな花束」というワークショップを
ライア

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ひとり上手 | K i i

ひとり上手 | K i i

中島みゆきの歌に「ひとり上手」と言う歌がある。初めて聴いたのは中学生の頃だっただろうか。「あなた」とお別れしなくてはならない女性の悲しみを、ひとり上手にはなりたくないと表現していて、当時、子どもからの見上げた目線ではありながら、その世界観をしっかり切なく感じたのと同時に、歌詞のネガティブな意味合いと相反した「ひとり上手」の言葉が放つ、どこか成熟した印象に憧れを感じていた。

その後大人になってこ

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「おいしかった」の正体 | 莉琴

「おいしかった」の正体 | 莉琴

わたしは「一食入魂」と言っても過言ではないくらい、毎回の食事を大切にしている。

おいしいものが大好きで、空腹ではなにも手につかなくなる食いしん坊だから、どうしても蔑ろにできない。
「これでいい」ではなく、
「これがいい」と選んだものを毎回食べる。

さらに、いま目の前にある食事が自分にとって世界で一番おいしいものだと信じている。
無理矢理に思い込ませるのではなく、そういう体(テイ)でいただくと自

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母の味に出会う|ひかり

母の味に出会う|ひかり

母のペペロンチーノが食べたい、ふとそう思った。
それも、お店のおいしいペペロンチーノを食べた後に、久しぶりに母の味が思い出された。
実家を出て母の料理を日常的に食べなくなってもうずいぶんと経つが、年々母の味というものが身に沁みて恋しくなる瞬間が増えてきた。

食べることが大好きで、一日の中の限られた食事のチャンスをいかに満足にいただけるかに全力を尽くしたいし、何よりその瞬間が楽しみでならない。

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イロトリドリな世界 | saki

イロトリドリな世界 | saki

何時ぶりだろうか、発熱したのは。
体調を崩すことがあっても、熱が出たのは遡ってみると幼少期以来だった。
子どもと関わる仕事をしていた時、インフルエンザで自分のクラスの三分の二が欠席したなか、わたしは移ることもなく、皆勤だった。丈夫な身体に生んでくれて両親には感謝しかない。

39℃近くの高熱を出したのは、つい先日のこと。
節々の痛みと熱は二日で症状が治まったのだが、咳、鼻水が今もなお続いている。

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緊張がほどけるエッセンス|茉記

緊張がほどけるエッセンス|茉記

昨年、福岡へひとり旅をした。
あるワークショップに参加するための一泊二日。
少し前に体調を崩したこともあって、新幹線のグリーン車で向かった。

会社員時代の社員旅行以来、福岡は二回目だ。
この町に住んでいたことがある友人に、おすすめスポットを教えてもらった。
居心地が良く、おいしいお店を探し当てる才能に長けている友人からのリストには、魅力的なお店がたくさん並んでいた。
教えてもらっていた喫茶店のひ

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正解と道 | Kii

正解と道 | Kii

夫の実家は、紀伊半島の真反対側にある。距離は概ね200kmほど。

帰省する時は高速道路を使わず、山の谷あいを縫うように走り半島を横断する。途中おいしいもの目当てに寄り道をすることが多く、休憩含めてゆうに5時間はかかっているので、運転するのも任せている方も乗り続けるのは結構大変だ。でも日常の景色にない渓谷を眺めたり、時々獣にも出会えたりするルートは気に入っている。

この距離に関わらずわが家で

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父のハムキュウリサンド | 莉琴

父のハムキュウリサンド | 莉琴

今でこそ、おなかが空くと何も手につかなくなるほどの食いしん坊だが、小さな頃は少食で親から心配されていたそうだ。

あまりにも食べないから、仙人のように霞を食べて生きてるんじゃないかと祖父母に言われ、「カスミちゃん」とも呼ばれていたという。

伝聞表現が続くのはわたしの中に少食の記憶はないからで、唯一覚えているのは親族で百貨店最上階のレストランフロアへ行ったときのことだ。

店の前に並ぶ様々なメニュ

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紅茶とミルクのあんばい|茉記

紅茶とミルクのあんばい|茉記

朝起きて窓を開けて、夏真っ盛りな空が迎えてくれると、ふと思い出す風景がある。

母がキッチンで朝ごはんの支度を、テレビからはニュースが流れ、出勤前の父が新聞を読んでいる。
こどもの頃のいつもの朝の風景だ。
夏になると、母がガラスピッチャーに濃い目にいれた紅茶を氷で冷やしている姿が加わった。
おいしいアイスティーのいれかたはあるけれど、母はいつもこうしていた。
あさごはんのテーブルには、いつもミルク

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日常の豊かさを教えてくれた茶道|ひかり

日常の豊かさを教えてくれた茶道|ひかり

まだ始めて3年ほどではあるが、茶道を習っている。
始められたきっかけは偶然でもあるし、必然でもあったように思う。

5年前に生まれ育った場所から九州へ移住をした。
現在は宮崎に住んでいるが、その前に九州に来て最初の土地、鹿児島で暮らしていた。
茶道とは、その鹿児島での出会いだ。

もともと鹿児島へ移る時に、茶道を始めることは決めていた。
引っ越して生活が落ち着いたら、お稽古場を探して、始められるよ

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Live | saki

Live | saki

朝、目覚めるとカーテンを開けて陽を浴びる。
ベランダに出ると、ハーブをはじめとした植物たちが育っている。朝一番に伺いみる姿はまるで、子どもたちが「おはよう!」と迎えてくれる笑顔のように明るく、エネルギッシュに弾けている。
様子を眺めながら"乾いている"と感じた植物に、水を注ぐ。朝のコップ一杯の水が身体の隅々まで沁み渡るように、土や植物に触れていると、むく、むく、むくむく…と、元気や活力が足元から全

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もうひとつの世界【アフリカ旅行記】 | 莉琴

もうひとつの世界【アフリカ旅行記】 | 莉琴

10年くらい前にアフリカのケニアへ旅をした。
首都ナイロビから小さな空港へ行き、プロペラ機で1時間弱移動してホテル近くの空港に着く。
只、そこは空港とはいえ、だだっ広い土の上に線が引かれただけのようなところだった。

ホテルまでジープに乗って20分程ガタゴト揺られて移動するうちに動物たちが姿を見せ始める。
ゾウ、カバ、キリン、シマウマ、ハイエナ、バッファロー、ジャッカル…それぞれの縄張りはあるもの

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お日さまとともに  | Kii

お日さまとともに | Kii

エッセイのテーマ「暮らしを綴る」に際し今一度、「暮らし」の意味を調べてみることにした。

【暮らし】
1 暮らすこと。一日一日を過ごしていくこと。
2 日々の生活。生計。

【暮】
1 日が西に隠れて暗くなる。夕方になる。ゆうぐれ。
2 一つの時期が終わりになる。終わりの時期。

昔、文明によって電気のエネルギーが家庭に普及するまで、一日の活動とは太陽が巡っている間のことできっと、日々の生活

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記すということ|茉記

記すということ|茉記

わたしの名前の一文字、「記」。
案外、気に入っている。
10代の頃だったか、父に意味をたずねてみた。
文字通り「記す」という意味が込められていた。
けれど、かえって「記す」場からわたしは遠ざかっていった。
わたし以外の家族は書くことが好きで、また長けていた。
‘わたしが書いたものは、いつも選ばれない’
そんな幼い頃のちいさな積み重ねは、ずいぶんと長い間、わたしの中に残っていた。
それでも「名は体を

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私の進んだ道|ひかり

私の進んだ道|ひかり

自分をポジティブかネガティブかで判断するとしたら、ポジティブだと思う。

あれこれ考え込みながらも、持ち合わせた鈍感さを良いように使って、美味しいものを食べている時は痛みを忘れるように、悩んだ末にはとても元気になることができる。
違う角度から見れば抜けているとも言えるのだが、それも良しとする。

ただこれは、私の現在の話である。

子供の頃から割と大人と呼んでもいいような年齢になるまでは、ほとんど

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