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『逆は利』 と 『逆張り』

【逆張り】
株の売買の際に使う証券業界の用語。
世間の常識や主流と反対の策をとること。


ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず…

『方丈記』より 

 α… 川の流れは絶えないなら、もとの水ではない
 β… 川の流れは絶えるなら、もとの水ではない
 γ… 川の流れは絶えないなら、もとの水のまま
 δ… 川の流れは絶えるなら、もとの水のまま


 社会人にとって『成果を上げる』ことは大切なことです。自身の【能力の証明】になりますが、それと同時に【社会への貢献】を表す指標となります。

 【能力の証明】とは、『自分が認める』ことです。
 【社会への貢献】とは、『他人が認める』ことです。

 自分と他人の『双方が認める』ことができる人たちが【大人】と呼ばれています。つまり、大人と呼ばれるためには双方が認める必要があるのです。自分だけが認める仕事をしたり、他人だけが認める仕事をする人は大人とは呼べません。まだまだ成長途中ですね。

 成果を上げようと考えたときに、『逆張り』をする人たちがいます。王道や常識とは『逆』のことをして成果を上げようとしています。逆張りをして成果が出ることもあれば、出ないこともあります。

 では、逆張りをしているのになぜ、成果が出ないのか? 王道ではないにしても古くから逆張りは成果を上げる1つの考え方として根強く残っています。なのに、成果が出ないことがある。

 それは、逆張りだと思っていることが、逆張りではないからかもしれません。

 冒頭で方丈記の一説をα〜δまで、4つのパターンを書いてみました。方丈記の訳はαです。そこから、肯定と否定を『逆』にして作りました。1つ1つ見ていきましょう。

 α は『川の流れは絶えない(否定)のだから、もとの水ではない(否定)→常に水は移り変わっている』という意味ですので、すんなり理解できます。

 β は『川の流れは絶える(肯定)のだから、もとの水ではない(否定)』になります。こちらはちょっと意味が分かりませんね。川の流れが絶えているのですから、水が移り変わるはずがないのに、後半では『もとの水ではない(否定)→常に水は移り変わっている』となっています。前後で文意が食い違っています。

 γ は『川の流れは絶えない(否定)のだから、もとの水のまま(肯定)→水は移り変わらない』となりますが、こちらも文意が食い違っています。川の流れは絶えないのだから、水は移り変わっていくはずですが、『もとの水のまま』と言ってしまっています。

 δ は『川の流れは絶える(肯定)のだから、もとの水のまま(肯定)→水は移り変わらない』となります。これは理解できるでしょう。流れが絶えたら水は移り変わらないので、矛盾はありません。

 ここまでをまとめると、

 α… 真
 β… 偽
 γ… 偽
 δ… 真

と、なります。
 何が言いたいのかというと、逆張りをして成果が出ないのは、βやγをやっている可能性があるのです。βやγは『一部だけ逆』にしていますね。しかし、逆張りとは本来、『全てを逆』にしなければなりません。αに対するδのようにです。δの意味は分かりますが、βやγは意味不明でした。意味不明ですから成果が出るわけないのです。

 『真』『偽』『肯定』『否定』など、「どっかで見たことあるな〜」と思ったらこれ、算数(数学)の【集合】にこんなのがありましたね。【集合】は19世紀に
活躍した数学者のゲオルク・カントールが確立したものです。使い方間違っていますが、ふと思いついたのでやってみましょう。
 その前に、文を簡略化するために『川の流れは絶えない→可流』『川の流れは絶える→絶流』『水が移り変わる→移水』『水がそのまま→止水』として、書き出してみます。

 A… 可流⇒移水(命題)
 B… 移水⇒可流(逆)
 C… 絶流⇒止水(裏)
 D… 止水⇒絶流(対偶)

 さっきのとは全然違う操作法ですね。『真』と『偽』はどうなっているかというと、

 A は『川が流れるならば、水は移り変わる』ですが、川が流れているのですから、水は移り変わるに決まっていますので『真』

 B は『水が移り変わるならば、川は流れる』ですが、水が移り変わるのは、流れだけではなく雨や蒸発でもあり得るので『偽』

 C は『川が流れないならば、水はそのまま』ですが、これも雨や蒸発があるので『偽』

 D は『水がそのままならば、川は流れない』ですが、水が移り変わらないのであれば、川は流れていないので『真』 

 …う〜んと、これ、合ってますかね? まぁ【集合】ではないことに【集合】の操作法だけ使っているので、大目に見てください。A~Dと合わせてα〜δまでを書き直して並べてみると、

 α… 可流⇒移水(真)  A… 可流⇒移水(真)
 β… 絶流⇒移水(偽)  B… 移水⇒可流(偽)
 γ… 可流⇒止水(偽)  C… 絶流⇒止水(偽)
 δ… 絶流⇒止水(真)  D… 止水⇒絶流(真)

です。よく見てみると、

 α〜δ…
  文の前後は変えない(◯流⇒◯水)で、可と絶・移と止を『逆』にする。
 A〜D…
  文の前後を『逆』にして(◯流⇒◯水・◯水⇒◯流)、可のときは必ず移・絶のときは必ず止。

となっています。
 では、【因果】の視点から見てみましょう。文の前後を『原因』と『結果』として見ると、『真』は因果関係が成り立っていますが、『偽』は因果関係が成り立っていません。ここで『真』であるδとDを並べてみると、

 δ… 絶流⇒止水(真)  
 D… 止水⇒絶流(真)

 前後を入れ替えて、原因と結果を《逆転》させていますが、どちらも『真』です。つまり、原因と結果は入れ替えても成り立つことがあるのです。反対に、βやγのように原因と結果を入れ替えなくても、肯定と否定の使い方によって『偽』になります。

 さて、え〜と…なんの話でしたっけ? あ、そうそう『逆張り』です。言いたいことは『逆張り』をするときは、なにを逆にするのかをちゃんと見極めてくださいということです。
 肯定・否定を逆にするのか、因果を逆にするのか、あるいは他のなにかなのか…などを考えて逆張りしないと『偽』になってしまうことがあるので、成果につながることはないのです。

 “対角線上に入れ替える”イメージが大切です。



ではまた〜🎵
エンディングは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも使われた名曲です。
Redbone - Come and Get Your Love (Single Edit - Audio)


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