オンボーディングは、「Must→Can→Will」の順番で

Will,Can,Mustというフレームワークがあります。
人事制度やキャリア開発でよく使われていますね。

Will…「やりたいこと(自分のニーズ)」
Can…「できること(付加価値)」
Must…「すべきこと(やって当たり前のこと)」

と定義できます。
Will,Can,Mustの3つをそれぞれを円とするなら、その3つが重なる領域が広いほど、自分のニーズが満たされ、付加価値によって会社や顧客、社会に貢献でき、やって当たり前のことも苦痛でなくなるという解釈になるでしょうか。

さて、このWill,Can,Mustですが、順番が大事なのです。
実は就職・転職時に会社を選ぶ際は、Will→Can→Mustの順番で考えてよいのですが(あるいはWill→Must→Can)、入社した際には、この順番は逆になるのです。

1, 新卒・第二新卒(社会人歴3年未満)で入社した場合

新卒・第二新卒、あるいは正社員歴がない状況で入社した場合は、基本的にはCan(できること、付加価値)がない状態ですから、まずはひたすらMust(すべきこと)をこなすことになります。

特に新卒社員は、社会人として当然持っているべき習慣、態度、行動(挨拶、遅刻しない、身だしなみ、顧客とはっきり話せる、報告等)の「やって当たり前のこと」すらできないわけですから、まずはここがしっかりできるようになることが第一歩です。Mustを飛ばしてCanを高望みしたところで、結局礼儀作法が見についていなければ信用を失い、仕事の機会に恵まれずに「できること(付加価値)」が伸びない結果となります。こういう人も広義の意味で「実力不足」といえます。

Mustがしっかりできると認められると、信用のハードルを一歩超えられるので仕事の機会に恵まれます。そうすることではじめてCanを積み上げ始めることができます。
しばらくは付加価値を磨く、強みを活かす以前にMustを求められる毎日となりますが(Mustがなくなることはない)、いずれCanの円は大きくなります。付加価値がつけば定量目標を達成できるようになるわけです。
つまり、MustよりもCanの円が大きくなった時、はじめて会社に貢献できるようになります(それ以前ははっきりいえば赤字社員ということです)。
新卒・第二新卒で熟練が必要な職種の場合、時間軸で言えば、Canが大きくなるのは早くても1年半から2年はかかります。
Will(やりたいこと)は十分会社に貢献できる、活躍できるようになったらはじめて考えます。社会は甘くないので、会社というコミュニティで最低限求められるMustもこなせず、付加価値のないCan不足ビジネスパーソンは、自分のニーズを簡単に聞いてもらえないと考えるべきでしょう。
というよりも、Willというのは、MustをこなしてCanを育てていく中で、はじめてわかってくるものです。自分が所属する会社やコミュニティに貢献することに集中するべきで、それができていないのならWillを考える暇など1秒もないはずなのです。

2, 中途入社した場合

中途入社(キャリア採用)の場合でも、順番はMust→Can→Willになります。
どれだけCan(スキルや付加価値)がある人材でも、まずは入社した会社のルールやカルチャー(Must)を覚え、実践ができることが第一になります。これを飛ばして活躍や貢献はできないのですから。郷に入れば郷に従え、ですね。

Mustを卒業する一つの目安は3か月~半年です。逆に言えば、どれだけ優秀な人材でも入社してすぐにフル稼働、というのは難しいのです。
熟練が必要な職種の場合は、半年は必ずかかるでしょう。すぐに活躍して実力を示したい気持ちはよくわかりますが、まずはMustをしっかり学びこなしてください。

3か月~半年経過しMustを卒業したら、前職の経験も活かしつつCanの幅を広くしていきます。Must→Canの順番を間違えなければ、信用をもらえて仕事のチャレンジ機会が増えます。
当然、キャリア採用の場合はCanの円が大きくなるのも早いですから、その場合は、上司や人事とWillの話し合いをするのは、早期にしてもよいでしょう。目安としては1年経過前くらいからです。

アクション1, 上司との月一での1on1ミーティング

1on1ミーティングで、Must→Can→Willの話し合いをしていきます。上司からフィードバックをもらい、Mustができているか、Canの進み具合はどうかというところを重点に行います。
MustができていなければCanの育成には進めないので、ここに集中してもらいます。
Canの進み具合は、スキルチェックなどでフィードバックをもらうとよいでしょう。ただしスキルが上がっても成果が出なければ意味がないので、スキルと評価は連動しないことは理解しておきましょう。
付加価値を活かし、目標達成ができるようになったらWillの話し合いもしてみてください。

アクション2, WillはMustとCanができてから考える

大切なのは、上司は部下がMustやCanが十分でないのに、Willの話をしてはいけないということです。
厳しいようですが、会社に貢献ができていないのに、Willを一緒に考えるのは本人のためにもなりません。目の前のやるべきことに集中してもらい、目標を達成させるのが上司の仕事です。

まとめ

Will,Can,Mustのフレームワークは、とても使い勝手がよく、優れた考え方です。しかし、順番を間違えると、本人も、会社も、顧客も幸せにはなりません。
Must→Can→Willの順番をしっかりこなして、本人はフィードバックを活かして活躍し、上司やボードメンバーはよく部下を見て、順番を守らせてみてください。
必ずよいチームができていくはずです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?