貫名菘翁書「文選抄」
夫君子小人,類物之通稱。蹈道則為君子,違之則為小人。屠釣,卑事也;板築,賤役也。太公起為周師,傅說去為殷相。非論公侯之世,鼎食之資,明敭幽仄,唯才是與。(『文選』沈約「恩倖傳論」)
屠釣卑事也板築賤役也太公
起為周師傅〻說去為殷相
庚申之秋抄書 菘翁
屠釣は卑事なり。板築は賎役なり。太公起て周師と為り傅す。傅説去て殷相と為る。
屠釣=畜類を殺し魚を釣る。
板築=土塀や城壁を築く土木工事をいう。
太公=太公望呂尚のこと。
傅説= 殷の高宗に仕えたといわれる名宰相。高宗が夢に見て、土木工事をしている者の中から見つけだしたという。〔史記、三〕
庚申は、1860年(万延元年)、菘翁83歳。この歳、松居遊見叟碑稿四種を書いている。
本作には「傅」に二の字点が付いているので、書き下し文のように読んだ。菘翁の写し間違いか、こういう本文の版があったのかは不明。
書風は枯樹賦に似ているような気がする。
横33.5cm×縦129cm 絹本。
ヤフオクの商品説明
中古【模写】<貫名海屋>書 菘翁 儒者 江戸時代後期 箱無し
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ヤフオクは、画像と説明だけで入札する。どんなに素晴らしい、と思っても印刷だったということはある。今回は、そもそも【模写】としての出品。入札したのは自分だけ。見かけたことのない冠冒印だけど、文章も面白いし、個々の字もいいし、前字を受けて自然に流れている行の構成も素敵なので入札。荷を解いて確認すると絹本に肉筆だった。
絹本にはいいものが多いとも聞くけれど、さあて?菘翁真筆か否かはさておき、役立ちそう。
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