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#005 札幌北斗高校演劇部…キリンとの旅①

 2016年11月、我々は『猫を飼う』という芝居で旭川で行われた全道大会に出場していた。またその話は後日、書くことになるのでここでは詳しく書かないのが、今まで何作か書いてきた中でも好きなお話の一つだった。

ただ、コンテストの作品としては芳しい評価を受けられなかった。

いつか小さな小屋で再演したい作品である。
 
 この芝居の稽古が始まる夏休み頃、校舎の建て替えでずっと使っていた稽古場であった講堂の使用ができなくなった。代りの稽古場として、取り壊される北校舎に遅れて取り壊される予定の西校舎の4階があてがわれた。「4階の教室好きに使っていいよ」という学校側の言葉であった。とりあえず1つの教室を倉庫兼部室。ひと教室分あるのでかなり収納できた。作業場はこの一角と廊下。とりあえずこの倉庫にあるソファーやテーブル(演劇部ではこれは備品ではなく、立派な大道具でもある)、テレビ、ビデオなどを置き、なんなら家庭用ゲーム機でも繋ごうか?冷蔵庫も置けるぞ、などかなり自由度は高かった。隣の教室は稽古場。さらにその隣も自主練習場兼ミーティングスペース。
取り壊す予定なので釘を打とうが、色を塗ろうが何しても良いのだ。

教室を自由に使ってよいということで早速看板を作った

この環境が何年も続くなら、おそらく壁を黒く塗り、窓をつぶし、天井には鉄管を張り巡らし照明機材などを吊ったんだろう。教室の壁を抜けたら最高なのだが流石にそれは断られた。それでも2016年はそんな環境で稽古していた。

倉庫には、過去に使われた大道具小道具が置かれている
稽古場で稽古風景

 2017年3月、卒業生が巣立って部員は2年生女1名、1年生女子3名の計4名。新入生が入らないとちょっときついね、などと話しながら、旧校舎で春の新入生歓迎公演の稽古していたが、主役を務めるはずだった唯一の2年生が突如退部した。残された1年生は唖然としていたが、仕方ない。彼女らもその時は腹が座っていた。

「さてどうしようか」
「とりあえず、私が部長やります!」
「部のTwitter、作ってもいいですか?」
と彼女らの切り替えはとても早かった。

こうして女子3人と顧問の新年度スタートだった。

 今年の予定は稽古場として与えられた旧校舎が夏前に取り壊される事が決定しており、その準備のため旧校舎の荷物を整理しなくてはならない。整理といえば聞こえがいいが、ほとんど捨てることとなる。要するに取り壊し新たな器が出来るまで、保管場所がないからだ。演劇部は予算が少ないため作った装置はできるだけ使い回ししており、わずかに残った予算で毎年少しづつ木材を購入しストックしていた。そんなものも全て処分しなくてはならなかった。4月、5月の部活動の主な活動はその片付け。

 4月に希望に胸を膨らませ入部してくれた新入部員が果たしてついてきてくれるのか、が甚だ疑問だった。

そして旧校舎が解体されれば、9月の中旬まで稽古場が確保できないのだ。

旧校舎に作った部室

 2017年は不安要素しかないマイナスの出発でもあった。

そんな中でしたが、新入部員が男女ともに例年になく入部してくれました。彼らがのちの演劇部の中核として大活躍してくれる代となるとは、その時はまだ誰も知らない。

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