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乙武質問箱「命より大切なものはありますか?」

先日、長崎に行ってきました。前回の投稿で書いたように、『沈黙—サイレンス—』という映画に衝撃を受けたからです。いたって単純な男です。だけど、どうしても現地で感じておきたかったんです。

私が訪れたのは、昨年7月に世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一部。長崎市の大浦天主堂や、五島列島にある堂崎天主堂などです。

せっかくなので、上記リンクの他にもいくつか写真を貼っておきますね。

現地を訪れる前に私自身が楽しみにしていたのは、観光地としても名高い教会群でした。ですが、実際に訪れてみると、より胸に迫ったのは彼らが責め苦に遭わされた牢屋であり、それらの迫害によって命を落とした人々の墓碑でした。

私自身がクリスチャンであれば、やはり信仰の地であり、そのシンボルである教会に心を打たれたのだと思います。しかし、特定の信仰を持たない私にとっては、やはり彼らが苦難に遭い、命を落としたという事実こそが強烈に心に残ったのです。

そして何より強く感じたことは、事前に映画を観ておいて本当に良かったということでした。もしも映画を観ずにこの地を訪れていたら、「憎き為政者(江戸幕府や明治政府)」と「不憫な信徒たち」というわかりやすいステレオタイプに絡め取られ、近視眼的な物の見方に終始してしまっていたように思うのです。

映画を観た上で長崎の地を訪れた私の頭に浮かんだ疑問は、「なぜ彼らは信仰を棄てなかったのか」ということでした。

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