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人の心を揺さぶるものは、やはり心の奥底にある”言葉”と”想い”だ

心を揺さぶる音楽はいつだって
自分自身に問いかけるものだ。

「真実(ホント)の瞬間はいつも、死ぬほど怖いことだから、逃げ出したくなったことは今まで何度でもあった」(「終わらない歌」)
とTHE BLUE HEARTSはシャウトし、
「どんなにあざといペテン師も、自分に嘘はつけない」(「POISON」)と布袋寅泰はギターをかき鳴らした。

中島みゆきは「私の敵は私です」(「ファイト!」)と歌い、
マイケル・ジャクソンは”世界を変えたいなら、まず鏡の中の男から”(「Man In The Mirror」※意訳)と説いた。

私たちはこうした「言葉のかけら」を
心の奥底に大事にしまい、支えにして生きている。
※少なくとも私はそうだ。

個人的には、順風満帆な人生を送ってきた人に
心を揺さぶるような歌詞を書くのは難しいと思っている。

人知れず悩みもがき苦しんだ自分がいて、
そんな自分を奮い立たせ、救った”想い”が
やがて言葉となってメロディーに乗った瞬間、
心を揺さぶる歌が出来上がるのではないか、と。

伊藤羊一さんと作った書籍「ブレイクセルフ 自分を変える思考法」は、
伊藤さんがサラリーマン時代に苦しんだ実話&体験をベースに、
どうそれを乗り越えたのか(完全に乗り越えていないものもあるが)を、
”一枚のアルバム”を作るようにまとめたものだ。

そのアルバム作りの詳細は、別の機会に書ければ、と思っているが、
この“ブレイクセルフ”(著者の造語)に関する伊藤さんの考えがよく出ているのが本書の「はじめに」だ。
今回はこの「はじめに」を伊藤さんの許可のもと、
全文ノーカットで紹介したい。

それに続く本文は、
数々の”もがき苦しんだエピソード”を5つのテーマに分けて
1つひとつ歌詞を書くようにまとめた構成になっている。
読んだ人がたくさん自分自身に問いかけられるようにした。

自分も
「せめて“ひとかけらの言葉”でもいいから届け!」と願い、
伊藤さんの言葉を束ねたつもりだ。

長い前置きになったが、伊藤さんのニューアルバムの「オープニング曲」を是非お読みください。

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         はじめに


結局、このことを話さなければいけないんじゃないか。
そう気づいたのはいつのことだっただろう。

インターネットの普及のおかげで、
誰もが自分の求めている情報をピンポイントで、
かつ大量に手に入れられるようになった。
インプットについては、これほど恵まれている時代はない。

けれども、毎日大量のネットニュースを読み、
バズったSNSのエントリーを読み、
「すごい」ビジネスパーソンのブログを読み、
ビジネス書もたくさん読み……と大量のインプットをしながらも、
それは人生の充実には必ずしも直結しない。
むしろ、大量にインプットしながら、モヤモヤすることは多い。

他人のアウトプットを消費して、
「すごいな」「役に立つな」「おもしろいな」と思いながら、
その反面で、
「でも、自分にはアウトプットできるものが何もない」
「この本の著者はすごい。それに比べて、自分はすごくない。イケてない」
「自分には表現するだけの価値がない。自分は何者でもない」
そんなモヤモヤを、心の中に降り積もらせてることもあるだろう。

デジタルの力で人とつながることは容易になった。
では、誰もが他人といいつながりを作れているのか。足りないところを補い合い、自分の力をぞんぶんに発揮できるようになっているのだろうか。

残念ながら、そうでもない人も多いように見える。
「すごい人」を中心にして、ネット上で、あるいはリアルで、コミュニティを作る。「すごい人」を教祖のようにまつりあげてついていく。
それはある意味で心強いかもしれない。

でも、やっぱりモヤモヤがたまっていく。
「自分は人についていくことしかできないんだろうか?」
「自分は、自分の人生を生きていると言えるんだろうか?」
「やっぱり自分は、何者でもないんじゃないだろうか……」

モヤモヤを溜め込んでいても、がんばっていないわけではない。
むしろ、向上心があって勉強熱心だったりする。

本を熱心に読んで、ウェブ上でも常に情報収集をして、
勉強会やオンラインサロンにも積極的に参加する。
一生懸命な人たちが、モヤモヤしたり、「自分はすごくない」と思っていたり、「自分は何者でもない」と感じている。それでいいのか?

いいわけがない。

みんなが充実して、笑顔で生き生きと自分の人生を歩いて欲しい。そう、強く思う。
そして僕は、そのきっかけを摑みつつある。

だから、僕はこの本を書くことにした。

この本は、今までたくさんのビジネス書や、
自己啓発書を読みながら、
モヤモヤをつのらせてきたあなたのための本である。

あなたにも、表現することはある。あるに決まっている。
あなたは、他の誰でもないあなたである。
あなたが自分の中にあるものを表に出せば、それは世界にひとつしかない、世界をよりよく変えていくための貴重な種になるのだ。

だから、表現しよう。アウトプットしよう。

あなたにもアウトプットするべきものは、たくさんあるし、できる。
僕は表現者として仕事をしている。
ビジネスパーソンという言い方もできるかもしれないが、
想いは、「表現者」だ。

もともと、金を稼ぐとか、収益を上げる仕組みを作ることにさほど興味が持てなかった。銀行に勤めていたこともあるのに、お金の計算は苦手である。
足元にある課題に取り組み、もがいているうちに、自分自身を表現していた。

Yahoo! アカデミアやグロービス経営大学院で社会人教育にたずさわる。あるいは自分の著作を出す。
メディアで発言する。イベントや講演で登壇する。
……といったことを通じて、自分の言葉を伝える。
自分の言ったことが世の中に浸透していって、みんなが幸せな気分になれる。

そんな方法で他人の役に立ちたい、と思って表現する。
表現者として仕事をしている、と言っても、他のビジネスパーソンの仕事と違うわけではない。
世界を変えたい、みんなを幸せにしたい、という想いは同じ。

たとえば経営者は、それを事業を通じてやる、
デザイナーは、デザインという仕事を通じて幸せを追求する。
僕は、言葉を通じてやる。

僕の言葉は、自分自身のことをベースにする。
仕事ができない、仕事が怖い「イケてない」サラリーマンが、
苦しみながらなんとか自分を活かそうとしてきた、
そんな自分自身が素材になる。
僕が表現者として仕事をしているというのは、そういうことだ。

自分の仕事を「表現活動」と考えるようになったのは、学生時代にバンドをやっていたせいもあるかもしれない。
いまだに僕は、ミュージシャンには憧れがある。
というより、「自分もミュージシャンだ」と思って仕事をしている。

僕の言葉にはメロディーはない。楽器も使わない。けれど、僕の言葉は歌だ、と考える。
講演や講義は、ステージだ。
アルバムを作るつもりで、本を作る。
サザンオールスターズの桑田佳祐さんのように、
Mr.Childrenの桜井和寿さんのように、
歌や言葉で、人を勇気づけられたらいいな、と思う。

僕がこの本で言いたいことは、
「モヤモヤをエネルギーに、自分を表現しよう」
ということだ。
そのモヤモヤは、
「自分を知り、表現したい」
という欲求だと思う。

僕が今やっているように、本を書きましょう! とか、メディアを通じて言葉を広く伝えられるようになろう、という意味ではない。
もちろん、そういう表現がやりたい人はどんどんやればいい。ただ、表現の手段は、言論などだけではない。

誰もが、「仕事」という表現手段を持っている。
さっきも言ったように、経営者がビジネスを通じて自分の理想を実現しようとするのは、表現のひとつの方法だ。
ミュージシャンが楽曲を通じて表現をするのと同じだ。

経営者だけではない。
人に雇われて働く会社員だって、自分の想いを持っていて、それを実現するために仕事をする。
それが自己表現になる。
たとえば、営業マンは、自社製品を題材に自分を表現する。コールセンターで働く人は、お客様の悩みを解消するために、表現する。
仕事で自分を出すことができるようになれば、モヤモヤしなくなる。

たとえば、職場で自分の意見をちゃんと言えるようになる。
業務上の判断で、自分が正しいと思える選択をできるようになる。
正しいと思えない判断に抗えるようになる。
やれと言われた仕事だけでなく、自分でやりたい仕事もやれるようになる。

自分の理想に向かって世界を変える。
そのために、自分の職務の範囲内で、人を動かす。モノを、お金を動かす。
権限の大小なんて関係ない。
ライブハウスでプレイしようが、スタジアムでコンサートを開こうが、演奏の価値とは関係ないように。
どんな仕事も、同じなのだ。

「モヤモヤしている人は、どうすればそんなことができるようになるのか?」と知りたいだろう。

結論を言ってしまえば、

「とにかくステージに立とう」
「どうしたらできるようになるか、じゃなくて、とにかく自分の中にあるものを出してみよう」

ということだ。

もちろん、この「結論」にはあまり意味がないことはわかっている。
とりあえずやってみる、下手でもいいからステージに立ってみる、それができないからモヤモヤしているんだよ、と言いたくなるだろう。
わかる。僕も、ずっとステージに上がれなかった。

自分の価値を見つけたい。それを形にしたい。
でも、自分をさらけ出すのは怖い。
自分が何かしたところで、何かを言ったところで……誰が見てくれるだろうか。誰も聞いてくれないんじゃないか。拒絶されるのではなかろうか。

そもそも、自分には表現するような内容、コンテンツがあるんだろうか……。と、悩む。
僕も、同じ恐れを抱いていた。
だから自分が表現者になるなんて思っていなかった。
仕事を始めて30年が経ち、今、こうして表現を仕事にしている。

だから、あなたに伝えられることがあるはずだと信じている。
あなたが何を表現すべきか、どんな表現手段を選ぶべきか、については教えられない。
その答えは、あなたの中にしかない。

僕が伝えられるのは、僕自身がどうやって表現者になったのか、だけだ。
そして、自分の体験を語りながら、それにからめて、あなたが自分の答えを見つけるための「問い」を投げること。
それが僕にできることだ。
それが、この本だ。

もしあなたがモヤモヤを感じているなら――お付き合いいただければと思う。

                            伊藤羊一




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