見出し画像

海の白鳥


なんで私だけと何度思ったことか。
母親や、その男にぶたれ引きずられる度に無抵抗に謝っては部屋で何度腕を噛んだか。
泣き疲れて祖母の家に行く。
帰り際薄暗い玄関で抱きしめられた。
あんただけが辛いんじゃないよ、と言われ
ハグしてくれたあの温もり。
いつも子供らしい精力も無く、現実に打ちひしがれる私に祖母はいつも手を伸ばしてハグしてくれた。
自分だけじゃない、強く生きなさい。
玄関でのあの瞬間がミッドナイトスワンを観るとフラッシュバックする。
今でも振り上げられる腕と差し伸べられる手に臆病なまま、強く生きるには現実は心細い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?