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コモ活シリーズ---コウモリは最強の飛行動物(だと思う) (コウモリの基礎知識⑧)


タイトルに異議のある方もいるでしょうが、物理的な力の話ではありません。力では、もちろんワシやタカが最強です。
(上の画像は記事に出てくるのと同じ種類のコウモリ。テロップは動画から。出典 )
●コウモリに興味のある方は、コモ活シリーズの他の記事もご覧下さい。


白鳥、ガンなどの渡り鳥が北に帰りました。長距離移動する飛行動物といえば、多くの人は渡り鳥を連想するのでは? 白鳥などはガタイも良く「タフそうだし長距離移動も可能だろうな」と思いますよね。

では、体長10cm未満、体重わずか7グラムの動物が同様の長距離飛行をすると聞いたら驚きませんか? ∑(・Д・・)
近くに定規と1円玉があれば確認してみて下さい。10センチと7グラム。
7グラムは1円玉7個

たったこれだけ!


コモ活シリーズでは、飛行動物の公式最速記録がメキシコオヒキコウモリの時速160km(水平飛行時)なのを書きました(ちなみに、ハヤブサを含めて飛ぶのが速いと言われている種類の鳥の平均時速は、112km)。 
メキシコオヒキコウモリのスピードは別格で「ジェット機」と呼ばれています。しかも彼らは体重が10グラム程度しかない小さなコウモリです。

しかし今回ご紹介するのは、それより更に軽い、たった7グラムの1歳のコウモリ(ナトゥージスアブラコウモリ)が、2400kmの大移動をした実例です。ナトゥージウスアブラコウモリは、赤茶色の毛皮を持つヨーロッパ最小サイズのコウモリです。

記事に出てくるのと同じ種類のコウモリ。この小ささ! (出典)


最長記録、2400キロを大移動したコウモリが見つかる
体重わずか7グラムの1歳のコウモリ、ロシアからフランスまで大移動


「2009年秋、フランスアルプスの村のそばにある貯水槽の中でコウモリの死体が見つかったと聞いたとき、デスメ氏は興味を覚えた。村民が撮影した写真を見ると、コウモリには「ロシア」という言葉と番号が刻まれたアルミ製のバンドがつけられていた。デスメ氏は長い年月をかけて調べ、ロシア北西部のダーウィン自然生物圏保護区でこのバンドをコウモリに取りつけたロシア科学アカデミーの研究者、デニス・ワセンコフ氏を探し出した。

体重わずか7グラムの1歳のメスのコウモリが、ロシアからフランスアルプスまで、2486キロメートルを飛んだことが判明した。これまで記録された中で、もっとも長い距離を移動したコウモリだ。この研究結果を示した論文が、2022年4月21日付けで学術誌「Mammalia」に発表された。」(出典)

文中に出てくるアルミ製バンドとは、研究者が捕獲時に取り付けるもの。
捕獲場所、捕獲年等が記されていて、別の研究者はそれを見て判断します。

日本国内ではアブラコウモリよりやや大きいヒナコウモリが、青森から京都まで移動した例が確認されています。それはバンドを付けていたため判明しましたが、バンドを付けてない個体が多いため、実際にはもっと遠くまで長距離移動している可能性があります。

渡り鳥は多数集団で移動するものが多いですが、コウモリの場合は一部を除き、少数での移動か単独移動が多いと言われます。


更に驚きの事実。コウモリは哺乳類最速の可動筋肉の持ち主で、ノドの筋肉をなんと、1秒間に200回以上 !動かすことができるんです。
人間がまばたきする間に200回以上!(゚Д゚ノ)ノ


こんなに小さいのに超高周波を自在に駆使し(エコーロケーション)、高性能レーダーを備え、凄い飛行能力とスーパー筋肉を持ち、知能も高い。
『シートン動物記』のシートンは、昆虫食コウモリを「進化の最高傑作」と言いました。
 
コウモリが保有している菌はネズミよりはるかに少なく、噛まれて狂犬病になるリスクも動物の中で低い部類です(海外の研究)。しかも可愛い(๑´ω`๑)♡

しかしコウモリに対する一般的な偏見や無理解はまだまだ根強く、環境の悪化や風力発電による殺傷、餌になる昆虫の減少などもあり、世界でも日本でもコウモリの6割は絶滅が懸念されています。

★世界最小の哺乳類をご存知ですか?


東南アジアに生息するキティブタバナコウモリ(絶滅危惧種) 
体長2センチ。2グラム!
(赤ちゃんでなく大人)ちゃんと飛びます

一般人が素手でコウモリに触るのは厳禁

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★どこにも所属しないコウモリ愛好家です。誤解されがちなコウモリという素晴らしい動物の魅力を広めたくて本を書いたり、ラジオ番組で取り上げたり、ミニ講座で話をしたりしています。専門家や研究者ではないので、個人的に愛好している海外の種類について、海外の専門家に訊きながら調べています。 コウモリがお好きな方、繋がりませんか?  
コウモリを正しく知ろう、守ろう。 

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