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(書評) ブックレビュー

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子供の頃から読書が一番の趣味。ほぼ毎日色んな本を読んでいます。今まで読んできた多数の本から、好きな本やおすすめ本の一部です。有料記事はnote未登録の方も購入可能。本が大好きな方… もっと読む
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記事一覧

(書評) 人生の先輩の、いぶし銀の輝き---『過疎の山里にいる普通なのに普通じゃない すごい90代』『80代で見つけた 生きる幸せ』

この2冊は高齢の身内にプレゼントするために買ったのだけど、パラパラ読んでいるうちに私のほうが引き込まれてしまった。「80だの90だの、まだまだ先で実感が湧かない」人が多いと思う。でも例外なく誰もがいずれその年代になる。高齢者といっても様々な人がいるのに、老害という浅薄な言葉で括りたがる今の時代にこそ、若い世代にも読んでほしい2冊。 上の絵は、平凡な農家の主婦が76歳から自己流で絵を描き始め、80歳で初の個展を開き、101歳で亡くなるまで1600点以上の絵を描き続けた、アメリ

(書評) 美しく優しく香り高い、小さな物語---『雪のひとひら』

主に旧作を中心に、おすすめの本を紹介しています。旧作でもマイナーでも良い本は沢山あるので、そういう本が目に触れるきっかけになればと思っています。 ★『雪のひとひら』 ポール・ギャリコ (新潮文庫) ポール・ギャリコは私の大好きな、敬愛してやまない作家の一人。 スポーツライター出身の彼の文章は平易で読みやすいけれど、繊細で深い。 面白くてヒューマニズムに溢れ(弱者の立場に立った視線など)、温かい。 演劇・映画化された『七つの人形の恋物語(『リリー』)』、映画化された『ポセ

(書評) 長く厳しい冬の後に巡りくる、春の歓び---『長い冬』(大草原の小さな家シリーズ)

主に旧作を中心に、おすすめの本を紹介しています。旧作でもマイナーでも良い本は沢山あるので、そういう本が目に触れるきっかけになればと思っています。 上の写真(出典) ★「長い冬」<ローラ物語1> ローラ・インガルス・ワイルダー(岩波少年文庫) 中年以上の人なら、NHKで放送していた『大草原の小さな家』を覚えている人も多いだろうし、ファンも多いのでは? 何シーズンも(何年も)作られたし、DVDボックスも出ている。今も世界中に熱心なファンがいるそうだ。 私もテレビ版は好きで見

(書評) 犬を愛するすべての人に---絵本『いぬ』

主に旧作を中心におすすめの本を紹介していますが、今回は割と近年(2020)の絵本です。(上の写真はジャーマン・シェパードの子犬 出典) ★ 「いぬ」 ショーン・タン(絵・文)  (河出書房新社) 子供の頃、ジャーマン・シェパードの子犬を飼っていた。 毎日夕方に一緒に散歩して、休日は同じ布団でお昼寝をした。 利口で活発で家族に忠実で、お風呂とドライブが大好きな子だった。 ほんとうに可愛くて、とても愛していた。大事な家族の一員だった。 でもある日突然、あっけなく死んでしまっ

(書評)未来の地下都市に生きる人間たちの自由への闘い---『ウール』『ダスト』

主に旧作を中心に、おすすめの本を紹介しています。旧作でもマイナーでも良い本は沢山あるので、そういう本が目に触れるきっかけになればと思っています。 (上の写真は地の底に届くほど長いモスクワ地下鉄のエスカレーター 出典) ★「ウール(上・下)」「ダスト(上・下)」 ヒュー・ハウイー (角川文庫) カッパドキア。トルコの史跡・観光名所で私は訪れたことがないけれど、行けたら行ってみたい場所の一つ。 カッパドキアでは、これまでに8つの都市と小規模な集落の跡が発見されている。特にデ

(書評) 奥多摩の大自然と人情。異色の警察小説---『駐在刑事』『尾根を渡る風』

主に旧作を中心に、おすすめの本を紹介しています。旧作でもマイナーでも良い本は沢山あるので、そういう本が目に触れるきっかけになればと思っています。 ★「駐在刑事」「尾根を渡る風」 笹本稜平 (講談社文庫) 行楽の秋、読書の秋---。どこかに行きたいけれど難しいという方にも、ちょっとした小旅行気分と、しっとりした読後感が味わえる本をご紹介。 何を隠そう(?)私はテレビ東京のドラマシリーズ「駐在刑事」のファンなんです。たまたま旅先で見て気に入り(当地では放送していなかった)、

(書評) 人間を信じたくなる、痛快で爽やかなリベンジ長編---『誇りと復讐』

主に旧作を中心に、おすすめの本を紹介しています。旧作でもマイナーでも良い本は沢山あるので、そういう本が目に触れるきっかけになればと思っています。 ★「誇りと復讐(上・下)」 ジェフリー・アーチャー (新潮文庫) 前に「現代の欧米のエンタメ系小説家で最も資質に恵まれているのはジェフリー・アーチャーとスティーヴン・キングではないかと思う」と書いたことがある。ジャンルは違えど、どちらも稀代のストーリー・テラーだから。 キングはホラーの帝王だが、『スタンド・バイ・ミー』のような

(書評) 短編小説の醍醐味がギュッと詰まった傑作集----『鳥』

以前ブログ掲載した記事に加筆しています。旧作を中心におすすめの本を紹介しています。 ★「鳥ーデュ・モーリア傑作集」 ダフネ・デュ・モーリア(創元推理文庫) 「特に好きというわけじゃないけど実力を認めるに吝か(やぶさか)でない」人は、誰にでもいるのでは?  たとえば「あの歌手の声や歌い方はあまり好みじゃないが、歌の上手さは群を抜いている」「この画家のタッチや色使いはあまり好みじゃないが、人物画を描かせたら当代一だと思う」等々。 私にとってダフネ・デュ・モーリアという人は、

(書評) 心を浄め、癒やす光---『光』

旧刊を中心におすすめの本を紹介しています。 旧刊でも、メジャーでなくても、素晴らしい本は沢山あるので、そういう本に触れて頂くきっかけになればと思います。 ★ 「光」 日野啓三 (小学館 P+D Books) この数年、日野啓三の小説ばかり読んでいる。 ずっと前に『天空のあるガレージ』『抱擁』等を熱心に読んでいた時期があったが、その後は別の作家に興味が移り、気がついたら25年位ご無沙汰 していた。 数年前、様々な作家の秀作エッセイを集めた「ベスト・エッセイ集」を読んでいた

(書評) 地球のために何が出来るのか---「植物と叡智の守り人」

ねがわくは、あなたたちが心をいっぱいに開くことを。 空に。大地に。太陽に。月に。 一つの完全な声に。それがあなたたちなのだから。 そうすれば、わかるはずだ。見ることの できないもの、 聴くことの できないもの、知ることの できないものが、 まだまだあるのだということが。    ジョイ・ハージョ(オクラホマ先住民出身の詩人)

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(書評) 「水のない川 暗渠でたどる東京案内」

★「水のない川 暗渠でたどる東京案内」 本田 創 (山川出版社) 暗渠(あんきょ)とは、かつて流れていた川や水路の痕跡のこと。 私が初めて暗渠という言葉を知ったのは、下の記事だ。 地元の話で、暗渠という言葉も知らなかったので「へー、そうだったんだ」と思った。 その後しばらくしてNHKラジオを聞いていたら、この本の著者の本田氏が暗渠について語るシリーズをやっていて、興味深かったので本も読んでみた。今まで知らなかったけれど、世間には一定の暗渠マニアがいて、暗渠を歩く集まりや講

(書評) 英国本格ミステリの王道を継ぐ、玄人好みの秀作「見知らぬ人」「窓辺の愛書家」

新刊、旧刊を問わず、おすすめの本を紹介しています。今回は同じ作家の人気ミステリ2冊。 その1 ★「見知らぬ人」 エリー・グリフィス (創元推理文庫) 『丘の屋敷』のレビュー(※末尾)にも書いたように、私のは昔からゴシックホラーが好きだ。人里離れた、陰鬱で不気味な屋敷で起きる事件…的な話が大好きで、そういうミステリ、サスペンスを沢山読んでいる(横溝正史的な世界より海外のほうが好み) 実際にそういう所に行きたいとは全く思わないけれど、自分では経験できない、非日常の世界だから

(書評) SFのレジェンドによる珠玉短編集---「不思議のひと触れ」

旧刊を中心に色んな本を紹介しています。 ★「不思議のひと触れ」 シオドア・スタージョン 大森望・編 (河出書房新社) 文庫本もあります こういう社会状況の中(※記事の初出時はコロナ自粛時)、旅行も遠出もままならない時は本の世界で遊ぶのが一番手軽なリフレッシュ方法だ。海外の研究によると、映画とかスポーツ観戦とか様々な娯楽の中で、最もストレス 解消効果が高いのは読書だそう。"一瞬で別の世界に行ける" 効果がズバ抜けているそうだ。 何の本でもいいけれど、たまには普段読まないジ

(書評) “スヌーピーの父” の光と影の生涯--【「スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝」】

これは私が近年読んだ中で最大のボリュームの単行本だ。720ページ、しかも2段組のハードカバー! もの凄い厚みと重さ。手にした時、「マジですか!?」と引いた。値段(6千円以上)を含めて、こんな本は自分では買えない。コロナ騒動前に図書館で借りて読んだ1冊です。ありがとう図書館。 私は本を読むスピードが速いほうで普通の厚さなら数十分で読むが、これは何日もかかった。ピーナッツファンでなければ、とても読み通せなかったと思う。

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