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【雑学】自然界では植物のクローンは当たり前

アジサイの話で挿し木と株分けの話が出てきたので、ちょっとクローンのネタについて書いてみたいと思います。

私は生物学者ではありませんので、あくまで雑学としてお酒のつまみに話せる程度の正確さだということでご容赦ください。

クローンとは

生物の世界でクローンとは、遺伝子が同一の個体ということになります。

多くの種子植物は雄しべと雌しべを持っていて受粉することで遺伝子の交配がおこなわれて次の世代の生物になります。

しかしクローンの世界では遺伝子をそのまま伝えるので遺伝子が組み変わることなく個体を増やすことになり、いうなれば世代は同一になります。

なんとなくクローンというものは人工的でよくないものみたいな印象がありますが、実は自然界ではそれほど特殊なものではありません

今回は植物のクローンに焦点を当てて雑学をメモしていきたいと思います。

自然界の植物によるクローン

植物でも遺伝子交配を繰り返し、進化することに意味があります。つまり遺伝子交配しないで増えるということは、遺伝子交配がまれにしかできないからそのぶん同じ遺伝情報が長生きする生存手段だといえると思います。

植物の場合は、新しい根と芽が生える成長点を作る機能と、根と芽が育つためにエネルギーを蓄えておく機能があれば、クローンを作れます。

バリエーションはすごいいっぱいあるので、厳密な分類ではなくちょっとざっくりと整理してみました。

球根で増える

いわゆるチューリップとかニンニクタマネギなどですね。球根は花が咲いた後にも栄養を貯めて育つらしいので、花が落ちてもすぐに片づけないほうが良いそうです。

ちなみにチューリップはちゃんと種もつけますが、種から育てると花が咲くまで5年もかかるそうです。

イモで増える

サトイモは地下茎が太くなり、ジャガイモは地下茎の先が太くなり、サツマイモは根が太くなります。イモは成長点がいっぱいあるのでカットしても植えれば育ちますね。

また、美味しく食べるためには進化させてしまうよりも、毎回同じ遺伝情報のものが収穫できるクローンのほうが味が安定しますね。

地下茎で増える

地下茎が横に伸びてそこから新しく地上に伸びていくタケなどです。

一般的にひとつの竹林にあるタケはみんな1つの遺伝子からなるクローンです。なぜならタケの開花周期は60~120年といわれており、種子で増えることは滅多にないそうです。

ランナーで増える

オリヅルランは祖父の家で育てていたのですごく覚えています。地上で横にランナーが伸びてそこにまた葉と根のもととなる株ができてきます。

分身をどんどん増やしていくのが見て判りますね。

葉で増える

多肉植物は葉に栄養分を蓄えることができます。この栄養分を使って折れたり切り落された葉から根が生えることがあります。

多肉植物は砂漠などの過酷な環境に多い植物で、受粉できるチャンスがとても少ないので、こういったクローンで絶滅を免れているようです。

ムカゴ

食べ物のムカゴって知ってます?枝から葉のように実のようなもの生えてるんですが、これはヤマノイモという植物のムカゴになります。

そう、ムカゴ(零余子)は枝になるイモのようなものの総称で、このイモのようなものも土に植えるとクローンが育ちます。

人為的な植物のクローン

鑑賞用にどんどん交配させて品種改良した植物は、種をつけにくくなってしまうものもあります。そういった植物を簡単に増やすためにクローンとして増やす方法があります。

またクローンにすることで突然変異を起こさず、ずっと同じ花を咲かせることができます

挿し木

元気な枝や茎を切ってそのまま、地面に植えると根を張ることがあります。ちゃんと根が出やすい部分を切る必要があります。

取り木

枝の途中を表面だけ剥がして、水分を保てるようにミズゴケなどを巻くと、そこから根が出ることがあります。充分に根が出たらその枝を切り落として地面に植えて増やす方法です。

挿し木が完全に切り離してから根を育てるのに対して、こちらは栄養を取りながら根を育てるので成長も早そうですね。

接ぎ木

枝を切り取って別の切り株に挿し込む方法です。それでも適切にくっついて育つことがあります。異なる種類の植物でもできる方法なので増えにくい植物を増えやすい植物の根っこと組み合わせて育てることができます。

例えばソメイヨシノは種子ではほとんど増やせないため、ヤマザクラの切り株にソメイヨシノの枝を挿して増やします。

クローンじゃないけど自家受粉

クローンだけでなく受粉でも延命目的と思われる仕組みがあります。

植物には雄花と雌花があるものや、雄しべと雌しべの活動時期が異なるものなどがあります。これは他の株から生えている花と交配した方が変異が多く進化できるからだと思われます。

同じ株から生えている花は、同じ遺伝子を持つため、交配しても大きな変異が望めず、進化が進みません。

同じ花の中で雄しべの花粉を雌しべが受粉することを自家受粉といいます。自家受粉では大きな進化は望めませんが、種子を残し世代をつなぐことができます。そして稀に他の株と交配することで少しずつ進化するものと思われます。


ということでクローンというものは植物の株が増えるためのごくごく一般的な性質なんですね。こういう観点から、クローン技術の倫理観も考えてみたら、正しい目的で運用できるかもしれないですね。

こんな記事書いていたら、動物のクローンの話や、実を結ばない植物が発生する理由なんかもまとめて書いてみたくなりました。

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